トヨタが仮眠BOX開発!自動運転時代の「寝ながらドライブ」から逆算

社内ビジコンから生まれたTOTONE

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出典:トヨタイムズウェブサイト(https://toyotatimes.jp/series/beyondmobility/003.html

本格的な自動運転時代の到来を前に、トヨタが水面下でさまざまな研究開発を進めているようだ。その1つが仮眠シート「TOTONE(トトネ)」だ。仮眠BOXとも言えそうなデザインだ。

社内のビジネスコンテストを発端に開発が始まったというTOTONEとはどのようなものか。また、自動運転とどのように関わっていくのか。TOTONEの概要を解説していく。

■TOTONEとは?究極の睡眠カーをゴールに

TOTONEは、短時間の休憩によるパフォーマンス向上をコンセプトに据えた仮眠シートだ。社員有志が2017年に開始したビジネスコンテスト「A-1(阿呆ナンバーワン)コンテスト」をきっかけに開発プロジェクトが立ち上がったようだ。

運転操作から解放される自動運転社会においては、「寝ながらドライブ」という未来があるかもしれず、「車内をベッドよりも眠りやすい空間に」――という発想のもと、究極の睡眠カーをゴールに据えた。そこから逆算して、最初の開発としてTOTONEの製作に着手したという。

シートの開発には、自動車用シートの開発・製造などを手掛けるトヨタ紡織が携わり、座り心地をはじめ温度コントロール技術やシート背面が膨縮するリフレッシュ機能の技術、居眠り運転防止の技術などが用いられている。眠りに入る際にゆったりとくつろぐことができる環境や、起床の際の目覚めやすさなどを提供するため、さまざまな技術が用いられているようだ。

開発チームによると、日本では脳の働きが落ちても働き続ける習慣があるという。しかし、15〜30分程度の短時間の質の高い仮眠をとることでスッキリと目が覚め、脳の働きが回復する。

姿勢や温度、照明、騒音、安心感など、理想の仮眠をとるための条件を整え、短時間で効果的な睡眠を得る方法を追求し、脳を休ませる「休み方改革」を推進していく構えだ。

出典:トヨタイムズウェブサイト(https://toyotatimes.jp/series/beyondmobility/003.html
■自動車は睡眠にもってこい?

自動車の車内は、周囲の環境と隔離した空間設計や環境制御を行いやすい個室同然と言える。広さは限られているものの、開発チームは「狭いほうが実はよく眠れるかもしれない」という仮説のもと、寝室よりもよく眠れる狭い空間として自動車への搭載を見越したTOTONEの開発を進めている。

実際、カーシェア利用者の中には車両で仮眠をとる人もいる。自動車を「出先の閉ざされた空間」と捉えれば、こうした活用への需要も間違いなくありそうだ。自家用車においても、助手席の乗員がいつの間にか寝息をたてていることも少なくない。自動車には、乗員を睡眠へいざなう何らかの効果があるのかもしれない。

また、無人運転を可能にする自動運転が実用化されれば、自動運転車を活用した移動サービスをはじめ、自家用車の運転者などもドライブ中に睡眠をとることが可能になる。

中距離移動時の仮眠はもとより、夜間の長距離移動時にたっぷりと睡眠をとり、朝目覚めたら目的地に到着している――といった利用方法なども将来実現するかもしれない。

スウェーデンのボルボ・カーズも車内で就寝可能なコンセプトモデルを過去に発表している。出張や旅行など、移動を伴うアクティビティの新たな選択肢として注目だ。

なお、余談だがトヨタは2021年に「TOTONE」の商標を出願・登録している。家具の分類で、「トトン、トゥートン、トゥートーン、トトネ」とさまざまな呼び名を含んでいる。

近い将来、まずはオフィス向けや自家用車の運転席以外への搭載など、商用展開が始まる可能性も考えられそうだ。

■トヨタ紡織、新たな車室空間コンセプトを出展

TOTONEの開発に携わったトヨタ紡織は、米ラスベガスで開催された技術見本市「CES 2023」で将来の自動運転時代を想定した車室空間コンセプト「MX221」と「MOOX」を出展。

MX221=出典:トヨタ紡織プレスキット(https://tech.toyota-boshoku.com/ces2023/Presskit.html

MaaSシェアライド空間コンセプト「MX221」は、レベル4を想定した都市部シェアモビリティのための車室空間で、多様な移動ニーズへの対応や利用シーンに合わせた空間レイアウト・内装アイテムの載せ替えが可能という。

MaaSサービス空間コンセプト「MOOX」は、レベル5の時代におけるサービスニーズに対応する車室空間コンセプトで、シートや内装アイテムの脱着交換機能「テイラードスペースシステム」を搭載している。今回は、シートから疲労・ストレス度を推定して搭載デバイスによる五感制御で乗員のリラックス・リフレッシュに貢献するウェルネス空間を展示した。

同社は、快適を追求した空間を実現するためのソリューションを提供する「インテリアスペースクリエイター」として新しい価値を生み出すとしている。

将来、TOTONEの実用化に向けた取り組みを本格化させる可能性は高そうだ。

■【まとめ】自動運転時代を見据えた仕掛けに注目

モビリティカンパニーとして移動に関わるあらゆるサービス展開を目指すトヨタ。おそらく、TOTONEのように水面下で研究開発を進めているプロジェクトは山ほどあるのだろう。

また、こうしたアイデアは、多目的に活用可能なサービス向けの自動運転車「e-Palette」の価値をより高めていくことにもつながる。先進的なサービスがe-Paletteの利用用途を広げ、より多くの需要を満たすことが可能になる。

自動運転時代を見据えさまざまな仕掛けを行っているトヨタ。引き続き研究開発の動向に注目していきたい。

【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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