メルカリ、自動運転に新規参入か?元トヨタAI幹部が参画

ロボティクス分野に精通

B!

フリマアプリでおなじみのメルカリが、自動運転分野に新規参入か?――と思わせるような人事が発表された。Woven CityでAI開発の責任者を務めていた小堀訓成氏が、メルカリの研究開発組織「R4D」の新所長に就任したのだ。

R4Dはこれまで、インフレータブル構造のモビリティ「Poimo」を開発した経緯もある。チャレンジ精神旺盛なメルカリが、自動運転技術を駆使した人やモノの新輸送サービスに着手してもおかしくはないだろう。

小堀氏の実績とともに、メルカリのモビリティ事業進出の可能性に触れていく。

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■小堀訓成氏の実績

ロボティクスや自動運転などに精通

R4D新所長に就任したのは、小堀訓成氏だ。同氏は早稲田大学大学院を修了後、ソニー、トヨタ自動車、Toyota Motor Europe でイメージセンサーやロボティクス、自動運転、海外研究統括などを歴任してきた。

直近では、ウーブン・バイ・トヨタに所属し、Woven CityのAI領域の責任者(Director of AI & Lead of Vision AI Platform, Woven City Management)を務めていた。都市の理解に向けたマルチモーダル基盤モデル(City-LLM)や、国際的なワークショップ(AI City Challenge)などを主導したという。

出典:メルカリプレスリリース

現在、名古屋大学数理・データ科学・人工知能教育研究センター産学連携教育部門の客員教授や、科学技術振興機構の領域アドバイザーを兼務している。

小堀氏はR4D所長就任に際し、「学生時代からロボット、自動運転、都市に関わるAIの開発に携わってきた。直近では都市の未来を考えるようになった。C2Cプラットフォームは、今後の都市や社会そのものが進化していく方向だと考えており、人の移動やモノ・サービスなどのやり取りが、より個人間で促進する世界であり、都市やライフスタイルはより個人の選択や価値観を起点とした『個人の都市』として進化していく」と持論を展開する。

その上で、「メルカリが掲げる『あらゆる価値が循環する社会』というミッションは、これまで考え取り組んできた ”技術を社会実装し、人々の生活や都市を変えていく活動” と強く共鳴する」とし、「メルカリR4Dラボを通じて国内外の研究者や自治体、企業とのネットワークをさらに拡大し、AIなどをはじめとした技術を核に社会実装を加速させていく。メルカリおよびR4Dは今後もメルカリグループのミッション実現に資するイノベーションの創出とその社会実装を目指していく」と意気込みを語っている。

▼メルカリの研究開発組織「R4D」新所長に小堀訓成が就任|mercari R4D Lab
https://r4d.mercari.com/news/250901_head_of_research/

科学技術振興機構でも研究開発チームに所属

科学技術振興機構では現在、実環境に柔軟に対応できる知能システムに関する研究開発チームなどに関わっているようだ。

主にサイバー空間で活用されているAIの技術を物理空間まで拡大するための研究で、計算資源や学習データ量、推論性能などの制約に伴う技術的限界を克服し、常に変化する予測困難な状況にも柔軟に対応できる新たな方法論の確立などいくつものブレークスルーに挑み、ロボットやIoT機器などの機械工学分野をはじめ、制御、数理、脳科学、通信など多岐にわたる分野とAIを融合させ、AIのさらなる高度化と実世界への応用領域の拡大を目指すという。

Woven CityではVision AIプラットフォームを開発

出典:Woven City公式Facebookページ

Woven Cityでは、Vision AIプラットフォームの開発などに携わっていたようだ。映像×AIの可能性を広げる取り組みで、例えば防犯カメラを活用し、プライバシーに配慮しながら人の高精度測位や動線理解、公道認識・異常認識などをAIが行うことで、適切な空間設計や情報提供が可能になるという。

動線理解は、物流やエネルギーの最適化などさまざまな用途で活用できるとしている。実環境での動線理解は、デジタルツインの高精度化にも寄与する。REIDを活用したカメラ間トラッキングやデジタルとリアルを結びつけるカメラの同期、カメラ間キャリブレーション、カメラ視線制御・ONVIF遠隔操作などの技術を開発したという。

