スリム化&積載量増!病院内配送ロボが進化、川崎重工などが実証

藤田医科大学病院でフェーズ3に



出典:川崎重工業プレスリリース

藤田医科大学、川崎重工業、SEQSENSEは、藤田医科大学病院で屋内配送向けサービスロボットの実証実験を2022年8月8〜9日に行った。

実証実験は今回で3回目となる。2021年10月のフェーズ1、2022年2月のフェーズ2と、実験を行うたびに改良を重ね進化を遂げてきた。


フェーズ3の今回は、混雑する院内での安定した自律走行やロボットの小型化、ロボットの現在地の可視化、荷室サイズの最適化などを実現し、実用化までもう間もなくだ。

2022年12月に最終の実証実験を行い、2022年度内に院内でのロボット導入を目指す。

■フェーズ1:検体搬送業務をロボットが代行

初回の実証実験では、箱型ロボットを使用した。内容は、エレベーターを使用しながら検査用の検体をスタッフステーションから検査室に運んで戻って来るというものだ。ただし、エレベーター操作には人の補助が必要だった。

この実験を踏まえて、ロボット自らがエレベーター操作をしてのフロア間移動や、ワゴンやベッドの位置などが日々変わる環境下での安定走行、ロボットの位置情報を把握する方法の確立が課題となった。


■フェーズ2:アーム付きロボでエレベーターも自力操作

2回目の実証実験ではアーム付きロボットを導入し、エレベーター操作に必要なICカードの提示を自ら行う仕組みを取り入れた。そのほか、処置室の引き戸の開け閉めやカーテンを開けずに患者の様子を撮影するなど業務の幅を広げた。

ちなみに、使用されたロボットはディスプレイが顔になり表情が表示される仕様だ。業務をこなすだけでなく、ロボットと人とのコミュニケーションについても検証したようだ。

■フェーズ3:さらに進化!混雑する病院内でもスムーズに移動

2回に及ぶ実証実験の結果を踏まえ、今回のフェーズ3ではさらに進化したロボットが開発された。

使用されたロボットはフェーズ1と同じ箱型で、サイズは幅約55センチ×奥行き約55センチ×高さ約140センチ。ベッドや車いす患者の移動を邪魔しないよう小型化を図りつつ、積載量は増やしたという。ちなみに、55センチは成人男性の肩幅とほぼ同じであり、エレベーターで人と相乗りが可能で、かつ荷物を搬送できるサイズのようだ。


エレベーター操作については、エレベーターや自動ドアのインフラをスマート化することによってロボットの自律走行を実現。さらに、川崎重工が開発した屋内位置情報サービス「iPNT-K」でロボットの現在地を把握できるようにしたほか、SEQSENSEの3D LiDARシステムや自律走行制御技術を導入することで障害物の検知機能が向上し、安定した走行が可能となったようだ。

出典:川崎重工業プレスリリース
■「スマートホスピタル」という改革

少子高齢化や新型コロナウイルスの流行などで医療従事者の負担が増える中、業務の効率化を図る「スマートホスピタル」の需要が高まっている。搬送ロボットはその中で主役の1つだ。

しかし、緊急の事態が日々発生し常に環境が変わる病院内では、一般の配送ロボットよりも高度かつ柔軟性が求められる。だからこそ、実証実験を通じて少しずつロボットを進化させていくことは、非常に意義があることと言える。

今後も、最後の実証実験に向けて細かな調整が行われていくようだ。医療の現場も支える配送ロボにこれからも注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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