Uber、ライドシェアに加え「ゆうパックの配達」のダブルワークが可能に

貨客混載で一気にドライバー不足を解消か



ライドシェア×貨物配送」という興味深い取り組みが石川県加賀市で始まった。同市と日本郵便、Uber Japanによる公共ライドシェアドライバーによる貨客混載の実証事業だ。


自家用有償旅客運送はもちろん、自家用車活用事業(日本版ライドシェア)も副業としては中途半端な印象がぬぐえなかったが、貨物配送業務を兼務することでドライバー職としての魅力は大きく増す。

ライドシェア×貨物配送のポテンシャルについて解説していく。

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■石川県加賀市の取り組み

ドライバーが日本郵便と契約、配達業務を兼務

加賀市と日本郵便、Uber Japanは2025年3月から、日本初の公共ライドシェアドライバーによる貨客混載の実証事業をスタート。ライドシェアドライバーの空き時間を有効活用し、ゆうパックの配達を行う取り組みだ。

日本版ライドシェアではなく、自家用有償旅客運送となる「加賀市版ライドシェア」のドライバーが日本郵便と契約し、「ラストマイル輸送等への輸送対策としての自家用有償運送の許可」を取得する。さらに配達業務に関する研修を受けた上で、日本郵便のシステムを活用して配達を管理・実施する。


期待される効果として、次の3点が挙げられている。

  • ライドシェアドライバーの収入向上:配車リクエストが入らない時間帯でも、ゆうパックの配達によって追加収入を得られる。
  • ライドシェア供給の安定化:待機時間の有効活用により、ドライバーのオンライン時間が増加し、ライドシェアの供給が安定する。
  • 日本郵便の配達リソースの確保:ライドシェアドライバーの有効時間活用により、ゆうパック配達のリソース確保が多様化される。

ドライバーは空き時間を配送に回すことで、収入を向上することができる。配送事業者はドライバー不足を埋めることができる。また、ドライバーのオンライン時間が増加することで、ライドシェア需要に対する供給も安定する――ということだ。

出典:Uber Japanプレスリリース

日本版ライドシェアと配送は相性が良い?

加賀市における取り組みはボランティアに近い自家用有償旅客運送制度に基づくものだが、「ライドシェア×配送」は日本版ライドシェアと相性が良いかもしれない。

タクシー事業者の管理のもと一般ドライバーがサービスを提供する日本版ライドシェアは、実質的にパートタイム・ドライバーであり、制度上稼働可能な時間帯や曜日が限られている。好きな時間に好きなだけ働く――といったライドシェア本来のメリットはなく、ただ単にパート・アルバイト形態でドライバーとして働くような仕組みとなっている。


制限が多く、働く側にとってはお世辞にも便利と言えない日本版ライドシェアだが、ドライバーが配送業務も担えるようになれば状況は変わってくる。どれだけ自由度を確保できるかが重要だが、ライドシェア対象の時間・曜日以外で配送業務を担うことができれば、副業としての魅力は大きく向上する。場合によっては本業にもなり得る。

運送事業に必要な運行管理者資格などの問題もあり、日本版ライドシェアにおけるタクシー同様、貨物運送事業者などと雇用契約などを結ぶ必要がありそうだが、配送需要は曜日や時間帯に限らず一定数あるため、タクシー運送の穴を埋めるにはもってこいではないだろうか。

現行制度上完全に自由な働き方は無理だが、例えば、あらかじめ貨物運送事業者に「明日何時~何時まで稼働可能」と伝え、それに見合った配送量を引き受ける。その業務後、既定の時間にライドシェア事業を行う。「貨」と「客」を切り分けつつも、同一車両で両方の業務を行うパターンだ。

もちろん、ライドシェア稼働時間内の空き時間を活用可能であれば、時間指定がなくポストインすればOKな配送を引き受け、貨客混載として両方の業務を同時にこなすことも可能だろう。

需要の観点などを踏まえると、日本版ライドシェアの仕組みはむしろラストマイル配送の方が向いているのかもしれない。

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■日本における貨客混載

規制緩和が進む貨客混載

日本では、もともと旅客自動車運送事業と貨物自動車運送事業は明確に区別され、それぞれの運送に特化した事業展開しか許されていなかった。

しかし、ラストマイル配送の需要増やドライバー不足などを背景に規制緩和が進み、2017年から両事業の許可をそれぞれ取得した場合など一定条件を満たせば「かけもち」を行うことができるようになった。2023年にはさらに規制緩和され、過疎地域などの限定条件が廃された。

