完全自動運転車両の開発を行う国内スタートアップのTuring株式会社(本社:千葉県柏市/代表取締役:山本一成)=チューリング=は2023年3月22日までに、2030年に1万台の販売を目指す完全自動運転EVをイメージしたコンセプトカーの映像を公開した。
■画像生成AIをフル活用してデザイン
このコンセプトカーのデザインは、カーデザイン領域で長年の経験を持つ日南と共同で制作した。画像生成AI(人工知能)「Stable Diffusion」をフル活用してデザインしたという。
さらに、デジタルモデリングやCGレンダリングを行い、フルカラー3Dプリントでスケールモデルや走行アニメーション、AR(拡張現実)データまでを製作しており、これはチューリングによると世界初の事例となるようだ。
このコンセプトカーは以下の映像(2分37秒のYouTube動画)で紹介されている。さまざまなタイプの車両がデザインされており、セダンのようなサイズのほか、ワンボックスカーのようなタイプもあるようだ。どの車両も流線型が特徴に見える。
日南の取締役デザイン・エンジニアリングデビジョン統括本部長である猿渡義市氏は「実質1カ月半という短期間で豊富な成果物(3DCADデータ、CGレンダリング、走行アニメーション、フルカラー3Dプリントスケールモデル、VR/ARコンテンツ)を完成させることは素晴らしい成果」とした上で、「AIデザイン元年に最高水準のプロジェクトをAIネイティブ企業チューリング様と一緒に発表できることを誇りに思います」とコメントしている。
■Turingってどんな企業?
2021年8月設立のTuringは「We Overtake Tesla」をミッションに掲げ、完全自動運転EVの完成車メーカーを目指している。
AI技術により、場所や走行条件を問わずにいつでもどこでも自動運転を実現する自動運転レベル5(完全自動運転)の実現に向けて、大きなスケールと勢いで開発を進めており、2025年に自社オリジナルの自動運転EVを100台、2030年に完全自動運転EVを1万台、製造・販売することを見据えている。
2022年10月に北海道1周長距離走行プロジェクトを実施し、総走行距離1,480キロのうちの約95%を自動運転モードで走破した。またそのすぐ後には、 千葉県内で法人向けに自動運転車両の試乗会をスタートさせている。
同年12月から開始している走行データ取得のフェーズ2においては、2023年末までに国内最大規模となる5万時間分の走行データベースの構築を目指している。シードラウンドで10億円の資金調達を実施済みだが、自社の車両生産体制構築を見据え、2023年中にはシリーズAの資金調達を実施する予定のようだ。
また2023年1月には、AIを駆使してカメラのみで信号機を識別するモデルの開発に着手したことを発表した。
■「2030年1万台」へまた前進
ゼロから完成車メーカーになることを目指す同社が完全自動運転EVのコンセプトカーを公開したことは、2030年に1万台の完全自動運転EVの製造を目指すチューリングにとって、また一歩前進したと言えそうだ。引き続き開発を加速させるであろう同社の動向に注目していきたい。
【参考】関連記事としては「完全自動運転EV、2030年に1万台製造!日本のTURINGが宣言」も参照。