自動運転においては、車両とインフラとの円滑な通信が必要となる。特に信号機に関しては、信号情報を正しく車両が受け取ることにより、適切に加減速を行うことが可能になり、自動運転車の安全な走行につながる。
現在、信号情報を車両に対して提供するには無線装置を信号機に接続する必要があり、この実験を行うには警察庁への届け出が必要となっている。この記事では届け出に必要なことと、実際にこの制度を利用して実証実験を行った事例について紹介していこう。
■申請の際には実験計画書の提出などが必要
警察庁は複数の民間事業者からの要請を受け、2018年3月に「信号制御機に接続する無線装置の開発のための実験に関する申請要領」を策定し、このような実験を行いたい事業者向けに申請方法などを説明している。
▼信号制御機に接続する無線装置の開発のための実験に関する申請要領
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/signal_apply2018.html
申請が可能なのは、「車両に信号情報を提供することを目的として、信号制御機に接続する無線装置の技術開発を実施している法人」としており、実験の期間は原則1年間となっている。
また、実施に当たっては警察庁交通局交通規制課「信号情報提供のための技術開発に係る実験」担当宛に、以下の書類を提出する必要がある。
- 実験申請書
- 実験に用いる無線装置及び車載機の仕様書など
- 実験の実施計画書
- 実験施設等において、公道上で実施しようとする実験を想定し、信号制御機に無線装置を設置し、車両に信号情報を提供した試験の結果
実証実験に関する費用は申請者の負担ということもあり、基本的にはふるい落とす形の申請ではなく、技術的な要件や実験に関する規則に沿っていれば承認される形のようだ。
実験場所が複数事業者で重複した場合は調整が行われるが、その場合も別の場所で実施できないか支援する、とある。
■Mobility Technologiesが制度を活用して実証実験
交通サービス大手のMobility Technologies(旧JapanTaxi)は上記の制度を活用し、愛知県春日井市における実証実験(2021年2月15日〜3月12日)において、信号機から自動運転車両への信号情報の配信を担当している。
この実証実験は、春日井市と名古屋大学が共同で行うラストマイル自動運転車両による実証実験で、春日井市の高蔵寺ニュータウン内を時速20キロ以下で自動走行する「ゆっくりカート」と「ゆっくりミニバス」にて検証が行われるものだ。
このような実証実験は、警察庁への申請ができるようになった2018年から繰り返し行われており、その中心となっているのがMobility Technologiesだ。
信号情報配信の実証実験は、2018年4月に神奈川県藤沢市、2019年3月に愛知県常滑市、2020年2月に愛知県春日井市、2020年12月に静岡県下田市で行われており、春日井市では1年ぶり2回目の実証実験となる。
■【まとめ】実証実験の際にガイドラインや申請制度は理解必須
自動運転の実証実験に関しては、さまざまなルールやガイドラインの遵守のほか、今回のような申請制度の活用などが必要となる。
自動運転ラボでは「自動運転と法律・ガイドライン、日本の現状まとめ」の記事でこうしたガイドラインや制度について解説しているので、実証実験の実施にあたってこうした情報が必要な人は、事前に目を通してみてほしい。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)