JAXA、空飛ぶクルマの「騒音低減」に協力 SkyDriveと共同研究

日本最大の風洞試験設備など活用



JAXAの大型低速風洞での音源探査試験の様子=出典:SkyDriveプレスリリース

空飛ぶクルマの開発を手掛ける株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市/代表取締役CEO:福澤知浩)は2023年9月14日までに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と騒音低減に向けた共同研究に開発に関わる契約を締結したことを発表した。

空飛ぶクルマの実用化に向けて行われるもので、今後SkyDriveは自社での研究に加え、JAXAの協力のもと、空飛ぶクルマの機外騒音推定技術の向上に関する研究を推進していくという。


■騒音を推定・評価する技術の獲得が必須

SkyDriveは、2025年に開催される大阪・関西万博での空飛ぶクルマの運航に向け、着々と開発を進めている。

空飛ぶクルマを実現させるためには、機体の安全性と環境に対する基準を満たし、機体の耐久性を証明する必要がある。同社が現在開発を進めている機体は、騒音源となるロータや配置、システム構成などが従来の回転翼機とは異なる特徴を持つことが予想されており、空飛ぶクルマの騒音を推定し評価する技術の獲得が必須になるという。

またJAXAは、日本最大の航空機用風洞試験設備を保有しており、これまでにも回転翼の音源探査の技術開発を行っている。SkyDriveはその技術を活用し、JAXAの同整備で初となる空飛ぶクルマの低騒音化に向けた共同研究をスタートする。

SkyDriveは、ロータ・全機模型風試や将来機向け技術課題抽出を担当する。JAXAは、実機ロータ・実機音源識別や機外騒音推定、将来機向け技術ロードマップ策定を担当する。


出典:SkyDriveプレスリリース
■日本を代表する空飛ぶクルマの開発企業

SkyDriveは、2018年7月に「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」のミッションのもと、有志団体CARTIVATOR(現Dream-On Management)から派生する形で設立された。3人乗りの空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」のほか、1回の飛行で30キログラムの重量物の運搬が可能な物流ドローン「SkyLift」、SkyLiftの運用に関わる各種業務をワンストップで行うサービス「SkyLift Plus」などを手掛けている。

2023年1月には、米国市場に参入に向け、米サウスカロライナ州に本拠点を置いたことを発表した。2026年に同州の複数の主要空港を起点とした商業運航の開始を目指しており、空飛ぶクルマの運航ルートの確立や運航実現に必要なエコシステムの構築に向けた航空会社や地元の企業とのパートナーシップ形成を行っていく計画だ。また同年3月には、ドバイのエアモビリティ市場に参入することを発表した。

空飛ぶクルマについての受注も順調で、商用機については2022年11月にベトナムのディベロッパーであるパシフィックグループから最大100機、2023年に入ってからは4月に日本の大豊産業、7月にベトナムのCTグループの子会社から100機のプレオーダーの合意を得ている。個人向けの受注の獲得実績もある。

■共同研究で実用化のスピードが加速

SkyDriveが開発する機体が、人々の生活環境の中で離着陸し実用化されるためには、さらなる騒音低減が必要だという。同社はJAXAとの共同研究により、騒音源のロータやシステム開発を加速していくとしている。


JAXA×SkyDriveの取り組みがどのように発展していくのか、今後も動向を注視していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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