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

国土交通省は、2024年3月末時点における貨客混載の実施事例として、タクシー事業者による事例14件、乗合バスによる事例3件、貸切バスによる事例1件を挙げている。

2024年3月には、ラストマイル輸送等への輸送対策としての自家用有償運送の許可に係る取扱いについて新たな通達が行われた。

消費者ニーズの多様化や電子商取引の増加などを背景に、ラストマイル輸送の需要に対応するには事業用自動車のみでは輸送力の確保が困難とし、道路運送法第78条第3号の規定に基づく自家用自動車の有償運送の許可を弾力的に認める方針としたのだ。2025年1月から適用されている。

道路運送法第78条第3号は、日本版ライドシェアが根拠とする法律だ。利用者ニーズに対応した輸送力の確保という公共の福祉の見地から、運送需要者である貨物自動車運送事業者の営業所に配置されている事業用自動車と同数までの自家用自動車について、各年一両当たりの年間利用日数90日を上限に自家用自動車による有償運送を許可するといった内容だ。

こうした制度を有効活用し、貨物配送と旅客運送の両方を兼任できれば、副業としての魅力も向上するものと思われる。

日本版ライドシェアの関係でいえば、同事業に参画しているタクシー事業者が貨物自動車運送事業を取得し、日本郵便やヤマト運輸などから業務委託すれば、パートドライバーを活用した貨物配送業務を行えるのではないだろうか。

■貨客混載関連の取り組み

上士幌町では日本郵便のドライバーが旅客運送を実施

北海道上士幌町では、日本郵便との連携のもと、郵便局のドライバーと車両を活用した貨客混載実証が2024年10月から2カ月間にわたり実施された。

郵便ポストの取集作業や集配業務などの通常業務で稼働している車両・人員を活用し、普段の業務と並行して住民の輸送を行う取り組みだ。

利用者は、高齢者等福祉バスで使用している町貸与のタブレットから利用予約を行う。予約された送迎時間と近隣の取集作業や荷物配送などの業務がマッチすれば、送迎を行う仕組みで、必ずしも予約に応るわけではないようだ。

出典:上士幌町プレスリリース

十勝バスは移動販売や貨客混載などさまざまな事業を展開

北海道帯広市を拠点とする十勝バスは2023年度、帯広~広尾間で毎日荷物輸送を行っている佐川急便の荷物を貨客混載バスで輸送する取り組みを実施した。積載量と輸送人員の実態から、長距離路線の広尾線が最適とし、貨客混載事業の運用性や、路線バス車両後部を物流輸送に適した改造をする際の機能性などを確認した。

運用性の検証として、荷物の運送費や荷物の載せ替え、運転手の引継ぎなど、物流事業者と貨客混載の最適化したオペレーションを検討したという。

なお、十勝バスは路線バスやオンデマンドバスの待合所「大空ローカルハブ」を整備し、同所で市場商品の販売を行っている。その場にない商品は、注文を受けた後に路線バスを活用して輸送する――といった取り組みや、バスの一部を移動販売店舗とし、始発出発前や終点到着後に店舗として運用する取り組みなども実施している。

東武バスは日光で貨客混載を通年実施

東武バスはヤマト運輸と連携し、2025年2月から栃木県東武日光駅と中禅寺温泉バスターミナルを結ぶ路線バスで宅急便を輸送する取り組みを開始した。

ヤマト運輸は、同社営業所が位置する日光市街と中禅寺湖周辺等の奥日光エリアを1日に複数回往復していることから、配送経路とバス路線が重複する東武日光駅から中禅寺温泉バスターミナル間において、路線バス網と路線バスの貨物スペースを有効活用し、貨客混載を通年で実施していくという。

出典:東武バス・プレスリリース

神戸でもバスや鉄道が商品や農産物配送を実施

兵庫県神戸市では、神戸電鉄が2025年1月から農産物の配送実証を行っている。直売所で販売されている新鮮な農産物などを北区の岡場駅から新開地駅まで配送し、神鉄食彩館で販売するという。

バス関連では、2023年度から既存のバス路線を活用し、住民が事前予約した商品を地域福祉センターへ納品する実証などを行っている。

■【まとめ】一般ドライバーによる貨客混載事業に商機?

日本版ライドシェア同様、貨物運送分野でもエリア単位で配送能力不足を可視化し、タクシー事業者らを相手に委託しやすい制度設計を行えば、ラストマイルなどのドライバー不足解消とともにタクシー事業者の収益向上につながる。そして、業界をまたいだドライバー不足を一般ドライバーが補う――という形だ。

貨物事業者が直接パートドライバーを雇うのも手だが、自由度が低く実質的に本業のような形となってしまいがちだ。

自家用車の一般ドライバーの自由度をどのように確保しつつ安定した事業設計を行うかが問われそうだ。




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