遠隔型自動運転、「運賃のみで運行費用をまかなうのは困難」という一文

東急による実証実験、結果報告の資料から

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出典:警察庁ウェブサイト/東急

警察庁が主導する「令和3年度自動運転の実現に向けた調査検討委員会」の第2回が2021年7月7日に開催され、東急株式会社(本社:東京都渋谷区/取締役社長:髙橋和夫)が2020年12月に実施した実証実験の結果が報告されている。

その結果報告の中で、興味深い一文がある。「当初想定通り、1カ所のコントロールセンターから複数台を監視・操縦することは可能であるが、仮に効率化を進めたとしても、運賃収入のみで運行費用をまかなうのは困難」という一文だ。

▼伊豆高原における遠隔型自動運転の実証実験について
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/04.pdf

この資料では、運行費用をまかなうための解決策については触れられていないが、実証実験においてこうしたビジネス面の視点を持つことは非常に重要なことであると言える。

■実証実験の概要は?

資料では、ビジネス面以外の視点での振り返りの内容も紹介されているので、実証実験の概要とともに紹介したい。

実証実験は、東急の交通インフラ事業部が静岡県伊東市の伊豆高原駅周辺で行った。駅周辺の公道約2.8キロメートルの区間で、観光型MaaS「Izuko」や周辺観光施設と連携しながら、オンデマンドの自動運転車両1台を運行した。

使用したのは、定員8人、最高時速19キロで、自動運転と遠隔操縦を切り替えることが可能となっている車両だ。伊豆高原駅付近に設置されたコントロールセンターが、自動運転バスの監視・操縦を行った。

基本的には運転席無人の自動運転で走行するが、必要に応じてコントロールセンターが遠隔操縦する仕組みで運行され、2020年12月17〜25日の運行期間中、地元住民や観光客、関係者、視察者など300人以上が乗車し、ほぼ予約が埋まっていた状況だったという。

出典:警察庁ウェブサイト/東急
■技術面・環境面・ビジネス面での振り返り

そしてこの実証実験を終え、「技術面」「環境面」「ビジネス面」での振り返りと今後の対応策がまとめられた。

技術面では、実用化には遠隔監視・判断が不可欠ということと、遠隔操縦には相当程度のスキルが必要であることが浮き彫りになったという。

道路や行政などの環境面においては、「道路状況等から、車両側の対応のみでは自動運転は不可能と判断した区間が複数あった」と説明した上で、「道路規制等、交通政策面での取り組みが不可欠」とした。

そしてビジネス面に関しては、冒頭触れた通りだ。

出典:警察庁ウェブサイト/東急(クリックorタップすると拡大できます)
■課題を抽出できたことは「成功」と言える

実証実験は課題を抽出するために実施すると言っても過言ではない。そういう意味では、課題などが明確になった今回の実証実験は、明らかな成功と言えるのではないか。東急は今後も静岡県を中心に実証実験を展開する予定だとしている。引き続き、注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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