国土交通省による2026年度の自動運転社会実装推進事業の公募が発表された。補助率80%の好条件で新年度も自動運転サービスの実装を促進する構えだ。
一方で、なかなか実用化に結びつかない取り組みにしびれを切らしたか、新年度内にレベル4を実装することを条件に付し、未達成の場合は補助金の一部返還を求めることとしている。
2025年度に財務省調査で厳しい指摘を受けたこともあり、中途半端な取り組みは極力除外していく方針だ。活を入れられる格好となった各地の取り組みは、着実な前進を見せることができるのか。新年度の募集要件の中身に触れていこう。
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■2026年度自動運転社会実装推進事業の概要
重点支援/一般支援/省人化支援の3区分で補助
自動運転社会実装推進事業は、地域に根ざした自動運転の通年運行など、レベル4移動サービスの実現を前提とした技術の磨き上げや事業性の検討などを通じて、自動運転を活用した地域づくりを推進する取り組みを支援する補助事業だ。
▼令和8年度 自動運転社会実装推進事業
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001991638.pdf
持続可能な移動サービスを構築し、継続的にサービスを提供していくことを目的としており、単年度の実証にとどまらず将来的な持続可能性を見据えることが重視されている。
対象は、地方公共団体による自動運転レベル4移動サービスの実装を行う事業で、2026年度は以下の3区分で実施する。
①重点支援事業 :地域公共交通の先駆的・優良事例として横展開できる事業
②一般支援事業 :重点支援事業を除く、早期にレベル4実装※1が見込まれる事業
③省人化支援事業:レベル4実装済みで、省人化に資する技術的課題解決に取り組む事業
①②はレベル4実装前の期間が対象で、③はレベル4実装後の期間が対象となる。事業実施期間内にレベル4実装が見込まれる場合に限り、①と②は③の省人化支援事業と組み合わせて応募することができる。ただし2026年度に③に採択された場合、翌年度以降の同事業に応募できない。
①②の補助率は80%
補助率・上限額は、①重点支援事業が4/5で上限4.0億円、②一般支援事業が4/5で上限2.0億円、③省人化支援事業が2/5で上限0.2億円となっている。
①②は、自動運転車の購入やリース、改造に要する経費、車両整備などの運行経費、運転者や保安要員などサービスに携わる人の人件費、その他自動運転を活用した地域交通サービスの社会実装に真に要する経費が補助対象経費となるが、購入困難な車両のリース費や車両の展示会、シンポジウムなどのイベント開催経費など、レベル4実装や通年運行に直接的な関連が少ないものや、レベル4実装済みのルートにおける経費は対象外となる。
レベル4未達成の場合一部補助金を返還?
①②については、補助金交付決定時に設定したレベル4実装の目標に達しなかった場合、2024年度以前から採択されている事業については2/5、2025年度からの継続と新規採択事業については1/5の返還率に基づき、補助金の返還を求める場合があるとしている。確定検査時及び補助事業終了までに当該年度の取り組み状況を確認し、返還の要否を判断するという。
また、レベル4実装の目標として「2027年度までにレベル4実装(全区間)を実現する計画」を公表している場合において、2027年度に自動運転社会実装推進事業が実施され、2026年度から継続して採択・交付決定を受け、その上で2027年度までにレベル4実装が未達成となった際は、2027年度で交付した補助金に対して2/5以上の返還率で補助金返還を求める可能性があるとしている。つまり、次年度以降は返還率2/5がスタンダードとなるイメージだ。
上限額引き上げの一方、要件を厳格化
前年度(2025年度)と比べると、重点支援、一般支援の上限額はそれぞれ1億円ずつ上がっており、補助事業としての支援は拡充された一方、新年度は年度中にレベル4実装を見込めない中途半端な取り組みは対象外とし、さらには結果として実用化に辿り着けなかった事業も一部補助金の返還を求める――と要件を厳格化した格好だ。
背景には、自動運転サービスの社会実装を本気で考えているのか?――と疑いたくなるような実証が過去に行われていたことが指摘されたためと思われる。
地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)は2022年度に始まり、2022年度は全9事業、2023年度は全62事業、2024年度は全99事業、2025年度は全67事業(重点支援13事業、一般支援54事業)が採択されている。
「2025年度を目途に50カ所程度、2027年度に100カ所以上で自動運転移動サービスを実現する」という政府目標の達成に向けた施策の一つで、補助金事業として地方自治体の自動運転社会実装に関する取り組みを支援してきた。
しかし、結果として2025年度までにレベル4サービスを実装できた地域はわずか9カ所に留まる。目標にはるか及ばない数字だ。
財務省調査で潮目が変わった?
