東京地下鉄(東京メトロ)は2025年度から「丸ノ内線」で、車掌が先頭車両に乗務する形態の自動運転の実証実験を行う。2023年4月から試験準備を進めるとしている。
■地下鉄丸ノ内線で「GoA2.5」実現へ
東京メトロは、少子高齢化や働き方改革など社会環境が変化する中で、事業の継続と安全・安心な輸送サービスを提供していくためには、輸送システムの変革が必要だと考えているという。そのために、2013年度から無線を利用した列車制御システム「CBTC」という技術の開発に取り組んできた。同技術は2024年度に丸ノ内線で導入される。
この技術を活用し、車掌が列車の先頭車両に乗務する自動運転の実用化を目指す。これは鉄道における自動運転レベルでは「GoA2.5」に相当する。車掌が先頭車両に乗務することで、通常の車掌業務に加え、緊急停止の処置や駅間での急病人の発生といった緊急事態にもこれまでどおり対応できるという。
まず2023年4月から、実証に用いる車両の仕様検討や自動列車運転装置(ATO)の高機能化を手掛けていく。
■鉄道における「自動運転レベル」とは?
鉄道における自動運転は、国際電気標準会議(IEC)が定義する「IEC 62267(自動運転都市内軌道旅客輸送システム)」で自動化レベルが定められている。
「GoA0」は目視運転のことで、路面電車で導入されている。「GoA1」は非自動運転で、踏切道などがあるなど一般的な路線で導入されている。「GoA2」は半自動運転のことで、運転士が列車起動や緊急停止、操作、避難誘導などを行う。一部の地下鉄などで導入されている。
東京メトロが開始する自動運転は「GoA2.5」に相当し、緊急停止操作などを行う係員付き自動運転を指し、列車の前頭に乗務する運転士ではない係員が緊急停止操作や避難誘導などを担う。このレベルから運転士の乗車が必要なくなる。
また「GoA3」は添乗員付き自動運転のことで、列車に乗務する係員が避難誘導などを担う。一部のモノレールで導入されている。「GoA4」は自動運転を指し、係員が非搭乗となる。一部の新交通システムなどが相当する。
■国内各地で鉄道が自動運転化
国内各地で、鉄道の自動運転に向けての取り組みが行われている。JR山手線では2022年10月から、自動運転の実証を開始した。2028年ごろまでに山手線の全ての列車への自動運転の導入を目指しているという。
また東武鉄道はGoA3の実現に向け、営業列車に前方障害物検知システムを仮設搭載した検証試験を2022年11月から開始した。
なお、すでに無人運転が実用化されている路線もある。神戸新交通のポートライナーや六甲ライナーだ。ポートライナーは、国内で初めて無人運転を実現した新交通システム路線だ。そのほか、横浜シーサイドラインが運営する金沢シーサイドラインや、東京都交通局が運営する日暮里・舎人ライナー、舞浜リゾートラインが運営するディズニーリゾートラインも無人運転で運行されている。
なお、ディズニーリゾートラインはモノレールだが、そのほかはモノレールとは別の新交通システムとなっている。
少子高齢化などにより、運転士の確保や労働環境が課題となっている鉄道業界で、自動運転化が早く進むことを期待したい。
【参考】関連記事としては「鉄道の自動運転レベル、GoA0〜4の定義や導入状況を解説」も参照。