GMの自動運転部門であるCruise(クルーズ)は現在、アメリカ国内13都市で有料展開していた自動運転タクシーの運行を全面的に停止している。そのCruiseの従業員向けのメールで、運行再開の際はまず1都市での展開になることが記載されていたことが分かった。
どの都市で何台ほど展開することになるかなど具体的な内容は、Eメールには記載されていない。
■Origin計画を変更、2024年は生産せず
アメリカ国内では、GM CruiseがGoogle(Waymo)と並んで自動運転タクシービジネスをリードする企業の一社ということもあり、自動運転タクシーの運行停止などに関連するニュースが連日のようにメディアで報道されている。
女性を下敷きにした事故や相次ぐ運行トラブルが運行停止に結びついたCruise。冒頭触れた運行再開に関するニュースのほか、従業員に対する人員削減を行う計画があることも報道されている。詳細は12月中旬に発表される見込みだが、主に非エンジニア職を解雇する見込みのようだ。
また、自動運転タクシーを展開するためのオリジナル車両として開発していた「Origin」(オリジン)については、生産計画が変更されたことも明らかになっている。
Originはハンドルもペダルもない車両で、車内空間が広く設計されていることが特徴。2024年はプロトタイプも量産車も生産しないという。しばらくは、先日まで展開していた自動運転タクシーで使用していたシボレーボルトベースの自動運転車の開発に注力するという。
■莫大な開発コスト、投資家からの圧力強まる
Cruiseに関しては、創業者でCEO(最高経営責任者)だったKyle Vogt氏が辞任したことが発表されたが、それに続いて共同創業者でCPO(最高プロダクト責任者)のDaniel Kan氏も辞表を提出したことが明らかになっている。
Cruiseの今回の一連のトラブルは親会社のGMにとっても悩みの種だ。報道によると、2023年第3四半期(2023年7〜9月)だけでCruise事業には7億ドル(約1,050億円)のコストがかかっており、投資家からの圧力も強まっているとみられる。
そんな中で、自動運転タクシーの運行再開に関するニュースがあったわけだが、事故やトラブルにつながった根本的な問題が解決されなければ、運行後にまた騒動が起きる可能性は大きい。まだまだCruiseの苦難は続きそうだ。
【参考】関連記事としては「GM Cruiseの自動運転戦略(2023年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)