米GM傘下で自動運転開発を手掛けるCruiseのトップが、「自動運転車の安全確保のためには人間による何かしらの介入が必要である」といった趣旨のことを語った。このことがアメリカにおいて話題になっている。
アメリカの自動運転業界で、Cruiseは業界をリードする企業の1社だ。そんな同社のCEO(最高経営責任者)が、捉え方によっては「弱気」とも言えるような発言をしたのはなぜだろうか。
■Vogt氏の発言は「弱気」と言えるのか?
この発言をしたのは、Cruise社の創業者かつ現CEOのKyle Vogt氏だ。英ロイター通信のインタビューで、同社の自動運転車の走行には人間による遠隔操作が欠かせないと語ったという。
さらに、人による遠隔操作が今後なくなるかどうかについて、Vogt氏は「何かあった場合に人がいて助けてくれるということは、顧客に安心感を与える。それを排除するという理由が分からない」と答えた。
つまりCruiseの自動運転車に関して、人間の介入をなくすことはないと明言したことになる。
こう聞くと、「完全自動運転の実現を諦めたのでは?」と感じる人もいるかもしれない。しかし、Vogt氏の発言の趣旨は、セーフティドライバーが車両内に同乗する必要があるという話ではなく、あくまで管制センターからの遠隔操作における話だ。
完全自動運転が実現・実用化されても、トラブルがゼロになるとは限らず、常に万が一のときに備える遠隔サポートセンターの存在は必要だ。そういう意味では、Vogt氏の発言を弱気と判断するのは早計だろう。
■相次ぐトラブルの発言の背景にある?
しかし、Vogt氏の発言の間接的な背景には、最近Cruiseの自動運転車で相次いでいるさまざなトラブルがあるのかもしれない。衝突事故を起こしたり、交通を遮断して渋滞の原因をつくりだしたりしている。
詳しくは以下の記事などを参考にしてほしい。
▼GM系自動運転車が交通遮断!「中に誰もいない!」と騒動に
https://jidounten-lab.com/u_37627
▼事故でリコール!GM Cruiseの自動運転ソフト、トラブル続き
https://jidounten-lab.com/u_37202
▼Cruise内部からの手紙「自動運転タクシーに多数の懸念」
https://jidounten-lab.com/u_36471
2022年2月からセーフティドライバーなしの自動運転車をサンフランシスコで展開し、2030年にロボタクシーを100万台まで増やす計画を公表しているCruise。現在はサービスを展開し始めたばかりで、今後、さまざまなトラブルを経ながら、同社の技術・サービス、そして考え方はブラッシュアップされていくはずだ。
CruiseのトップであるVogt氏は、今後、どんなことを口にするのか。内容は変わっていくのか。引き続き、注目したい。
▼Cruise公式サイト
https://getcruise.com/
【参考】関連記事としては「WaymoとGM Cruise、自動運転タクシーでガチンコ勝負」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)