新生トヨタのスピーチ、「自動運転」は1回、「知能化」12回登場

プレゼンテーションで語られたことは?



出典:トヨタプレスリリース

トヨタ自動車は2023年4月7日に新体制方針説明会を実施し、ライブ配信を行った。説明会では、新社長に就任した佐藤恒治氏のほか、新副社長に就任した中嶋裕樹氏と宮崎洋一氏が登壇した。

プレゼンテーションでは、「電動化」「知能化」「多様化」といったワードが何度も出てきた。どんなワードが何回登場したか、「自動運転」というワードは頻繁に口にされたのか、詳しく見ていこう(※トヨタ公式サイトで公表されているスピーチ内容をベースに分析しています)。


■「幸せの量産」を実現するためにすべきこと

佐藤社長は、新体制のテーマは「継承と進化」だとし、クルマづくりの原点とチーム経営の大切さを最初に語った。新体制では「チームで、同時に、有機的に動く」という新しい経営スタイルで未来への挑戦を加速していく。

その上で、トヨタの使命である「幸せの量産」を実現するためのテーマとして、「カーボンニュートラル」と「移動の価値」を挙げた。この2つのテーマを柱に、トヨタが目指すモビリティ社会のあり方をまとめたものが「トヨタモビリティコンセプト」となる。

「カーボンニュートラル」というワードは、12回登場した。世界的にハイブリッドカーの販売を強化し、PHV(プラグインハイブリッド車)の選択肢も増やしていくという。また今後数年間でBEV(純電気自動車)ラインナップを拡充させるとも語っている。


移動の価値については、移動価値の拡張により、他のモビリティと連動したシームレスな移動体験や社会インフラとしてのクルマの新しい価値を提供できるとした。なお新しい移動の可能性として、空のモビリティも挙げている。

■「電動化」10回、「知能化」12回、「多様化」10回
出典:トヨタプレスリリース

中嶋副社長は、トヨタモビリティコンセプト実現のカギを握る3つのアプローチ「電動化」「知能化」「多様化」について詳しく説明した。

「電動化」は10回登場

「電動化」というワードは、10回登場した。バッテリーEV(電気自動車)に関しては、2026年までに10のモデルを新規投入、販売台数は年間150万台にするという。さらに従来のクルマとは全く異なる次世代バッテリーEVを2026年にリリースする。電池を極限まで効率良く使い、航続距離は2倍、快適な走行性とデザインも兼ね備えた車両になるようだ。

生産体制においても、コネクティッド技術による無人搬送や自律走行検査などで工程数を半分に削減し、2035年のカーボンニュートラル実現につなげていく。そのための専任組織を結成するという。


「知能化」は12回登場

「知能化」というワードは12回出てきており、クルマ、サービス、社会という3つの領域において説明された。

クルマについては、先進安全技術やマルチメディア、時代進化に合わせた機能のアップデートを全ての車両に順次広げていくようだ。次世代バッテリーEVでは、車両OSの進化に加え「乗り味」のカスタマイズも可能にするという。豊田章男前社長から引き継がれた、トヨタらしい乗り心地がさらに磨かれそうだ。

サービスの知能化では、リアルタイムの交通情報を活用して輸送効率を高める物流システムや、最適なエネルギーマネジメントを行うシステムなどを2023年度から社会実装していく。またバッテリーEV充電ネットワークを拡充するなど、街や公共施設と連携したサービスを提供することが説明された。

「多様化」は10回登場

最後の「多様化」は10回登場し、クルマ、移動、エネルギーの多様化について解説があった。

クルマについてはラインナップを拡充し、コネクティッドを活用したサービスや、新たなパートナーと共に用品・部品ビジネスを拡げていくという。新たなパートナーとはどの企業なのか、気になるところだ。

移動については、ワンタッチで車いすを固定できる装置を開発し、今年から実装を開始する。このシステムを陸・海・空の全てで適用できるようにし、車いすでのストレスフリーな移動を可能にする。そのために、2020年1月に協業を発表した空飛ぶクルマ開発の米Joby Aviationとの取り組みを進めていくようだ。

エネルギーの多様化については、水や廃棄物から作った水素や、バイオマスなどから作ったカーボンニュートラル燃料を使用した実証実験をすでに開始しているという。さらに、そのエネルギー活用技術をモータースポーツにも応用していくとした。

■「自動運転」というワードは1回のみ

宮崎副社長からは、地域軸経営についての説明があった。地域軸経営をさらに深めるために最初に取り組むべきことはカーボンニュートラルで、各地域においてのバッテリーEVに関する取り組みが紹介された。

これからのクルマづくりにおいてのキーワードは、今回の3人の役員のプレゼンテーションで何度も出てくるカーボンニュートラルなのだろうか。

なお「自動運転」というワードが出たのは1回のみで、佐藤社長がWoven Cityでの新しい物流の仕組みづくりや街と一体となった自動運転モビリティの開発などの実証実験について言及するにとどまった。

自動運転シャトルe-Palette」は発表しているものの、乗用車の自動運転車を含め、まだ商用展開はしていない。代々の社長が運転好きということも関係しているのか、トヨタはクルマづくりにおいて運転する喜びを重視しているように感じる。引き続きトヨタの動向に注目だ。

【参考】関連記事としては「トヨタと自動運転(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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