中国・湖北省の州都・武漢市は2019年9月24日までに、新たな事業の柱にするために自動運転開発に注力する中国ネット大手・百度(バイドゥ)などに対し、自動運転サービスの商用ライセンスを付与したと発表した。中国メディアのグローバルタイムスなどが報じた。
報道によると、こうした自動運転車の商用ライセンスが民間企業に付与されるのは中国国内で初めてのことだという。この商用ライセンスで走行できるのは市が設定する特定道路(全長28キロ)で、同エリアで既に使用可能な第5世代通信システム「5G」を利用した走行が可能になるという。
今回のライセンス付与は、まず商用サービスのトライアルを各社にさせるためのものみられ、完全商用化はまだ先になるものとみられるが、このライセンス付与で技術レベルの向上や課題抽出に関する取り組みが加速するのは間違いない。
今回の武漢市によるライセンス付与は、百度のほかHaylion TechnologiesとDeepBlue Technologyに対しても行われている。
■中国における自動運転開発の急先鋒
百度は中国における自動運転開発の急先鋒だ。2017年に自動運転ソフトウェアに関するオープンプラットフォームの開発に着手し始め、同社が主導して立ち上げられた「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」には、既に日本や世界の多くの企業が参画している。
自動運転システムの開発を包括的に進めるために、この領域に特化した専用ファンドとして「アポロファンド」も設立しており、100億人民元(約1650億円)規模を100以上のスタートアップ企業やプロジェクトに投下していくことも過去に発表されている。
百度はアポロ計画とは別に、欧米の各自動車メーカーと協業スキームを立ち上げ、百度の自動運転関連技術を各社の車両で将来的に活用させることも視野に入れているようだ。簡単に言えば自動運転技術の「売り先」として各社との協業を今から進めているようにも感じる。
■一人勝ちを許すわけにはいかない非中国企業
欧米や日本、韓国などの非中国系の自動車メーカーがアポロ計画と一線を画すことは難しい。中国は今も今後も自動車メーカーにとっての主戦場だ。その中国で中国政府とも連携しながら事業拡大を目指す百度と対立関係になれば、中国での将来的な事業展開に黄色信号が灯る可能性のあるからだ。
今回の中国の武漢市のように、今後各都市における走行ライセンスの付与が盛んになっていくことが考えられるが、非中国系企業もそのライセンス獲得を今後ねらっていく流れになるはずだ。中国における自動運転ビジネスであっても、市場有望性を考えれば、何もせずに中国企業に一人勝ちを許すわけにはいかないからだ。
ただこうした各メーカーの動きに対し、中国政府、そして各都市の行政がどのような姿勢を示すかが不透明だ。今後も中国市場に対する各社の関心は高い状態は続く。
【参考】関連記事としては「中国・百度(baidu)の自動運転戦略まとめ アポロ計画を推進」も参照。