国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(産総研)はこのほど、実証実験で使用する車両について、道路運送車両法に基づき、運転者を必要としないレベル4の自動運転車として、国土交通省から認可されたことを発表した。認可は2023年3月30日付で、全国初の事例。
国内では2023年4月1日の改正道路交通法の施行により、自動運転レベル4の公道走行が解禁された。国土交通省は「今後、改正道路交通法に基づく許可が得られた場合には、運転者を配置せずに自動運転移動サービスを行うことが可能となる」としている。
■認可を受けた「ZEN drive Pilot Level 4」とは?
産総研は、遠隔監視・操作型の自動運行装置を搭載した自動運転レベル3の車両に関して2021年3月に国内初の認可を取得し、福井県永平寺町でこの車両を使った移動サービスが本格的に始まった経緯がある。
今回認可された自動運行装置「ZEN drive Pilot Level 4」は、カメラやミリ波レーダー、各種センサー、GPSアンテナ、超音波ソナー、RFID読取装置、制御装置、通信装置、スピーカーなどで構成されており、道路に敷設した電磁誘導線上を自動走行する。
この自動運行装置は、国土交通大臣が付与した「走行環境条件」の範囲内で作動が可能で、これを満たさなくなる場合や故障発生時などは運行が停止される。使用車両はヤマハ製電動カートで、産総研が改造して自動運転機能を追加した格好だ。
「走行環境条件」は以下の通りだ。
- 道路状況および地理的状況
(道路区間)
・福井県吉田郡永平寺参ろーど:京福電気鉄道永平寺線の廃線跡地
・町道永平寺参ろーどの南側一部区間:永平寺町荒谷~志比(門前)間の約2km
(道路環境)
・電磁誘導線とRFID による走行経路 - 環境条件
(気象状況)
・周辺の歩行者などを検知できない強い雨や降雪による悪天候、濃霧、夜間などでないこと
(交通状況)
・緊急自動車が走路に存在しないこと - 走行状況
(自車の速度)
・自車の自動運行装置による運行速度は、12km/h以下であること
(自車の走行状況)
・自車が電磁誘導線上にあり、車両が検知可能な磁気が存在すること
・路面が凍結するなど不安定な状態でないこと
■レベル3とレベル4では「保安基準」に違い
なおレベル3と4の自動運行装置では、「保安基準」に違いがある。
レベル3では、自動運行が困難な状況が生じた場合に、運転者に運転引き継ぎの警報を発するという必要があるため、運転者が必要となっている。
これに対しレベル4では、自動運行が困難な状況が生じた場合には自動運行装置によって安全に停止することが要求されるため、運転者を必要としない。
■国が主導する「RoAD to the L4」
経済産業省と国土交通省は、自動運転レベル4などの先進モビリティサービスの実現や普及に向け、研究開発から実証実験、社会実装まで一貫した取り組みを行うプロジェクト「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」を2021年度から開始している。
産総研は、2021年6月に同プロジェクトのコーディネート機関に選出されており、総合的な調整、調査、検討を行ってきた。これにより行われている取り組みが、永平寺町において遠隔型自動運転システムを用いた自動運転車の技術・サービスの実証実験だ。
レベル4の公道走行が解禁になり、ますます加速すると予想される自動運転開発。国内の自動運転関連企業も、レベル4開発を自治体と連携して積極的に行っている中、レベル4の自動運転車の認可が今後続々と行われることになるのか注目だ。
▼国内初!運転者を必要としない自動運転車(レベル4)の認可について
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000442.html
▼遠隔監視のみのレベル4の自動運転車両に対する国内初の認可を取得
https://www.aist.go.jp/aist_j/news/au20230331.html
【参考】関連記事としては「自動運転、「RoAD to the L4」とは?」も参照。