オーストラリアのスタートアップであるApplied Electric Vehicles(Applied EV=アプライドEV)は、日本のスズキの四輪駆動車「ジムニー」のプラットフォームをベースにした自動運転物流向けシャーシを発表した。
この新型「Blanc Robot(ブランクロボット)」には運転手などが乗る車室部分、いわゆる「キャビン」が無い。用途に応じてカスタマイズ可能な「テーブルトップ型」シャーシとなっており、自動運転の電動台車と言い換えることもできる。
Applied EVとスズキは、自動運転可能な電動台車の開発に関する覚書を2023年3月に締結し共同開発を行ってきた。
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■完全自動運転型の運用を視野に開発
Applied EVとスズキが共同開発したBlanc Robotは、完全自動運転型の運用を目的に設計されており、ラストマイル物流における世界的なドライバー不足の解決に貢献することを目指している。また、これまで人間のドライバーが担っていた退屈であったり汚かったり、困難・危険であったりとされる作業を行う産業用途においても、活躍が期待されているという。
ジムニーのプラットフォームを基に設計されており、シャーシ上には複数のオプションを搭載可能な汎用性の高いモビリティとなっている。人間が運転する車両の最大3倍の稼働が実現でき、大幅なコスト削減と電動パワートレインによるCO2排出量の削減も期待されている。
Blanc Robotの本体はスズキが製造し、Applied EVのソフトウェアで動作するという仕組みになっている。「Applied EV Drive API(自動運転およびAI運転ソフトウェア)」「Applied EV App Space API(運転以外の車両機能)」「Applied EV Cloud API(サードパーティアプリケーション向けの安全なデータと診断機能)」の3つのApplied EV専用インターフェースを主としたソフトウェアにより制御されているという。
■Applied EVとスズキ、協業の経緯
2015年設立のApplied EVは、モビリティ分野のソフトウェアの開発・提供を手掛ける企業だ。自動運転向けの電動化やソフトウェアなどの技術に強みを持つことで知られている。
同社とスズキは2021年9月に基本合意書を締結、将来の協業可能性について検討を行ってきた。2022年9月にはスズキが、次世代モビリティ用ソフトウェア開発の強化に向けApplied EVに出資したことを発表している。
そして2023年3月に、自動運転可能な電動台車の開発に関する覚書を締結した。ジムニーのラダーフレームをベースに、Applied EVの自動運転車両プラットフォームであるBlanc Robotを、統合制御システム「Digital Backbone(デジタルバックボーン)」で制御する電動台車の開発を行うという内容であった。また、電動台車の生産および普及に向けたビジネスモデルの開発や、ブランド力の向上に取り組むことも発表している。
この共同開発の合意に先立ち、スズキのコーポレートベンチャーキャピタルファンド「Suzuki Global Ventures(スズキグローバルベンチャーズ)」を通じてApplied EVに追加出資したという。
■まずは100台生産、今後は数万台規模を視野
Blanc Robotは、まずは100台の組み立てが予定されており、スズキが製造したボディ構造は日本からオーストラリアに輸送されているという。需要に応じて数万台規模へと製造を拡大していくようだ。
オーストラリアと日本の企業によるマルチに活用できるBlanc Robotの、今後の展開に期待したい。
【参考】関連記事としては「スズキが「自動運転可能な電動台車」!豪Applied EVと開発へ」も参照。