テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は2022年8月29日、自動運転車を年内にアメリカ市場と欧州市場に導入することを目指すと語り、広く普及を目指すと発表した。
テスラは高度運転支援機能を「オプション」として販売している。そのオプションは「FSD」という、「Full Self Driving」(完全自動運転)の頭文字をつなげた名称だが、いまのところ、展開できている技術レベルは「自動運転レベル2」にとどまる。
一般的に、自動運転レベル2を使える自動車は「自動運転車」とは呼ばないため、マスク氏の言葉通り、年内に自動運転車を米欧市場で導入するのであれば、FSDのレベルを「2」から「3」にあげる必要がある。
つまり、「自動運転車を年内にアメリカ市場と欧州市場に導入する」ということは、「年内にFSDを自動運転レベル2からレベル3にアップグレードする」とほぼ同義と言える。
■ホンダやメルセデスに先を越されているテスラ
このことが可能かどうかは分からないが、世界的にはすでにレベル3の機能を展開する企業は存在している。ホンダだ。2021年3月に発売した新型レジェンドにレベル3のシステムを搭載させている。メルセデス・ベンツもレベル3のオプション販売について発表している。
しかし、本来であれば、テスラはホンダやメルセデス・ベンツよりももっと早く自動運転車を展開しているはずだった。詳しくは自動運転ラボの記事「名言?迷言?自動運転、テスラのイーロン・マスクCEO発言5選」などを参照してほしいが、たとえば2019年4月には、2020年半ばに自動運転タクシーサービスを展開する計画を明らかにしている。
自動運転タクシーの展開ともなれば、すでにレベル3以上の技術は確立できているはずだが、まだテスラは自動運転タクシーも展開できていない。
■結局また、絵に描いた餅?
マスク氏は過去に何度も、自動運転に関する「前のめりな発言」をしてきた。今回の発言もその類いの発言であり、「2022年内の自動運転車の展開」は、結局また、絵に描いた餅なのだろうか。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術(2022年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)