【全文】自動運転車の安全基準策定「国際協調で」 石井国交相、ダボス会議で発言

共同議長としてカウンシルに参加

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ダボスのコングレス・センター前でインド放送局の取材を受ける石井大臣=出典:国土交通省プレスリリース

国土交通省の石井啓一大臣は2019年1月22日から24日にかけ、スイスで開催された世界経済フォーラム総会(ダボス会議)に出席し、共同議長として参加した「グローバル自動運転・都市交通カウンシル」で、自動運転車の安全基準策定に向けては世界の協調が重要との考え方を示した。

同カウンシルでは、AI(人工知能)に代表される第4次産業革命で自動運転やMaaSなどの領域の展開が今後加速することを踏まえ、自動運転や都市交通、優先課題などについて議論が行われた。

石井大臣は発言の中で、同カウンシルが今後重視すべき観点として、①データのアクセシビリティの向上など官民連携②自動運転車の国際的な安全基準の策定やサイバーセキュリティなど国際協調③安全で安心できる質の高いモビリティサービスの提供や地方部への考慮など「利用者中心」——の3つを挙げた。

▼石井国土交通大臣の冒頭発言の全文は下記の通り。

共同議長のダラ・コスロシャヒ氏、リチャード・サマンズ氏、ミッシェル・エイバリー女史、会場にいらっしゃる皆様、こんにちは。日本の国土交通大臣の石井啓一です。

この委員会の初会合に出席でき、大変光栄です。私としても本日の議論に参加することを楽しみにしています。議論を始めるに当たり、共同議長として、いくつかポイントを申し上げたいと思います。

まず、第4次産業革命がもたらす社会に関し、日本の立場と考え方について話したいと思います。

日本では、官民ともに IoT、AI 等により人とモノがつながり、知識や情報が人々の間でシェアされ、新たなサービス・価値を生み出す、あらゆる人々の多様なニーズにきめ細かく対応できる社会、すなわちSociety5.0 を目指す戦略を立ち上げました。Society5.0 は、第 4 次産業革命の革新的インパクトを組み込んだ社会です。

自動走行(Autonomous Vehicle: AV)、MaaS は、Society5.0 の主要な要素である移動革命の中核であり、これら新たなモビリティは、交通の諸課題を解決するとともに、スマートシティの実現につながると考えています。

一方、これらの新たな移動サービスの導入を間違えれば、自動車交通量の増大、シェアサービスへの不安やデータ情報漏出等の問題を招くおそれもあります。このような事態が起こることを防ぐためには、交通や都市計画に係る政府の政策が不可欠です。その政策としては、例えば、
第一に、AV を前提とした新たな規制・制度の設計、
第二に、道路空間の再編、シームレスな交通結節点、通信環境、電気自動車に対応した設備等のインフラ整備、
最後に、多種多様なデータの共有・活用を可能とする環境整備
等があげられます。

本日は、政府の役割についても、委員メンバーによる活発なご議論がされることを期待したいと思います。新たなモビリティサービスの社会において、政府はどのような課題に直面することになるでしょうか。また、新たなモビリティサービスの時代において、様々な関係者は政府に何を期待するでしょうか。

デジタル革新が産み出す AV、MaaS の移動革命の社会へのインパクトは不可逆的であります。そのため、新たなモビリティサービスを円滑に受容し、フル活用する社会経済を構築する必要があります。こうした観点や、日本における経験や取組に基づいて、本日は、次の3点を念頭に議論してはどうかと考えています。

第一に、官民連携があげられます。官民の連携は、急速な革新と社会の枠組との間の溝を埋めるために必要であり、官民双方にとって不確実性の緩和につながります。

官民連携は、移動データへのアクセスとの関連でも不可欠です。官民双方が所有するデータへのアクセシビリティの向上が課題です。MaaSのプラットフォームが各サービスの提供者に対してオープンになればなるほど、利用者にとって便利なものとなるのです。

日本では、私自身、経団連会長とスマートシティや物流や新モビリティについて直接話をしました。経団連は、約 1,400 の日本の代表企業によって構成されており、官民の連携体制の強化を進めました。本委員会において、官民連携を促進するためいかなる手法が考えられるか、政府の役割と併せて議論することは有意義であると考えています。

第二に、国際協調が重要であります。モビリティ分野の課題は世界共通であり、本委員会でそれぞれの取組に関する情報の共有ができれば、有用であります。

国際協調は新たなモビリティサービスの安全確保について考える際により一層重要となります。特に、AV の国際的な安全基準は、国際的な相互協力なしには確立できません。

また、確実なサイバーセキュリティのためには国際協調による取組が必要です。質の高いデータのやりとりのためには、きめ細やかなサイバーセキュリティが保障されていることが必要です。

最後に重要な点として、議論を行うに当たっては、常に「利用者中心」を最優先に意識すべきです。世界経済フォーラムの会長であるクラウス・シュワブ教授は、指導者や市民に、「人々を最優先にすることで全ての者にとってよい未来をともに創り上げること」を提唱しています。私は、クラウス・シュワブ教授の発言に強く賛意を表します。利用者中心の目線で利便性を考えてこそ、安全で安心できる質の高いモビリティサービスを提供することができるのだと確信しております。例えば、(AV に関する)明確な責任関係の整理と保障制度は念頭に置くべき重要な課題です。

また、利用者中心の目線からは、新たなモビリティサービスは、高齢者、障がい者等を含むすべての利用者にとって利便性の高いものである必要がある点も忘れてはなりません。ここにいる全員が、誰もが、地域を問わず、「移動弱者ゼロ」である社会を目指しているのだと思います。このため、都市部のみならず地方部の問題も考慮すべきであると考えます。置き去りにしてはならないのです。実際、AV、MaaSは、バスやタクシーなどの交通の担い手不足に悩む地方部において、高齢者等の有効な移動手段として期待されています。新たなモビリティサービスは、包摂的な社会の実現に間違いなく資するものだと思います。

そうした議論とともに、移動に関する様々なデータの標準化等グローバルなモビリティサービスを目指す上で必要な共通規範の確立を官民がどう主導するか、といったテーマもあると考えます。我が国は、新モビリティ社会を目指しており、様々な取組を進めています。日本の取組を本委員会のメンバーとも共有したいと思います。日本は、「自律的な都市交通」を発展させるため、世界経済フォーラムの活動を支持いたします。ご静聴大変感謝申し上げます。

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