国は自動運転車に対して道路交通法の一部を免除することを決め、関連ルールの整備を進めている。具体的には、道交法における「交通事故に係る負傷者の救護義務」などは自動運転車には適用しないというものだ。
国土交通省物流・自動車局が2025年9月に公表した「自動運転車の安全確保に関するガイドライン」により判明した。日本でも自動運転車の実用化が進む現在、早期の自動運転車に関する交通ルール整備が望まれる。
新たに就任した高市早苗首相は自動運転に関しては、これまでの政権と異なるような特別な方針を特段打ち出しておらず、新政権でもこの方針が基本的に継続するものとみられる。
【参考】関連記事としては「自動運転関連の法律・ルール解説(日本・海外)」も参照。
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■交通事故での負傷者の救護義務はない?
国交省が定めた自動運転車の安全確保に関するガイドラインは2024年6月に策定され、2025年9月30日に改訂された。
▼自動運転車の安全確保に関するガイドライン
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001912973.pdf
このガイドラインは、一定の条件下において運転者の存在を必要としないレベル4での自動運転を行う自動運転車について、システムの責任範囲及び判断のあり方の両面から、社会に受け入れられる自動運転車の安全水準を明確化することを目的として策定されたものだ。対象となる自動運転車は、有能で注意深い人間ドライバーと少なくとも同等に安全であることが合意されている。
自動運転車の安全性確保について、基本的な考え方は以下の4つとなっている。自動運転に係る国際基準及び国際的なガイドラインにおいて、自動運転車は道路交通規則を確実に遵守することが要求されていることを踏まえたものになる。
- 1)自動運転車は、道路交通法を遵守する
- 2)自動運転車は、他の交通参加者が道路交通法を遵守する限り、事故を発生させない
- 3)自動運転車は、他の交通参加者が道路交通法を遵守しない場合であっても、できる限り事故を発生させない
- 4)自動運転車は、他の交通参加者が道路交通法を遵守せず、事故が不可避な場合であっても、できる限り被害の軽減に努める
1)については、今後の国際議論等を踏まえ関係省庁と連携した議論が必要だとしている。現在は道路交通法に基づく運転操作に係る義務のうち、定型的・一般的なものについては、自動運行装置が代替して担うことが想定されており、道路交通法上の全ての義務を自動運行装置が代替して担うことが想定されているものではない。
この「定型的・一般的なもの」とは、信号機の信号に従う義務(道路交通法第7条)や最高速度に係る義務(同法第22条)などを指すようだ。これに対して、同法72条第1項に基づく交通事故に係る負傷者の救護義務等、現場での個別具体的な対応が要求されるものについては、これに含まれない。レベル4の自動運転については、この考え方を原則としつつ、自動運転車の基本的な安全性確保の考え方を整理することが重要であるとしている。
■三位一体の総合的な安全対策の確保
今回発表された改訂案ではガイドラインの策定に係る基本的な方針として、上記「基本的な安全性の確保」のほか「三位一体の総合的な安全対策の確保」と「国際的な動向との整合性確保」にも言及している。
三位一体とは、自動運行装置の機能とともに、走行環境の設備から提供される情報の活用のほか、道路施設等の整備や周囲の交通参加者の理解を促進させる取り組み等を合わせることを指している。また自動運転車は世界各国で開発が進められているため、国際的な動向との整合性確保に留意して整理を行っていく。
さらに自動運転車の性能及び機能について、「走行環境条件」のほか、危険事象の認知や危機回避のための制御といった「自動運行装置の性能及び機能」などについても言及されている。
■自動運転車が可能な運転タスクを明確化
自動運転車が自動運転を行うにあたっては、下記を明確化することが定められている。
- 自動運転車が実行可能な動的運転タスクの機能
- 緊急自動車や警察官による指示など、自動運行装置において判断が困難となる状況への対応方法
- リスク最小化制御作動時は、「自動運行装置の作動中、他の交通の安全を妨げるおそれがないものであり、かつ、乗車人員の安全を確保できるものであること。」との規定が適用されないことを踏まえ、リスク最小化制御は危険回避のために緊急避難的に動作するものであること
- その他の自動運行装置の安全性の評価に必要となる自動運転車のシステム構成、インターフェース(DSSAD等)の機能
- 自動運転車の故障及び緊急時の体制
動的運転タスクについては、操舵による横方向の車両制御や加減速による縦方向の車両制御、危険の認知・判断とそれらを対応するための運転環境の監視、危険に対する対応の実施、上手い運転のための計画、ライト・合図・ジェスチャー等によって他者への視認性を上げることという6つのサブタスクにより構成されている。
■自動運転車が人間を超えるのは近い?
今回発表された自動運転のガイドラインは、あくまでレベル4の自動運転車が人間の運転と同等の正確性や安全性を持つことが前提となっている。本来、自動運転車は人間のようなケアレスミスをしないため、手動運転よりも安全性が高いものであるはずだ。
しかし現状は開発途中の段階であることがほとんどであるため、予想外の動きをする自動運転車も多い。首都圏では自動運転タクシー(ロボタクシー)の走行テストが行われているが、市民に受けいれられるためには安心・安全を担保できる自動運転技術の確立が必要だと言える。
【参考】関連記事としては「【重要】自動運転関連の委員会・検討会まとめ(国・省庁)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)