電動車いすなどパーソナルモビリティの開発・販売を手がけるWHILL(ウィル)株式会社(本社:東京都品川区/代表取締役社長:杉江理)の「WHILL自動運転サービス」がこのほど、関西国際空港第1ターミナルビルの新国内線エリアで正式に導入された。
WHILL自動運転サービスは、車いす型のパーソナルモビリティを自動運転化した移動サービスで、同サービスの実用化は2020年からスタートしている羽田空港に続き2カ所目だという。
空港は、施設によっては搭乗口にたどりつくまで非常に長距離を歩かないといけないケースがあるため、空港内を自動運転のパーソナルモビリティで移動できるサービスは非常に有用だと考えられている。また、詳しくは後述するが、自動走行の速度が歩く速度の半分程度というのもポイントだ。
WHILLの昨今の事業展開ぶりは、「空港×自動運転車いす」の組み合わせが爆発的に普及する火付け役となりそうだ。
■「ユニバーサル」の視点で導入決まる
関西国際空港は大規模なリノベーションを行い、2022年10月26日に新国内線エリアがオープンした。このリノベーションではユニバーサルサービス(※誰もが等しく受益できる公共的なサービスのこと)の提供に注力しており、その一環でWHILL自動運転サービスが導入された。
同サービスは、高齢者や体力に不安がある人でも、広い空港内を快適に移動できるものだ。具体的には、WHILLの自動運転車いすを同空港に配置し、保安検査後にWHILLステーションから特定の搭乗口まで自動運転で案内する。利用後は、自動運転車いすは無人運転で元の場所まで戻ることができる。
WHILLの自動運転車いすには衝突回避機能や操作パネル、ドライブレコーダーなどが搭載されており、あらかじめ収集した地図情報とセンサー群で検知した周囲の状況を照らし合わせ、自動走行可能となっている。
■スピード設計は時速2.0〜2.5キロ程度
ちなみにスピード設計は時速2.0〜2.5キロだ。人の走行速度は一般的に時速4.0キロ程度で、つまりWHILLは、人が歩くスピードの半分か、半分より少し早い速度で自動走行するということになる。この点は、実は非常に重要なポイントだ。
「自動運転」といえば自動車の自動運転が思い浮かぶが、自動運転車は公道では極端に遅いスピードで走行できない(※ほかの車両の邪魔になるため)。そのため、事故時のリスクがやり玉にあげられることが多い。
しかし、人が歩くスピードの2分の1程度で走行する自動運転移動サービスであれば、万が一、誰かと衝突をしてしまっても、事故が重大化する恐れが小さい。もちろん、開発企業のWHILLは事故を起こさないことを大前提に開発を進めていると思うが、「万が一事故が起こっても大丈夫」という受け止められ方を周囲がするようになると、普及に弾みがつく。
こうした視点でみても、「空港×自動運転車いす」は非常に有望だと考えられるわけだ。
■自動運転市場の裾野は非常に広い
自動運転ビジネスを「車」のものだけと考えると、市場の将来性は恐らく実際の拡大スピードよりも小さく見積もられる。今回の自動運転車イスのように、自動運転ビジネスの裾野は実に非常に広い。
今回のWHILLのニュースは、こうした自動運転ビジネスの有望性を改めて如実に感じさせるものだ。
【参考】関連記事としては「世界初!WHILLの自動運転車いす、エレベーターと連携」も参照。