技術的、あるいは予算的に致し方ない面があったのも事実だろうが、財務省によるメスが入ったことで潮目が変わった。
財務省の令和7年度予算執行調査の対象に自動運転社会実装推進事業が選定され、自動運転バスなどの運行が社会実装に向けた取り組みとなっているか、短距離での実証を続けている事例がないかなど調査が行われた。
その結果、1便当たりの自動運転走行の実証実験距離がわずか200メートルという短距離に留まっている取り組みなどが見つかった。
▼令和8年度予算の編成等に関する建議
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20251202/05.pdf
既存有人路線への自動運転サービスの置き換え意向に関しても、「現段階では未定」が87ルートと最多で、「有人路線を置き換える」27ルート、「置き換えない」7ルート、「自動運転の実装予定なし」10ルート――という結果となった。
つまり、レベル4移動サービスの実装を見据えた取り組みとは到底言えないものが含まれていることが指摘されたのだ。
財務省は、社会実装に向け低調な取り組みや、取り組みに深化が見られないような事業への対応として、実績評価の仕組みを導入すべきと改善点を示している。
自治体などは、あらかじめレベル4実装に至るまでのマイルストーンを設定した計画を策定し、国においても達成状況を評価した上で結果を公表すべきとしている。
また、持続可能性を踏まえた計画策定が補助金採択の要件となっていることを踏まえ、有人路線の置き換え、あるいは新たなルート設定など、社会実装に向けた実証ルートとなっているかどうかも含め、採択時の要件にすべきと指摘している。
【参考】関連記事「自動運転実証、補助金受け「走行たった200m」 財務省が指摘」も参照。
財政制度等審議会でも補助返金返還求める意見
さらには、国の予算編成などを審議する財政制度等審議会においても、令和8年度予算の編成等に関する建議の中で「自動運転バスにおいては実証が実装に結びついていない事例が数多く見られる。バスやトラックの自動運転実装事業については、実装を本気で考える自治体・事業者を支援すべく、補助要件の中で一部返金を求めるといった対応を行うべきではないか」とする意見が付された。
こうした財務省の指摘を受け、2026年度は「年度内レベル4実装」「未達成の場合は補助金の一部返還」という要件が明確に盛り込まれたものと思われる。
【参考】関連記事「自動運転バスの補助金、「実装なし」なら返金命令か」も参照。
2025年度までにレベル4サービス実装は9カ所
2025年12月時点で、道路運送車両法に基づくレベル4認可を受けているのは、福井県永平寺町、東京都大田区(羽田)、GLP ALFALINK相模原、北海道上士幌町、三重県多気町VISON、長野県塩尻市、茨城県日立市、愛媛県松山市、大阪府大阪市(万博)、石川県小松市、千葉県柏市の11カ所に留まる。
このうち、GLP ALFALINK相模原と小松市以外の9カ所は特定自動運行許可を取得し、レベル4サービスを提供できる環境を整えている。
なお、国内初のレベル4実装を達成した永平寺町の取り組みは、開発企業の一部撤退に伴い2026年度から運行を中止している。
一方、関東運輸局が2026年3月、茨城県常陸太田市で運行中のマクニカの「EVO」をレベル4認可したと発表するなど、新たな動きも出ている。
【参考】関連記事「自動運転、日本初だった路線が「当面停止」 永平寺町のレベル4」も参照。
■【まとめ】レベル4サービスはどこまで拡大するか
新年度の自動運転社会実装推進事業要件を鵜呑みにすれば、新年度に補助を受けた事業は大前提として「レベル4実装」を年度内に行うこととなる。それ以外の実証は、おそらく別の補助を模索することになるのだろう。
一部の実証は、尻に火が付いたかのごとく取り組みを加速させるかもしれない。2026年度にレベル4サービスがどこまで拡大するか、要注目だ。
【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転、日本政府の実現目標・ロードマップ一覧|実用化の現状解説」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)