日本が誇る「新幹線」の自動運転化が加速!JR東とJR西がタッグ

北陸新幹線のE7系・W7系をベースに



出典:JR東日本プレスリリース

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は2023年5月14日までに、新幹線の自動運転について技術協力することを発表した。

両社は相互直通運用を行う北陸新幹線のE7系・W7系をベースに、自動運転の実現に向けたシステム開発やコストの軽減に向け、協力して検討を進めていくとしている。


なお、JR東日本とJR西日本が目指す自動運転レベルは、「GoA3(添乗員付き自動運転)」と「GoA4(完全自動運転)」となる。

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■JR東とJR西、それぞれ自動運転に積極姿勢

JR東日本とJR西日本はこれまでそれぞれ自動運転化に向けた取り組みを進めてきた。

JR東日本:「変革2027」掲げる

JR東日本は、グループ経営ビジョン「変革2027」に掲げるドライバーレス運転(GoA3、GoA4)の実現のため、自動列車運転装置(ATO)の開発を進めている。2021年度には新幹線のE7系を使用して、上越新幹線の新潟駅~新潟新幹線車両センター間で回送列車の自動運転の試験を行った。また、この試験環境を利用し、ローカル5Gの試験を行い、鉄道への活用の可能性を検証したようだ。

これまでの試験などによる知見をもとに、2020年代末に上越新幹線の新潟駅~新潟新幹線車両センター間の回送列車のGoA4の実現、2030年代中頃に東京駅~新潟駅の営業列車のGoA3でのドライバーレス運転の実現を目指すとしている。


なおJR東日本は、気仙沼線BRTにおける自動運転レベル4の認証取得を目指すことを2023年4月に発表している。2022年12月に営業運転を開始した気仙沼線BRTの自動運転バスは、現在は「自動運転レベル2」で運行しているが、2024年秋頃までに「日本初の時速60キロでのレベル4」に引き上げるという。

JR西日本:「人と技術の最適な融合」掲げる

JR西日本は、技術ビジョンの目指す姿として「人と技術の最適な融合」を掲げ、「自動運転技術による安全性と輸送品質向上」の実現に向けた技術の開発に取り組んでいる。

自動運転機能の要素技術開発として、新幹線車両を自動で加速・減速させ定められた位置に停止させる制御装置や、車両に発生した異常を自動的に検知し、安全に停止させるためのシステムの検討を行っており、2022年度からは現車を用いた実証実験を行っている。北陸新幹線の白山総合車両所で敷地内にて、自動運転機能を用いて新幹線車両を走行させ、車両の速度制御(加速・減速)や定位置停止機能を確認するというものだ。

また2020年3月には、ソフトバンクと共に自動運転と隊列走行技術を用いたBRTの開発プロジェクトを開始することを発表している。2020年代半ばの「自動運転・隊列走行BRT」の技術確立を目標に各技術要素の検証などを進めるとしていた。


■鉄道各社が自動運転化を目指す

東武鉄道がGoA3の実施に向けた検証を開始することを2021年5月に発表し、また東京地下鉄(東京メトロ)が2025年度から、丸ノ内線で車掌が先頭車両に乗務する形態の自動運転の実証実験を行うことを2023年4月に発表するなど、鉄道各社で自動運転化に向けての取り組みが進んでいる。

すでに無人運転が実用化されている路線もある。神戸新交通のポートライナーや六甲ライナー、横浜シーサイドラインが運営する金沢シーサイドラインや、東京都交通局が運営する日暮里・舎人ライナー、舞浜リゾートラインが運営するディズニーリゾートラインなどだ。なお、ディズニーリゾートラインはモノレールだが、そのほかはモノレールとは別の新交通システムとなっている。

今回のJR東日本と西日本の連携による新幹線の自動運転化は、少子高齢化による人材不足や労働状況の問題の改善に寄与することになりそうだ。また、世界初の高速鉄道である新幹線が自動運転化すれば、日本の技術の絶好のアピール機会にもなること間違いなしだ。

両者の今後の取り組みに引き続き注目したい。

【参考】関連記事としては「JR東に続きJR西も!新幹線の自動運転実現へ、実証実施へ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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