初年度1年間の支出は560万円、収入は430万円で、130万円の赤字——。地方都市でカート型の自動運転バスを運行したときの採算性を検討するため、こんな一例を国土交通省が資料にまとめている。支出の半分以上を占めているのが「人件費」。なぜ自動運転サービスなのにこんなに人件費が掛かるのだろうか。
実は「自動運転バス」と言っても、レベル3(条件付き運転自動化)までは人が必要になってくる。次回の道路交通法改正で解禁される同レベルでは緊急時は人が運転をシステムと交代する必要があり、常に人間が交代に備えていなければならない。
試算された人件費320万円の内訳は、乗務員が160万円、遠隔オペレーターが160万円(両方とも、有償ボランティアに手伝ってもらったときの平均時給を使って算出されている)。つまり、人を全く必要としないレベル4(高度運転自動化)以上にならなければ、人件費は結局掛かってしまうこととなる(正確にいえば、レベル4以上でも待機・監視要員などは何らかの形で必要になりそうだが)。
とはいえ、同じ条件で一般車両を運行したときよりははるかに赤字額は小さい。試算によれば、同じ条件で一般車両を運行したときの1年間の支出は870万円となり、赤字額は440万円まで膨らむ。
自動運転化のレベルが上がれば、より採算がとれやすくなってくる。自動運転サービスを展開しても赤字が出る限りは、国や団体からの支援がなければ運行は難しいが、黒字が出る技術レベルに達すれば、民間企業の参入が一気に進むようになるだろう。
支出や収入などの詳しいデータは国土交通省の「自動運転サービスの採算性の検討事例」から資料をダウンロードして確認してみてほしい。
【参考】自動運転レベル3については「【最新版】自動運転レベル3の定義や導入状況は?日本・世界の現状まとめ」も参照。