今秋、第1期オープンを予定しているWoven City。トヨタがモビリティのテストコースと位置付ける実証都市で、業種を問わぬさまざまな取り組みが行われる。
すでに見学や視察などの問い合わせが殺到しているそうだ。受け入れ体制の面から現状は断っているようだが、各方面から広く注目を集めていることがうかがえる。
多くの人を惹きつけるWoven Cityの魅力に迫る。
記事の目次
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■Woven Cityの受け入れ動向
見学・視察要望寄せられるも、原則お断り
ウーブン・バイ・トヨタによると、Woven Cityの見学・視察について数多くの問い合わせが入っているという。ただ、実証開始に向けた建設や諸準備を行っている最中で、現場で安全に視察を受け入れる体制はまだ整っておらず、原則断っているという。今後、見学や視察の受け入れが可能となった際にはWebサイトなどで知らせるとしている。
どういった目的の見学・視察かは不明だが、おそらく具体的な実証・研究計画のない漠然としたインベンター候補や、まちづくり・都市づくり関連、居住希望者、ミーハーなどではないだろうか。
具体的な計画を持ったインベンターであれば、別途コンタクトを取り、協議に入るものと思われる。もし、こうしたインベスターにもストップをかけている状態とすれば、参画が内定しているものの公表されていないインベンターが相当数いるのかもしれない。
いずれにしろ、Woven Cityに対する注目度はすでに相当高まっていることは間違いない。もはや知る人ぞ知る存在ではなく、第1期オープンを待ち望まれる存在になったのだ。
■Woven Cityの魅力
一から都市を作る壮大な実証都市
Woven Cityに注目が集まる理由は何なのか。それは、やはり「実証都市」としての位置付けだろう。
Woven Cityは、静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を活用して建設が進められている。まちづくりを進める将来的な面積は、東京ドーム(約4万7,000平方メートル)約15個分に相当する175エーカー=約70.8万平方メートルという壮大な規模だ。
フェーズ1となる第1期は東京ドーム1個分強の約5万平方メートルで、約360人が居住する規模を見込む。最終計画の14分の1ほどの面積だ。このフェーズ1の工事に3~4年を要していることを踏まえると、全体が完成するのはいつ頃になるのか……というほどの壮大な計画となる。すでにフェーズ2の工事にも着手しており、モビリティのテストコースとして求められる要件をより明確にし、計画に反映させていくという。
開発速度が上がることを見越しても、10年は超えるものと思われる。この時代、10年が経過すれば最先端技術は一新される。常に先々を見据え、ソフトウェアのように更新し続けるようなまちとなるのかもしれない。
トヨタとともに「モビリティの再定義」に取り組む
この地でトヨタは何をするのか。トヨタが掲げるテーマの一つが「モビリティの再定義」だ。ヒト、モノ、情報、エネルギーを動かし、モビリティカンパニーへの変革を目指すうえで、さまざまなモビリティを生み出す舞台となるのがWoven Cityだ。
「自分以外の誰かのために」という想いを共有する仲間とともに、未来の当たり前となるようなプロダクトやサービスを生み出し、実証するモビリティのテストコースと位置付けている。この仲間が、インベンターズや住民、ビジターだ。
ヒト・モビリティ・社会インフラが連携するまちの形をしたテストコースで、生活をしながらさまざまなプロダクトやサービスを実証する。Woven Cityはトヨタだけでなく、こうした仲間が共創する場なのだ。
インベンターズには、トヨタやウーブン・バイ・トヨタを含むトヨタグループ企業だけでなく、社外の企業やスタートアップ、起業家など同じ志をもつ企業や個人も含まれ、モビリティの拡張を目指し、自らのプロダクトやサービスを生み出すべく実証を行う。
その際、トヨタが長年培ってきたものづくりの知見や、ウーブン・バイ・トヨタが有するソフトウェアのスキルなどの強みを生かしたツールやサービスなどの仕組みを社外インベンターズも活用でき、社会課題の解決や未来に向けた新価値創造をサポートしていく。この仕組みは「Woven Inventor Garage」と呼ばれる。
