「あの回送車、なんかもったいないなぁ・・・・・・」。誰も乗っていない回送中のバスを見掛けて、そう感じたことがある人は少なくないはず。言うなれば、空気だけを乗せて走行している状況だからだ。しかし、こうした「もったいなさ」がお金に変わる可能性が出てきた。
■ニコニコレンタカーの回送車をレンタル
ニコニコレンタカーを展開する株式会社MIC(本社:神奈川県横浜市)と、MaaS関連サービスを手掛けるPathfinder株式会社(本社:東京都板橋区)は、回送車両と利用希望者をマッチングさせる実証実験を開始することを、2022年4月4日までに発表した。
実証実験の第1弾では、ニコニコレンタカーの「新横浜駅店」(神奈川県)から「新千歳空港店」(北海道)まで回送しなければならない車両を利用し、新横浜駅店で回送車を借り、新千歳空港店でその回送車を返すことができるユーザーを募集する。
回送車を借りた人は、2022年4月6〜18日の間で最大5日間にわたって車両を借りることができる。要は「片道ユーザー」として回送車を利用するわけだ。レンタル料金は7,777円。今回は回送車7台を使って実証実験を行うという。
■回送車を多数用意するための工夫
Pathfinderは今回の実証実験で、回送車両とユーザーのマッチングシステムを構築し、提供する。
回送車と利用希望者のマッチングは、これまでもアイデアとしてはあり、トライアルを行っている企業もある。しかしこうしたマッチング事業は、多くの回送車と多くの利用希望者がいるプラットフォームでなければ、成り立たせるのが難しい。マッチングの頻度が上がらないからだ。
そこでPathfinderは今後、さまざまなレンタカー会社やカーシェア会社と手を組み、回送車両の数を確保しながら、エンドユーザーも集めて、高いマッチング精度が確保されるプラットフォーム作りに着手するようだ。
第1弾の実証実験の後は、成果を考慮したうえで、次回の実証実験の対象ルートや利用可能台数を決め、マッチングシステムの改善なども同時に進めていくという。
■自動運転化においても重要なマネタイズ施策に
ちなみに、レンタカーが自動運転化されたあとも、「回送で稼ぐ」ことは非常に重要なマネタイズ施策だ。レンタカーとして使われている自動運転車が利用者に乗り捨てられたあと、自動運転車であれば人の手を介さず、マッチングした利用者がいる場所へ自動走行で向かうことができるからだ。
要はタクシーのように「売上をあげた後にすぐまた別の売上を・・・・・・」と、効率よく車両に稼がせることができるようになる。
■民泊最大手Airbnbと似たような発想
冒頭も触れたが、回送車には「人を乗せずに空気だけを運ぶ」というもったいなさがある。そこに目をつけた発想は、民泊最大手のAirbnbと似てる。「使っていない部屋を他人に貸す」という感覚と、アイデアの方向性は一緒だ。
そう考えると、いずれ回送車のマッチングサービスも「民泊」のように、世界的に広まっていくかもしれない。そんな大きな飛躍の可能性を感じたMIC社とPathfinder社によるプレスリリースだった。
【参考】関連記事としては「MaaS解説(2022年最新版)」も参照。