米EV(電気自動車)大手テスラが、オーストラリアで訴えられている。数千人のテスラ車オーナーが、同社の「Full Self-Driving(FSD)」に関する虚偽の主張があったとして集団訴訟に参加したのだ。
テスラのADAS(先進運転支援システム)であるFSDや「Autopilot」は、自動運転が可能であると誤認を招くようなセールスを行っているとして、かねてから世界各国で問題になっている。直訳するとFSDは「完全自動運転」、Autopilotは「自動操縦」になるものの、現状はレベル2の自動運転機能にとどまっている。
同社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)はビッグマウスで知られているが、それが話題性を高め良い方向に作用することも多かった。しかし、ついに集団訴訟にまで発展してしまったとなると、テスラは自社のシステムの見直しやマーケティング手法の変更を迫られることになるかもしれない。
【参考】関連記事としては「トヨタの運転支援機能とテスラのAutopilot、どちらがいい?【自動運転レベル1〜2】」も参照。
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■数千人の豪州人がテスラを訴える!
今回のオーストラリアの訴訟は、テスラがFSDとAutopilotの能力を誇張し、将来的に完全自動運転が可能になるかのように示唆していた点が問題になっており、数千人ものオーストラリア人が訴訟に参加している。
問題となっているシステムは、テスラが2019年に導入したコンピューター「Hardware 3(HW3)」だ。同社は2016年に「今後製造される全車両には完全自動運転に必要な全てのハードウェアが搭載されている」と断言していた。しかしマスク氏はその後、HW3が完全自動運転(監視なしでの自動運転)を実現できる性能を持たないことを認めている。
そして以前の購入者向けにハードウェアを改修すると約束したが、広範なアップグレードやソフトウェア修正はいまだ実現していないという状況だ。
■訴訟に参加するオーナー達はどんな人?
集団訴訟では、2021年5月から2025年2月の間にテスラのEV「Model 3」または「Model Y」を購入またはリース契約したオーナーを対象としている。原告側は、自動運転の性能や安全性に関する誤解を招く主張によって損害を受けたとして、テスラに金銭的賠償を求めているようだ。
この訴訟を主導する法律事務所でディレクターを務めるRebecca Jancauskas氏は、「テスラは車両の安全性や性能、そしてFSDのような機能について多くの約束をしたが、その多くが実現していないことが判明している」とコメントした。
■問題となっているテスラのFSDとは?
テスラのFSDは誤認を招くような名称が問題視され、2025年から「FSD Supervised(監視あり)」と「FSD Unsupervised(監視なし)」に分けられた。現在一般にリリースされているのは「監視あり」で、「監視なし」は今のところ同社の工場内での移動に使われているのみとなっている。
それでもテスラユーザーは機能を正確に理解していないことが多く、FSD作動中に居眠りをしたりハンドルから手を離してダンスを踊ったりという動画が出回り問題となっている。米国当局などでは、テスラが機能の正確な告知を怠ったとして、何度も指導を行っている。
マスク氏は2025年9月、FSDの最新バージョンが3段階に分けてリリース予定であることを明かした。そして最終バージョンは「クルマがまるで知覚を持つ存在のように感じられるだろう」と自信を見せている。
最新のFSDも気になるところだが、いずれにしてもテスラは過去に販売した顧客にも誠実に対応していくべきという見方は根強い。裁判の行方に注目しよう。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転機能、「人間の知性レベル」に到達か マスク氏が言及」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)