年初来で約40%も株価が下落している米EV大手テスラ(TSLA)。同社の株価にさらなる暗雲が立ちこめ始めた。
ドイツ銀行のアナリストがテスラが進める自動運転タクシー(ロボタクシー)事業に対して「極めてリスキー」という分析結果を下し、ドイツ銀行はテスラに対する投資判断を「買い」から「ホールド」に格下げした。
■中核事業であるEV生産に悪影響?
こうした判断を下したのは、ドイツ銀行の米国自動車アナリストであるEmmanuel Rosner氏だ。テスラが多くの事業リソースを自動運転タクシーの開発に注いだ場合、長期的な課題に直面する可能性があるとしている。
Rosner氏はテスラが自動運転タクシーの開発に注力することで、同社の中核事業であるEV生産に何らかの悪影響が出ないか懸念しているようだ。
Rosner氏はメディアのインタビューに対し、以下のように語っている。自動運転タクシー事業の有望性を認めた上で、成功確率やマネタイズの時期については不確実なことが多いと考えているようだ。
「So in our discussion with investors, I think people usually, especially longer term investors, they’re excited about the concept of robotaxi. It’s a good business. It’s something that has a potential to be a meaningfully better business than making cars.」(ロボットタクシーのコンセプトに興奮していると思います。いいビジネスだ。自動車を作るよりもはるかに優れたビジネスになる可能性がある。)
「The issue is what probability of success can you really attribute to it, what is the timeline for it?」(問題は、本当に成功する確率はどの程度なのか、そのタイムラインはどの程度なのかということだ。)
■いまだ未実現のテスラの自動運転事業
テスラを率いるイーロン・マスク氏の自動運転タクシー計画は、今に始まったことではない。過去に何度もロボタクシー事業について触れ、顧客に販売した車両をロボタクシーとして活用する構想を披露したこともあった。
完全自動運転の実用化時期について口にしたこともあったが、ロボタクシー事業を含め、いまのところテスラは自動運転関連についてはまだ実現させたプロジェクトがない。「FSD」という「Full Self-Driving」(完全自動運転)を略した名称のソフトウェアも、運転支援レベルにとどまる。
そのため今後のテスラの方向性については、マスク氏の自動運転に対する本気度を改めて慎重に読み解きつつ分析する必要がありそうだ。
【参考】関連記事としては「テスラはオオカミ少年?真の「自動運転」実現なら覇者返り咲きか」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)