電動キックボードをはじめとする電動マイクロモビリティのシェアリング事業を展開する株式会社Luup(本社:東京都渋谷区/代表取締役社長:岡井大輝)が、立教大学の観光学部舛谷ゼミと共同で電動キックボードの実証実験を行ったことが、2019年8月28日までに明らかになった。
Luup社は電動キックボードや電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を将来的に日本で展開することを目指している。今回の実験は指定車両以外は進入できない「埼玉県県民の森」で行われ、林道を用いた国内初の公道での実証実験だという。
実証実験で登場した電動キックボードは、いま世界で普及の兆しがある。日本でも今回、公道での実証実験が初めて行われたことが注目を浴びたが、日本でも導入は進んでいくのだろうか。
記事の目次
■ラストワンマイルを担う新たなモビリティ
一般的な電動キックボードは、2輪のボードの上に持ち手となるハンドルと電動モーターがついたもので、片足をボードに乗せてもう片方の足で地面を蹴ると走り始める。自転車のようにペダルをこぐ必要はない。加速や減速もハンドルのレバーで調整ができ、最高時速20〜30キロ、航続距離は30〜60キロの製品が多い。
小型で持ち運びが容易で、設置場所も選ばないことから、公共交通機関で行ける最終地点から目的地までの「ラストワンマイル」の移動を担う新たな存在として注目を集めている。欧米ではすでに使いたいときに使いたい分だけ料金を払って利用するシェア型サービスの普及が進んでいる。徒歩では遠いが、車を使うほどではない移動にも人気だ。
ただ海外では利用者が増える一方で、規制やルールが整う前にサービスが開始されたこともあり、弊害も出ている。電動キックボードが歩道に無造作に放置されたり、歩道における歩行者との接触事故や車道での事故も発生したりしている。死者も出ている。そのため、一定の規制強化が必要という声もある。
■日本で普及する日もそう遠くないはず!?
日本では電動キックボードは道路運送車両法上で「原動機付自転車」に該当するとされている。前照灯や番号灯、方向指示器など道路運送車両の保安基準に適合しない限り、公道での運行はできず、歩道での走行もできない。原付免許やヘルメットの着用、自賠責保険への加入も必要だ。こういった理由から日本での導入はいまのところハードルが高いとされている。
そんな中、福岡県福岡市は国家戦略区特区制度を活用して電動キックボードを普及させることができないか、その糸口を探っている。福岡市を先行事例として全国で取り組みが加速し、ルール作りや安全対策、法改正などが進めば、電動キックボードのシェアサービスの日本での普及は十分に考えられる。
現在はサービス内容も各社横並びだが、2人乗りモデルや着座できるモデル、高齢者が安心して乗れるモデルなどというように、他社との差別化を意識したより高機能なモデルが増えれば、マーケットの一層の拡大も期待できるだろう。
■日本で電動キックボード事業を展開する企業
続いて、日本と世界で電動キックボードのシェア事業を手掛ける代表的な企業をそれぞれいくつか紹介する。まずはLuupを含む日本企業から。
株式会社Luup
2018年設立のベンチャー企業で、電動マイクロモビリティのシェアリング事業「LUUP」を展開する。自治体との連携に力を入れている。三井住友海上火災保険株式会社と電動キックボードの保険制度も構築済みだ。2019年8月に国内の初の公道での実証実験を行った。同年7月には着座できる3輪タイプの電動マイクロモビリティ「低速電動ウィールチェア」も発表している。
株式会社mobby ride
東京都港区に本社を置く2017年設立のベンチャー企業で、シェアリングモビリティ事業を手がける。2019年3月に福岡市と連携した試乗会では、モニターの9割以上が操作性や乗り心地に前向きな印象を受けたという好評を得ている。同年7月には丸紅株式会社と共同で実証実験に取り組むことを発表し、今後も自治体や丸紅と連携し、経済効果や集客効果などの検証を行う予定だ。
Wind Mobility Japan株式会社
2018年に設立された、世界17都市でシェアサイクルや電動キックボード事業を展開するドイツ生まれのスタートアップ企業の日本法人。2019年3月に埼玉県の浦和美園駅でシェア伝送スクーターサービス「WIND」の導入を開始し、6月には駐輪ポートを2カ所追加した。同年7月からは千葉市と共同で実証実験を進めている。
■海外で電動キックボード事業を展開する企業
続いて日本以外で電動キックボードのシェア事業を展開する企業を紹介する。
Lime
2017年に創業し、米カリフォルニア州に拠点を置く。世界29カ国100都市以上でサービスを展開しており、この分野では世界大手だ。シェアサイクルも手がけ、時価総額は20億ドルを超える。2018年7月には投資家グループから総額3億3500万ドルの出資を受けている。米ライドシェア大手のウーバーと戦略的パートナーとして提携済み。日本市場への参入も考えているという。
Bird
2017年に創業し、米カリフォルニア州に拠点を置く。創業者は米ライドシェア大手のウーバーやリフトで役員を務めた人物。電動キックボードに特化した事業を展開し、世界100都市以上でサービスを行う。Birdの時価総額も20億ドルを超える。2019年6月に2人乗りモデルを発表した。
Spin
約50都市でサービスを展開するサンフランシスコ生まれのスタートアップ。2017年に創業し、2018年11月に米自動車大手フォードに買収され、傘下に収まる。2019年に安全性や航続距離を改善した新型モデルを発表し、Lime、Birdを追従する構えをみせている。
その他の企業
独ベルリンに本拠を置く「Tier」や「Circ」、スウェーデンの「Voi」、独自動車大手のダイムラー傘下企業が運営する「hive」なども知られている。フランスでは2019年5月に陸上選手のウサイン・ボルト氏が共同出資者として名を連ねる「Bolt Mobility」がサービス開始することを発表した。
■【まとめ】続々と実証実験、高まる期待感
今回冒頭で紹介したLuup社の取り組みは国内初の公道実証ということで、日本での普及に向けた機運を高めるものとなりそうだ。そのほか、日本でも各社が続々と実証実験に取り組んでおり、実際にサービスを利用したいという人もどんどん増えていきそうだ。
【参考】関連記事としては「電動キックボードに遠隔給電を導入!?Luupがシェア事業展開へ」も参照。