夏になると、車内の子ども置き去り死という悲しい事故・事件が毎年発生している。つい先日も神奈川県厚木市で1歳と2歳の幼児をエンジンを切った車内に置き去りにし、熱中症とみられる症状で死亡させたとして、母親が送検された。
エアコンを使用していても十分でない場合もあり、長時間車内にいれば脱水症状を起こすケースがある。「夏」と「クルマ」という組み合わせは、特に自ら車外に出ることが難しい乳幼児にとっては、危険と隣合わせなわけだ。
駐車場に限らず、外気温が高い場合には車は短時間で危険な状態となる。仮に気温35度の中で駐車していた場合、窓を締め切った状態でエンジンを停止させると、およそ15分で人体に危険が及ぶレベルの暑さになる。
こうした事故・事件がゼロにならない中、自動運転技術の普及がこうした事故・事件の防止に結び付くのでは、と期待する声がある。なぜか。
■「車内監視カメラ」をうまく活用すれば・・・
自動運転技術のメリットは、ドライバーが運転せずに済み、地方の交通弱者の足となり、交通事故が減るといったものだ。そんな複数のメリットがある自動運転技術を車両に搭載しようとすると車内のモニタリングが必須となるため、車内の人を監視するカメラが確実に搭載されるようになる。
この「車内の人を監視するカメラ」を使って子どもの置き去りを検知し、危険だとAI(人工知能)が判断した場合は自動で警察や消防に通報がいくシステムが搭載されれば、子どもの置き去り死はかなりの数が防げるはずだ。または、大きな音を車外に発して周囲に危機を知らせるシステムでもいいかもしれない。
しかし、そもそもなぜ自動運転技術を搭載する際に、車内のモニタリングが必要になるのか。自動運転レベル3やレベル4では、自動運転から手動運転に切り替えるシーンがまだ残っているため、自動運転システムが車内の人間の状況を監視しなければならないからだ。
いつでも運転を交代できる状態であるかどうか、眠っていないか、など車内センシング技術を用いて常時モニタリングし、運転できる状態でない場合にはアラートを発信するといった対応をとる必要がある。
■すでに置き去り防止に取り組む企業も
すでに置き去り防止に取り組む企業もある。2021年12月には、三菱電機が乗員モニタリング技術を搭載したコンセプトカー「EMIRAI xS Drive(イーミライ・エックスエス・ドライブ)」を開発したことを発表している。
車内に設置された近赤外線カメラと電波センサーにより、ドライバーや同乗者のモニタリングができる技術で、近赤外線カメラは顔情報以外にも脈拍や呼吸数など生態情報も解析ができ、覚醒度低下や体調の急変を検知できる。
さらに近赤外線カメラと電波センサーの組み合わせにより、乗員の有無と体格を検知して車内に幼児だけが取り残されていないかを判定できるという。毛布に包まれた幼児や座席足元に隠れた幼児も検出可能であり、置き去りを高精度で検知できるようだ。
【参考】関連記事としては「三菱電機、乗員の「脈拍」「呼吸」センシング!コンセプトカー、CESで展示」も参照。
■こうした視点を持って開発が進めば・・・
自動運転技術は「交通事故」による死者を限りなく減らすことに主眼を置いているが、「車内置き去り死」を防ぐ視点を開発メーカーの担当者が持っていれば、車内向けカメラをうまく活用してそうした仕組みを実装することは、決して難しいことではないはずだ。
夏の車内置き去り死の事件を耳にするたび、こうしたことを考える。
【参考】関連記事としては「自動運転の目的・メリット(2022年最新版)」も参照。