自動車の中にあるディスプレイは自動運転車が登場するようになると、さまざまな箇所にさまざまな形のディスプレイが設置されるはずだ。ハンドルやブレーキが必要なくなり、極端に言えば外が見えなくてもよいため、車室デザインの自由度が格段に上がるからだ。
こうした点が予測される中、ガラス大手のAGC株式会社(旧旭硝子)は2019年9月15日までに、複雑な形状や大型化などに対応する車載ディスプレイ用カバーガラスの生産拠点を中国・江蘇省に建設すると発表した。日本の京浜工場では開発センターも設置し、さまざまな車載コックピットデザインへの対応力を強化するという。
中国に新たに建設する研究拠点には、光学薄膜コーティングや装飾印刷、複雑曲面の一体成形などに対応した生産ラインを備えさせる。この拠点で製造する車載ディスプレイ用カバーガラスについては、2022年ごろから販売を開始する予定のようだ。既に受注している案件もあるという。
AGCの車載ディスプレイ用カバーガラス事業は2013年から本格的に取り組みが始まり、2017年には3次元(3D)曲面形状の車載ディスプレイ用カバーガラスの量産をスタートさせている。同社のカバーガラスは現在70車種以上に搭載実績がある。
■インフォテインメント関連のビジネスチャンスも
完全自動運転になるとクルマの中でも過ごし方が大きく変わる。運転手が運転しないことでインフォテインメント関連のビジネスチャンスも生まれる。そんな次世代自動車時代の到来を見越して関連事業に力を入れている企業は少なくない。
例えば、株式会社ジャパンディスプレイ(本社:東京都港区/代表取締役会長:東入來信博)=JDI=は、仏自動車部品メーカーフォルシア社と車載ディスプレイ分野における協業の覚書を締結し、車載向けディスプレイのプロモ―ションを共同で行っている。
このディスプレイパネルは自動運転車への搭載が想定されている。手動運転時には、運転席前に配置されてナビ情報や速度情報、安全情報が表示され、自動運転時にはディスプレイ全体が中央にスライドし、エンターテイメント用のスクリーンとして活用できるという。
【参考】関連記事としては「ジャパンディスプレイ、自動運転時代見据えて車載ディスプレイに注力」も参照。
韓国の自動車部品メーカーである現代モービス(ヒュンダイモービス)は、2019年1月の世界最大級の家電・IT見本市「CES(シース)」において、自動運転車の車載インテリアコンセプトの一つとして、車両の窓ガラスがディスプレイとなる車載インフォティメントシステムを発表した。
このシステムには、車に乗っている人が直接ディスプレイにタッチするのではなく、ジェスチャーで操作できる機能が搭載させるという想定のようだ。手動運転と自動運転のどちらにも対応するため、窓ガラスのディスプレイは透明にもなるという。
【参考】関連記事としては「自動運転車の窓ガラスをディスプレイに ヒュンダイ・モービスが新コンセプト発表へ」も参照。
■広告業界やEC業界も注目
自動運転技術の確立によりディスプレイが多機能・多形状となっていくことには、広告業界やコンテンツ業界のほか、EC(電子商取引)業界なども大きな関心を寄せている。例えば広告だけでも、自動運転車向け市場は2030年にはアメリカ国内だけで4720億ドル(約52兆円)規模にも達すると予測されている。
【参考】関連記事としては「自動運転車、広告業界が狙うのは運転手が自由になる「584時間」 電通は配信プラットフォーム開発」も参照。