ある日本企業が開発した自動運転システムが、国際的なデザイン賞を受賞した。「自動運転システム」と聞くと一般的にソフトウェアによる自動運転をイメージするが、同社の自動運転システムはロボットに運転させるスタイルだ。(※ただし、試験向けのシステムだが)
具体的には、分析・計測機器の総合メーカーの株式会社堀場製作所(本社:京都府京都市/代表取締役社長:足立正之)が開発した自動運転システム「ADS EVO」が、ドイツのデザイン賞「German Design Award 2024」においてWinner(優秀賞)を受賞した。
German Design Awardは、ドイツデザイン評議会が主催する国際的に権威のあるデザイン賞だ。同アワードについて、これまでHORIBAグループとして3度目の受賞となるが、Winner受賞は初の快挙だ。
■自動運転システム「ADS EVO」とは
今回受賞したADS EVOは、自動車の研究・開発において欠かせないシャシダイナモ上での走行試験を、ドライバーに代わって行う自動運転システムだ。試験車両の特性を学習して人間のドライバーと同じように試験車両を運転することで、試験を自動化している。
低圧・低温・高温などの特殊環境や高速走行、長時間耐久走行など過酷な条件下で行われる走行試験において、ドライバーの負担をなくすことができる。さらに、高精度なモード追従性と運転再現性、データの高精度化により、自動車の排ガス試験の自動化を実現しているという。
なおシャシダイナモ試験とは、自動車メーカーなどで行われる試験手法の1つだ。試験車両を実験室内のローラー上で運転し、燃費や排ガス成分などを評価する試験になる。
■使いやすさに徹底的にこだわって開発
堀場製作所では、これまで試験の再現性向上や長時間運転などの負荷軽減のために、自動運転ロボット「ADS-7000」を展開していた。しかし今後の人員不足やさらなる試験時間の増加により、さらに活用が期待されるADS EVOを開発したという。
ADS EVOは、車両の登載順やカートへの収納順が直感的に理解できる仕様になっており、従来からの高い再現性に加え、ユーザビリティ(使いやすさ)とバーサティリティ(多用途性)が徹底的に向上されている。
公開されている動画を見ると、ベースユニットを運転席に設置、固定して、ペダルやサイドブレーキなどとつなげる。そうすることで、人間が運転するような高い再現性を実現している。人間工学に基づいた持ちやすい設計、ペダル位置合わせ用LEDを搭載し簡単な取り付けや調整を実現したほか、シフト部も大幅に軽量化し、ユーザー目線に立ったデザインになっている。
■ADS EVOの活用で車両開発が加速
人間に代わって車両を操作することができるADS EVOは、人手不足を補い、走行試験の効率化を図ることに大きく寄与するはずだ。
自動運転技術は、無人タクシーなどとして人の移動に貢献するだけではなく、走行試験といった車両開発の過程で役立つことも、改めて感じさせる報道発表だ。
【参考】関連記事としては「自動運転「千載一遇のチャンス」 企業トップの年頭所感を読み解く」も参照。堀場製作所社長の年頭所感も紹介されている。