民間認証機関で非営利団体の米ULは、自動運転車(自律走行車)を評価するための安全規格「UL 4600」の発行を発表した。同社はUL 4600を「自律走行車およびその他の応用製品に対応した初めての規格」と報道発表の中で述べている。
この記事ではUL 4600のリリース概要を解説していく。
■自律走行車を評価するためのUL 4600の特徴は?
UL 4600では自律走行する車両を評価するために、安全に関する原則とプロセスを含んでいる。
このUL 4600は、自律走行車の安全に関する専門家として知られるPhilip Koopman博士(Edge Case Research)とともに策定が進められた。Koopman博士はこの分野で20年以上の経験を持ち、国際的にも広く認められた専門家だ。
UL 4600では、自律走行システム構築に関して特定の技術を使用することを義務化せず、自由な設計プロセスを許容している。安全性に対し「合格」や「不合格」といった基準や実走行試験や倫理的な側面でも要件を定めておらず、柔軟性を有している。
一方でKoopman博士は報道発表で「UL 4600は、これまでに学んできた、安全な状態とは具体的にどのようなことなのかを教えてくれる一連の要件と安全に関する教訓で構成されています」と説明している。
■「規格策定パネル」にはさまざまな国のステークホルダー
このUL 4600に関しては、策定のための「STP(規格策定パネル)」が設置され、アメリカやドイツ、イギリス、スウェーデン、中国、シンガポールなどの国から、さまざまなステークホルダー(利害関係者)が参加したという。例えば、自動車メーカーや政府機関、保険会社、大学、消費者保護団体などだ。
こうした参加者は、コンテンツの提案や知識の共有、提案内容についての議論・採決に携わり、UL 4600の第1版が発行されるに至ったという。
ちなみにUL 4600は、自動運転車の開発に関わる企業間の連携などを推進すべく、変更の提案などを共同システム(CSDS.UL.com)経由でいつでも誰でも行うことができるようになっている。
■【まとめ】自動運転領域に力を入れているUL
ULは自動運転領域に力を入れている印象だ。
2019年4月には企業のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応を支援するため、車載器に特化した「信頼性試験ラボ」の稼働を日本国内で開始した。
同年8月には、自動運転車の安全性などに関するアドバイザリー事業を展開する米kVAの買収を発表している。また12月には、千葉県香取市にある鹿島EMC試験所に新設された「次世代モビリティ棟」を本格稼働させることも発表している。
ちなみに今回発表されたUL 4600は、デジタル形式と印刷形式で「https://www.shopulstandards.com/ProductDetail.aspx?UniqueKey=36912」からともに購入可能だ。ULのDigital Viewにユーザー登録をすればオンライン上での無料閲覧も可能だという。
【参考】関連記事としては「【対談】「自動運転×法律」、日本は進んでる?遅れてる? 佐藤典仁弁護士と自動運転ラボが最前線について語る」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)