自動運転、「試験運転者」の負荷計測が重要な理由

群馬大とオートテクニックジャパン、研究開始へ



出典:群馬大学プレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)

完成車メーカーのテスト事業などを手掛ける株式会社オートテクニックジャパン(本社:栃木県芳賀郡/代表取締役社長:髙田隆幸)と群馬大学は2022年5月15日までに、共同研究契約を締結したことを発表した。

⽣体計測技術を応⽤し、⾃動運転時における「試験運転者」の負荷計測と軽減⼿法に関する研究を共同で行うという。


■実用化後の安全要員の負荷軽減にも・・・

この共同研究では、生態計測技術を応用して試験運転者の心理的な疲労を加味した負荷を定量的に評価するシステムの開発を目指す。負荷が一定以上に高くなった際には決められた休養を取れるよう、試験運転者の負荷を管理するマネジメントプログラムも策定する。

自動運転を地域に導入していく上で、実証実験の訓練を受けた試験運転者は、自動運転車が現地で動作するよう調整する調律作業を実施する。未調整の部分については、システムを監視し、補助、介入するなど、大きな負荷がかかっている。今後、負荷が蓄積されにくい自動運転システムの開発と、試験運転者の負荷を開発側にフィードバックする仕組みも検討するようだ。

一見、地味な研究に感じるかもしれないが、非常に重要な共同研究だ。今後しばらくはレベル2で運行される自動運転バス(=運転手による介入が必要となる水準)が存在し続ける。共同研究の成果は実証実験の試験運転者だけではなく、実用化後に実際に運転席に座るセーフティドライバー(安全要員)の負荷を軽減することにもつながっていくからだ。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。


■群馬大、自動運転分野で大きな存在感

群馬大学は、自動運転分野で存在感を示す大学の1つだ。「自動運転技術はクルマづくりではなく街づくりだ」という考えをベースに、走行ルートが決まっている路線バスや物流トラック向けの自動運転技術の研究を続けてきた。

2016年12月に「次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)」を設立し、自動運転の実用化や人材育成に取り組んでいる。2018年5月には、約6,000平方メートルの試験路を持つ実験フィールドなどを備えた一大拠点を整備した。

2020年7月には大学発のベンチャー企業として、日本モビリティを設立。自動運転の導入計画から実装後までをワンストップで支援する「無人移動サービス導入パッケージ」を構築し、他社との業務提携によるパッケージの高度化などを進めている。

【参考】関連記事としては「群馬大学発!自動運転ベンチャー「日本モビリティ」設立 事業内容は?」も参照。


北海道札幌市や兵庫県神戸市など全国の自治体や民間企業と連携し、各地で実証実験を実施してきた実績もある。

■【まとめ】「負担軽減」という重要な視点

民間企業と大学の連携で新たな技術研究が始まる。自動運転が実用化していく上で、試験運転者やセーフティドライバーにかかる負荷を軽減させることは、重要な視点だ。今後の取り組みにも引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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