自動運転バスを活用したモビリティサービスの実証実験がインドネシアで始まった。同国で初となる実証実験を実施するのは日本勢だ。かつて、高速鉄道計画における新幹線の受注で中国勢に負けた日本。自動運転分野で巻き返しを図れるか注目だ。
■三菱商事とマクニカがタッグ
総合商社の三菱商事と自動運転ソリューションプロバイダーのマクニカは、インドネシアのジャカルタ郊外の大規模開発エリア「BSD City」において、自動運転バスを活用したモビリティサービスの実証実験を2022年5月20日から開始した。
実証実験は2023年1月5日までを予定しており、BSD Cityの中心となる商業施設やオフィスエリアで自動運転バスを周遊させ、地域住民や来訪者に実際に乗車してもらいながら実証実験を行う。
運行車両は仏NAVYA社製の自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤアルマ)」だ。ハンドルやアクセル、ブレーキが無い最大15人乗りのEV(電気自動車)で、1回の充電で約9時間、約100キロの自動走行が可能だ。
自動運転レベルについてはプレスリリースで、「レベル2(技術的にはレベル3相当)」と説明している。自動運転バスの車内にはドライバーが同乗し、緊急時が手動介入するという。
この実証実験は、独立行政法人「国際協力機構」(JICA)の2020年度第2回公示「中小企業・SDGsビジネス支援事業~普及・実証・ビジネス化事業(SDGsビジネス支援型)~」の枠組みにおいて、スマートシティ実現に向け、自動運転車によるモビリティサービスの提供を検証するものだ。途上国が抱える課題解決と日本企業の海外展開を狙う目的がある。
■交通・安全・環境面の課題解決に期待感
三菱商事は、インドネシアにおける不動産デベロッパー最大手の1つであるSinar Mas Land社とBSD City全体の都市価値向上を目指す基本合意書を締結し、スマート・デジタルサービスやカーボンニュートラルに向けた協業を開始している。
またマクニカは、これまで日本で行ってきた自動運転移動サービスの実証実験などのノウハウを生かし、交通利便性の効果を検証しながらASEAN地域のモビリティ事業拡大を目指している。
近年急激に経済成長が進むインドネシアでは、以前から交通渋滞や自動車の排気ガスによる環境汚染が深刻な問題として叫ばれてきた。配車サービスの「Gojek」や「Grab」が普及し、バイクによるライドシェアが行われるなど、新しいモビリティサービスも導入されている。
しかし、今後さらなる人口増加が予想されることから、自動運転EVバスは交通面・安全面・環境面などにおけるさまざまな課題の解決につながることが期待されている。
■自動運転バスは、新幹線の「雪辱戦」
インドネシアといえば2015年、ジャカルタ―バンドンの2都市を結ぶ高速鉄道計画をめぐり、日本と中国が新幹線の受注争いを繰り広げた。日本が先行して準備を進めていたが、後から参戦した中国に契約を奪われるという苦い記憶が残る。
今回、インドネシア初となる自動運転実証実験を成功させ、日本企業の実力を見せつけることができるか注目だ。
【参考】関連記事としては「日本工営、インドネシアでMaaS支援 ビッグデータ解析などで協力」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)