自動運転ロボ×エレベータ、規格策定で連携容易に

入退管理システムやドアとの連携も必須

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出典:デジタル庁公開資料

サービスロボットの活用を促進する取り組みが各所で進められている。一般社団法人ロボットデリバリー協会は、ロボットの安全な公道走行に向け「自動配送ロボットの安全基準等の策定方針」を策定した。一方、一般社団法人ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)は、「ロボット・エレベーター連携インタフェイス定義」を発行している。

RFAの規格は、経済産業省所管の「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」などが策定したドラフト版を改定し、RFA正式版として発行したものだ。

こうしたロボット開発や運用に関するルール作りや規格化を進めることで、開発・導入費用の低減を図ることができ、ひいてはロボットの社会実装を促進することにつながる。

RFAは現在、エレベーター連携以外にもさまざまな観点から規格化を進めているようだ。この記事では、RFAの概要とともにその取り組みに迫る。

■RFAの概要
国の事業から発展的独立し組織化

RFAは、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が設立した「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」内の「施設管理テクニカルコミッティ」に端を発する。

タスクフォースでは、業界を通じてあらゆる施設へのロボット導入を実現するための手法が検討され、2021年6月に「ロボット・エレベーター連携インタフェイス定義」が発表された。

その後、よりスピード感を持って自発的にロボット活用を推進するため、タスクフォースから発展的に独立する形で設立されたのがRFAだ。

ロボットの導入と、ロボットフレンドリーな環境(ロボットを導入・運用しやすい環境/ロボフレ環境)の構築支援を目的に掲げ、施設とロボット連携における協調領域の整理やロボフレ環境の定義、ロボットを導入しやすい環境の具体化、ロボットの群管理の実現支援などを目指している。

現状、ロボットメーカーやシステムインテグレーターは多様なユーザーの要望に個別対応しており、高コストな状況となっている。そこで、ロボットを導入しやすい「ロボフレ環境」を整備することで最小限のカスタマイズで導入を図ることができるようにし、市場化・社会実装を加速させていく狙いだ。

会員企業は、正会員としてアイリスオーヤマや沖電気工業、川崎重工業、SEQSENSE、ソフトバンクロボティクス、TIS、日本信号、日立ビルシステム、本田技術研究所、NECネッツエスアイ、ジェイアール東日本企画、綜合警備保障、東芝エレベータ、トヨタ自動車、日本電気、パナソニックホールディングス、三菱電機ビルソリューションズなど38社が名を連ねている。

ロボット開発企業やビル、エレベーターシステム開発企業などをはじめ、トヨタと本田技研も参加している点に注目だ。

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■RFAの取り組み
4つのタスクフォースを設置

組織内には、エレベーター連携TC(テクニカルコミッティ)、セキュリティ連携TC、物理環境特性TC、ロボット群管理TCを設置し、各TCで規格やガイドラインの発行などを進めている。

エレベーター連携TCでは、「ロボット×エレベーター連携システム」のスムーズな導入・運用支援を目的に、システムを簡易かつ安定的に導入可能とするマニュアルの作成や連携規格のブラッシュアップ、サービスロボット実用化の訴求活動などを行っている。

エレベーターと連携する可能性のあるロボットとして、警備ロボットや清掃ロボット、搬送ロボット、案内ロボットなどが挙げられる。

ビルなどにおいてロボットを縦移動させるためにエレベーターは欠かせないが、従来であれば各ロボットの開発者がエレベーター開発企業と個別に通信手法などを詰めなければならなかったが、各ロボット・エレベーター開発企業に対応する共通連携基盤・規格を整備することで、ロボット導入のハードルを下げることが可能になるのだ。

こうしたシステムが生きる場は、オフィスビルや商業施設、駅、ホテル、病院、高層マンションなど思いのほか多い。RFAが旗振り役となることで、今後同規格の導入案件が続々出てくることに期待したいところだ。

入退管理システムやドアなどとの連携も必須に

セキュリティ連携TCは、入退管理システムや扉、フラッパーゲートといったセキュリティとロボットが連携するための支援として、ロボットとセキュリティが連携するための規格発行や、ロボット×セキュリティ連携システムを簡易・安定的に導入可能とするガイドラインの作成を進めている。

エレベーター以外にも、建物のエントランスや自動ドア、自動シャッター、フラッパーゲートなど、ロボットが連携すべき設備は多く、また共用部や半専有部、専有部、認証が必要な制限区域など建物内における管理体制や権限もさまざまだ。