また、住民やビジターからリアルなフィードバックを受けながら、さまざまなインベンターズとのコラボレーションを通じて未来につながるイノベーションを生み出していくこともできる。
モビリティの再定義・モビリティの拡張といったテーマを旗印に、トヨタグループをはじめ、関心のあるインベンターズが集結し、住民を交えながらさまざまな取り組みを行う。それがWoven Cityだ。
「モビリティ」という制約があるが、これは自動車をはじめとした乗り物だけを指すわけではない。「移動」と捉えればその守備範囲は大きく広がる。ウーブン・バイ・トヨタがヒト、モノ、情報、エネルギーを4つのモビリティと捉えているように、ヒトもモノもサービスも、多くのものは生活上、あるいは経済活動上移動を伴う。
こうしたモビリティに関する取り組みを、トヨタのサポートや、住民やビジターからのリアルなフィードバックを受けながら実施することができる。その上、まちの形式をとっていてもWoven Cityは私有地内のため、一般公道などに比べ規制が緩い。外の社会では各種許可が必要なことでも、Woven Cityであれば迅速に着手することが可能だ。こうした点もインベンターズにとって大きな魅力となり得る。
2025年夏頃、スタートアップや起業家、大学・研究機関の皆さまにも参加いただけるアクセラレータープログラムの募集開始を予定しているという。
【参考】Woven Cityについては「トヨタWoven Cityを知るための「4つの数字」」も参照。
スマートシティとしても注目度が高い
インベンターズ以外でも、未来に向けた新たな都市づくり――といった観点で興味を持つ人も多いのではないだろうか。スマートシティ的な観点だ。
計画では、Woven City内の道は自動運転モビリティ用の道と歩行者用の道、歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存する道の3種類が用意される。これらの道が網の目のように織り込まれ、街区を形成していく。また、地下にも物流ネットワーク用途に特化した第4の経路を設置する。
既存の車道と歩道を基本とする道路形態とは異なるのだ。リアルな実証を行うことができるよう、一般道と同じような道も存在するものと思われるが、Woven City独自の道では、場所によっては独自の交通ルールを設定する可能性も考えられる。
物流用途の地下道はじめ、インフラ面でもさまざまな仕掛けが行われているものと思われる。情報やエネルギー関連のイノベーションに通じる仕掛けもあるはずだ。生活に利便性をもたらすさまざまな取り組みがWoven Cityで行われることが予想される。
こうした取り組みは、そのままスマートシティの概念に通じる。スマートシティブームは少し落ち着いた印象だが、国の関連事業は続いており、デジタル化やデータの有効活用方法などに関する取り組みは依然として継続されている。
絶対的な成功が確約されない領域だけに、Woven Cityにおける先進的・実験的取り組みに注目が集まるのは必然と言える。
今後、こうした観点からの視察や見学の申し込みが大きく伸びるのではないだろうか。
【参考】スマートシティについては「【特集】最前線「自動運転×スマートシティ」」も参照。
居住希望者も
居住を希望する人が早々に出てきていてもおかしくはない。フェーズ1では最終的に360人規模を想定しており、まずはトヨタ系社員をはじめとするインベンターズが入居する予定だ。
Woven Cityでは、住民やビジターのことをWeavers(ウィーバーズ)と呼ぶ。モビリティへの熱意を持ち、より豊かな社会の実現を目指すため実証などに前向きに協力しながら生活する。
当初計画では、子育て世代など共通の社会課題を有する層を募集するとしていたが、最終的にどのようになるかはわからない。ただ、社会課題に高い関心を持つ人や、最先端技術に触れたい人など、需要は決して少なくないものと思われる。
トヨタイムズによると、身内と言えるウーブン・バイ・トヨタの従業員とその家族を対象に、2025年5月から実際に1週間ほど生活する「実生活テスト」を行っているという。周辺で働くトヨタ関係者向けの住民募集説明会も実施したそうだ。
一般の募集はまだ開始しておらず、居住に関する情報は決定次第ウェブサイトなどで公表するとしている。一般からどのような反響が出るのか、要注目だ。
