コネクテッドカー向けのオープンプラットフォームを開発する「Automotive Grade Linux」(AGL)は2020年4月26日までに、AGLプラットフォームの最新版であるUCB 9.0(コードネーム:Itchy Icefish)を発表した。
AGLのメンバー企業が共同開発しているUCBは、インフォテインメントやテレマティクスの車載ソフトウェア・プラットフォームで、オープンソースであることも特徴だ。今回発表されたUCB 9.0の新機能を紹介しよう。
■UCB 9.0の新機能・アップデート内容は?
最新版のUCB 9.0はオーディオの機能強化や、コネクティビティの改善・拡張といった内容をアップデートしている。以下羅列になり恐縮だが、各新機能やアップデートに関する内容を紹介する。
ちなみにそのさらに詳しい内容は「https://wiki.automotivelinux.org/agl-distro/release-notes#itchy_icefish」からも確認できる。このページは英語表記になるが、詳しく知りたい人はアクセスしてみてほしい。
OTA(Over-the-Air)
〜「ostree(SOTA) 」のアップデート
アプリケーションフレームワーク
〜全体の改善とToken Logicベースのセキュリティを実装。
音声認識
〜「Alexa Auto SDK 2.0」を追加。「Speech-API」とボイスエージェントの統合を改善。音声認識用ディスプレイカードの新しいオープンソース版を追加。
オーディオ
〜「PipeWire」と「WirePlumber」を機能強化。
コネクティビティ
〜ネットワークサポートとネットワーク設定の改善。「bluetooth API」の再構築。pbapとmapプロトコルへの拡張。
HTML5アプリ
セキュリティをToken Logic使用に変換。「Web App Manager」と「Chromium」で利用できるHTML5専用イメージを追加。ホーム画面/ランチャー/ダッシュボード/設定/メディアプレーヤー/ミキサー/HVAC/Chromiumブラウザで利用可能なHTMLデモアプリを追加。
インストルメントクラスタ
〜QMLリファレンスアプリ:LINからIVIアプリへのステアリングホイールコントロール、ステアリングホイール/IVIからのCANメッセージを含むアプリを刷新。
ボードサポートパッケージ更新
〜「ルネサス RCar3 BSP」をv3.21に更新(M3/H3、E3、Salvator)。「SanCloud BeagleBone Enhanced + Automotive Cape」のサポートを強化。etnaviv(cubox-i target)を使用したi.MX6を追加。「Raspberry Pi 4」のサポートを強化。
■UCBを既に導入・実装している企業は?
先ほど紹介したように、UCBはコネクテッド分野のサービス開発促進のために構築されているオープンソースのプラットフォームだ。既にAGLのメンバー企業がUCBを導入・実装しているケースも少なくない。
例えば、メルセデス・ベンツは2018年6月、商用車向けの新しい車載オペレーティングシステムの基盤としてAGLを使用していることを発表している。日本のトヨタは、2018年モデルのカムリからAGLベースのインフォテインメントシステムを使用しており、現在ではほとんどのトヨタ車とレクサス車に搭載しているという。
自動車に乗る側の人は、車載インフォテインメントシステムにどのようなプラットフォームが利用されているかあまり意識しないと思うが、業界ではこうしたオープンソースのプラットフォームの開発が着々と進んでいるのだ。
■【まとめ】業界関係者はUCBの今後に注目を
AGLは2012年にトヨタらが中心となって設立された国際組織で、2020年4月現在では150社を超える企業が参加するまでに至っている。そのAGLのUCBの最新版だけに、業界関係者は新たな機能やアップデート内容については一定程度の知識を持っておきたいところだ。
コネクテッドカーの数は一層増えていくことは確実であり、よりAGLの動きへの注目度は今後より高まっていく。
【参考】関連記事としては「コネクテッドカー・つながるクルマとは? 意味や仕組みや定義は?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)