例えば、宅配便などを建物内で配達する搬送ロボットであれば、まず外部の配送事業者から宅配便を建物の入口で受け取り、共用部の配達先入口まで配達するか、受け付けなどの専有部の入り口で荷物を受け取り、オフィスや各戸などの制限区域の配達先まで配達する。その間、エントランスやエレベーター、認証が必要なドアなどが通過することになる。

建物内外を定期巡回する警備ロボットであれば、必要に応じて建物外周や建物内の共用部、専有部、制限区域などを自律走行することになり、エリアを横断する際にその都度ドアの開閉や認証などを要することになる。

こうしたセキュリティ連携がなければ、ロボットが移動可能なエリアは限定されることになり、多様な需要に応えることができず業務への組み込みが広がらない。

そこで、入退管理システムやドア、フラッパーゲートなどとの連携についても規格化を進め、システムを簡易・安定的に導入可能とするガイドラインの作成を進めているのだ。

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ロボットを導入しやすい環境を明確に

物理環境特性TCは、ロボフレ環境を具体的かつ定量的に定義し、ロボット導入のハードルを下げることを目的に、施設における各種規定や法令の調査、ロボットの技術的仕様を踏まえより精緻にロボフレ環境を定量化した上での規格策定、ロボフレ環境を構築するためのマニュアル発行などを進めている。

2021年度に実施された「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」によると、通路幅が0.8メートル未満、段差5ミリ以上、非自動ドアなどの環境はロボフレレベルC、通路幅が1.2メートルまでで段差5ミリ未満、毛足の長いカーペットといった環境はロボフレレベルB、通路幅が1.2メートルより広く、段差がなく、ロボットが周囲にいる限り開き続ける自動ドアなどを備え、ODD(運行設計領域)内で通信が途切れないなどの環境をロボフレレベルAとするなど、ロボット使用に対する障がいの程度に応じてレベル分けされている。

こうしたロボットフレンドリーな環境についても規格化を進めることで、開発企業は導入エリアの状況を把握しやすくなり、ユーザー側もロボフレ化するための方法や要件、可能なサービスなどを把握しやすくなる。

物理環境特性TCでは、ロボフレレベル Draft1.0の策定や共有マーカーに関する討議、物理環境特性の標準化に関する訴求活動などを進めていく構えだ。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)
複数種・複数台のロボットの同時稼働を可能に

ロボット群管理TCは、単一施設内で複数種複数台のロボットが同時に稼働できる環境を整えることを目的に、ロボット同士のすれ違いを実現するための通信仕様の規格化や、ロボット同士のすれ違いを実現するための運用のマニュアル化などを進めている。

将来、清掃ロボットや警備ロボット、配送ロボットなどが同一施設内で同時に稼働し、またそれぞれのロボットが複数台導入されることが予想されるが、経路上での渋滞や通行不可、エレベーターホールやセキュリティゲート連動時の混雑、待機場所・退避場所の混雑などが懸念される。

こうした課題解決に向け、どのロボット管理プラットフォームからも標準的制御が可能なロボット制御の実装や、ロボットの位置情報やステータスなどの情報をロボットプラットフォーム間で連携する手法、ロボットの左側通行などロボットの挙動・運用ルールの標準化などを進めていき、複数のロボットを安全かつ効率的に運用するための規格を作成する方針だ。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)
■【まとめ】新領域において業界団体が果たす役割は重要

新領域では、さまざまな開発プレイヤーが乱立し、それぞれが独自規格を用いることで他社と連動・連携することなく競争を進めていく例は少なくない。競争自体は否定されるものではないが、その領域全体における最適化の観点を見落としてはならない。その意味で、RFAのような業界団体は果たす役割は非常に大きい。

RFAの取り組みは、新たなモビリティ・ロードマップの策定を進めるデジタル庁所管の「モビリティ・ロードマップのありかたに関する研究会」でも発表されている。デジタル交通社会の形成に向けた取り組みとして、今後さらなる規格化が進められていくことになりそうだ。

▼人と共存したロボットの社会実装に向けた課題と現在の取り組みについて
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/968f930c-8ae0-4380-a50c-b3eac0fe3f4e/2bdf9b2f/20230614_meeting_mobility_roadmap_agenda_04.pdf
▼「モビリティ・ロードマップ」のありかたに関する研究会(第2回)
https://www.digital.go.jp/councils/mobility-roadmap/968f930c-8ae0-4380-a50c-b3eac0fe3f4e/

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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