【参考】Woven Cityの住人については「トヨタ会長、「言い出しっぺ」自らWoven Cityに移住か?従業員ら360人、秋から入居」も参照。
自動運転開発にも注目
自動運転分野の動向も気になるところだ。今のところ、e-Paletteの活用を進めていく――といった程度の情報しか公開されていないが、自動運転車としての性能やインフラ連携といった技術面での開発をはじめ、多目的にどのような用途で有効活用できるかなどさまざまな取り組みが進められていくものと思われる。
Woven Cityでは、一般公道ではなかなかできない実証に着手できる可能性も高く、今後、トヨタとの距離を縮める米May MobilityやWaymoなど、他の開発事業者の参画があるか――といった観点からも注目したいところだ。
こまめにWoven Cityの公式サイトなどをチェック
このように、Woven Cityはさまざまな観点から注目を集めているのだ。現状、Woven Cityに関する情報は小出しのため、様子見的な問い合わせが多いかもしれないが、そろそろ秋のオフィシャルローンチに向け、具体的な情報が出始める可能性が高い。
関心のある人は、こまめにWoven Cityの公式サイトやSNSなどをチェックしてほしい。
▼Woven City公式サイト
https://www.woven-city.global/jpn/
■インベンターズの動向
インベンターズに5社が決定
2025年1月時点でインベンターズに決定しているのは、ダイキン工業、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングスの5社だ。このほか、ENEOSと日本電信電話、リンナイとも引き続き検討を進めている。
ダイキン工業は、「空気で答えを出す会社」として、Woven Cityで継続的に得られるさまざまなデータや住民からのフィードバックを活用した実証を通じて、「花粉レス空間」や「パーソナライズされた機能的空間」の実現に挑戦し、さらなる空気価値の創造を目指す。具体的には、花粉レス空間を生み出す空調・換気システムや、多感覚連携で空間体験の新たな価値を創出する空調、映像、音響などの連動システムを計画しているようだ。
ダイドードリンコは、中核事業である飲料事業の主力販路・自動販売機を通じた「新たな価値創造」を目指し、自動販売機サービスの拡充・構築、持続可能な稼働体制の構築、新たなビジネスモデルの構築に取り組むとしている。
日清食品は、ウーブン・バイ・トヨタが有するヒト・モノ・情報・エネルギーといったあらゆるモビリティの活用を見据え、利用者がいつでもどこでも「最適化栄養食」を食べられる環境を構築するとともに、「最適化栄養食」を継続的に食べている人の心身や行動などの変化を主観と客観双方の観点から確認し、その有効性を実証する。
UCCジャパンは、新たなコーヒーの価値創造を目的に、Woven Cityのオフィシャルローンチに合わせてコーヒーの潜在価値を実証する未来型カフェをオープンする。すでにe-Paletteをベースにしたカフェの構築は進められているようだ。
増進会ホールディングスは、Woven Cityにおいて教育分野の最新テクノロジーを活かした実証のため「Z会インベンティブスクール」を開校する。1歳~12歳の子どもを対象としたナーサリースクール(全日制幼児園)やアフタースクールを開校する計画のようだ。
【参考】インベンターズの動向については「トヨタWoven City、自動運転式の「移動カフェ」展開か」も参照。
■【まとめ】受け入れ体制に注目
今後、Woven Cityに関する具体的な概要が公表されれば、問い合わせがさらに増加することは間違いない。ビジターとして一度目にしたいという人も少なくないものと思われる。
ローンチまでに、どのような情報が発表されるのか。インベンターズに新たな動きはあるのか。そして、どういった受け入れ体制を設えるのか。Woven Cityの動向に引き続き注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転技術、すでに「テスラ超え」か ”実はレベル高い”との声多数」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)