自動運転レベル4の関与者「運転免許、必要は必ずしもなく」

警察庁、運転手がいない移動サービスで調査研究報告書



警察庁の「自動運転の実現に向けた調査検討委員会」は2021年4月2日までに、運転者の存在を前提としない「自動運転レベル4」(高度運転自動化)などに関する調査報告書をまとめた。


調査報告書では、運転手の存在を前提としない自動運転の移動サービスに関し、運行に携わる者を「関与者」と呼んだ上で、この自然人たる関与者が「運転免許等の特定の資格や技能を有している必要は必ずしもなく(以下略)」としている。

ただし、自動運転移動サービスを提供する事業者は関与者に対し、「前提となる交通ルール、自動運転システムに関する知識やその性能に応じた道路交通の安全と円滑の確保のための対応等について必要な教育を行うことが重要」と説明している。

■社会実装に向けた論点などを整理

調査研究報告書では自動運転について、「移動弱者の移動手段の確保、運転手不足等我が国で生じている道路交通に関する様々な課題の有効な解決策として期待されており、実用化されることは、我が国の交通の安全と円滑の更なる確保に資するものと考えられる」としている。

その上で自動運転レベル4については、「社会実装に当たっては、そのような自動運転を使用する者が一般的に従うべきルール等について慎重に検討する必要がある」とし、具体的な論点を設定して検討してきたことを説明している。


以下、少し長い文章ではあるが重要なポイントなので、調査研究報告書から説明箇所を引用する。やや強引で恐縮だが要約すると、自動運転システムが人の運転と同等の対応をできない場合は、人間などによる関与によって従来と同等以上の安全性を確保するべき、という内容だ。

自動運転技術は今後更なる発展や革新の余地がまだあると見込まれるものの、早期に実用化される可能性がある自動運転移動サービスにおいては、従来「運転者」に求められていた運転操作に係る対応を全て代替できるほど自動運転技術の研究開発が進展しているかどうか必ずしも明らかではないこと、また、実用化される可能性があるサービスの内容が個別のケースごとに大きく異なると考えられることを前提として踏まえると、定型的・一般的な交通ルール等、自動運転システムが遵守できる交通ルールについては基本的に現在の道路交通法において運転者に求められているものと同様の対応を求めつつ、現場の個別具体的な対応等の自動運転システムが対応することが必ずしも期待できないものに関しては、個別のケースに応じ、地域ごとに交通ルールの遵守の方策を柔軟に検討し、当該方策及びそれによって発生する新たな安全リスク等について理解と協力を得て、自動運転システムによる操作や人間による関与等の組合せにより、全体として従来と同等以上の安全性を確保することが適切であるという方向性である。(自動運転の実現に向けた調査研究報告書)

今回の調査報告書は以下のリンクから閲覧することができる。

▼自動運転の実現に向けた調査研究報告書
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/jidounten/R02nendo/R02report.pdf


ちなみに「自動運転の実現に向けた調査検討委員会」のこれまでの議事などについては「https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html#jidou」のページから確認できるので、参考にしてみてほしい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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