米Googleの自動運転部門を担うWaymo(ウェイモ)。2018年12月に自動運転タクシーの商用サービスをローンチし、この分野では群を抜く実績を誇っている。
そんなWaymoはアリゾナ州フェニックス郊外のチャンドラーなどで自動運転車を走行させており、このほど地元警察がWaymoの自動運転車が関連する事案について報告を行った。
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■ブレーキ操作による後続車との接触事故が複数発生
報告書によれば、チャンドラー市街地で2021年5月7日、Waymoの車両が対向車との衝突を防ごうと急ブレーキをかけ、後続車との衝突事故が起きた。後続車の運転手は、Waymoの車両が何も警告を発せず減速したことが事故の原因であると訴えたという。
こうした事故は2020年にも2回も発生している。幸いどちらも事故でも負傷者はおらず、大きな損害はなかった。これらの事故に対してWaymo側は「事故の原因や問題について徹底的に調査や再評価を行い、あらゆる潜在的問題をきっちりと解決していく」としている。
■自動運転車に不満を持つ住民、卵を投げつけられることも
また報告書によれば、Waymoの自動運転車に不満を持つ人が一定数いることも分かっているという。
2020年2月には、移動中のWaymo車に対してアイスクリームのコーンを投げつけたり、卵を投げつけたりする事件があった。このような行為はこれまでにもたびたび起きており、住民が自動運転車に石を投げたり、凶器を向けたりすることもあったようだ。
また2020年10月には、2人のサイクリストがWaymoの自動運転車を駐車場から出られないようにする出来事があった。12月には、歩行者がWaymoの自動運転車両を殴りつけ、サイドミラーの外す事件も起きた。
■なぜ住民たちはWaymoの自動運転車に不満を持つのか
なぜ住民たちはこのような行為をするのだろうか。報告書によれば、あるサイクリストは自動運転車に轢かれることに恐怖心を持っているようだ。またある住民は、Waymoの自動運転車が家族をストーカーしているように感じたという。
また、Waymoの自動運転車がひき逃げ事件を起こしたと感じている住民も少なくないようだ。Waymoの自動運転車が別な車両と衝突したあと、止まることなく運転が続けられていたことが報告されているという。
■【まとめ】社会受容性を高める取り組みの重要性
チャンドラーは、世界で初めて自動運転車を商業的に受け入れることになったエリアの1つだ。そのためチャンドラーで起きたことは、自動運転開発を手掛ける多くの自動車メーカーやベンチャー企業にとって、今からよく知っておくべきことと言えるだろう。
洗練された自動運転技術が導入されれば、手動運転よりもはるかに事故率は低くなることが予想される。そう考えれば住民も自動運転技術を歓迎した方が良い気もするが、人間は「感情」を持つ生き物だ。これまでになかった異質なものに対し、不安を覚えるのも無理はない。
だからこそ、国・自治体や民間企業などによる、自動運転の社会受容性を高める取り組みは非常に重要となる。チャンドラーの地元警察の報告書は、改めてこうしたことを考えさせる。
▼Waymo公式サイト
https://waymo.com/
▼Waymo公式ブログ
https://blog.waymo.com/
【参考】関連記事としては「自動運転などCASE実現へ、国が重視すべき新ワード「LIST」とは?法律、インフラ、社会受容性、技術振興」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)