City LLMの開発も

日本国内のAI基盤モデル開発力を底上げし、企業などの創意工夫を促すため経済産業省・NEDOが立ち上げた生成AI開発力強化に向けたプロジェクト「GENIAC (Generative AI Accelerator Challenge)」において、計算資源の提供支援を行うAI基盤モデル開発テーマの一つとしてウーブン・バイ・トヨタも採択された。テーマは「都市時空間理解に向けたマルチモーダル基盤モデル(City LLM)の開発」だ。

小堀氏によると、安心・安全なモビリティ社会の実現に向け、一つの取り組みとして歩行者の事故にフォーカスし、路上カメラの映像からAI が自動でその原因を解析し、事故予兆を行うことに挑戦してきた。このAIは、静止画像に限らず、映像や言語を入力したマルチモーダルなLLM で、交通安全をはじめさまざまなアプリケーションが可能という。

これまで、都市データを活用した基盤モデルは存在せず、今回の事業で都市の状況を時間や場所といった側面で理解し、「人の行動/ mobility of people」を促進する世界の創出を目指すとしている。都市の映像データから詳細な交通安全状況を理解できるAI 開発からスタートし、同様の技術を都市のマルチモーダルなデータに対しても適用することで新たな価値の創出を図っていくという。

実世界のドメインに対し、動画像内インスタンスレベルでの時空間情報への理解に注力し、映像+画像+文字を有するデータセット6億を用い、7Bレベルのモデルを開発する。

Woven Cityのリアルな都市環境で機能検証とビジネス検証を行うなどし、社会実装に向けたビジネス展開に加え、開発で得られたソースコードやモデル、開発ノウハウなどの成果物の一部は公開していく計画としている。

Woven Cityでの研究をさらにブラッシュアップ?

イメージセンサーやロボティクス、自動運転に精通しており、都市の理解に向けたマルチモーダル基盤モデル(City-LLM)の研究開発を進めてきた小堀氏は、メルカリでどのようなイノベーション創出に取り組むのか。

どういった経緯・想いでウーブン・バイ・トヨタを離れたかは定かではないが、実証都市Woven Cityで行おうとしていたことを、メルカリを通じて実社会に持ち込むべくさらにブラッシュアップしていくのかもしれない。今後の研究の行方に注目が集まるところだ。

■メルカリR4Dの概要

テクノロジー企業として次々と新規事業に着手

2013年設立のメルカリは、フリマアプリ「メルカリ」を軸に業績を伸ばしてきた。スマートフォン市場の拡大とともに急伸した当時のスタートアップの代表格だ。

ブランド査定つきフリマアプリや即時買取サービス、事業者向けECサービスなどフリマ事業・EC事業の充実を図りつつ、非接触型決済サービス・メルペイや、子会社を通じたシェアサイクルサービス「メルチャリ(現チャリチャリ)」の展開、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスを展開するメルコイン設立、メルペイを通じたクレジットカード事業への参入、物流サービスを手掛けるメルロジなど、積極的に事業を展開している。

ECサービスや金融事業に留まらず、次の展開を見据え次々と行動を起こすテクノロジー企業なのだ。その行動の一つの結果がR4Dだ。メルカリは2017年、社会実装を目的とした研究開発組織「mercari R4D(アールフォーディー)」の設立を発表した。

出典:mercari R4D公式サイト

調査(Research)、開発(Development)、設計(Design)、実装(Deployment)、破壊(Disruption)を語源とし、調査や開発、基礎研究や応用研究を試験・調査することに留まることなく、社会実装をしっかりと意識したうえで外部の企業や教育機関などと共同し、研究成果をいち早くサービス化していくことを目指すとしている。

設立当初の共同研究パートナーと研究テーマは、シャープ研究開発事業本部「8Kを活用した多拠点コミュニケーション」、東京大学 川原研究室「無線給電によるコンセントレス・オフィス」、筑波大学落合研究室「類似画像検索のためのDeep Hashing Network」「出品された商品画像から物体の3D形状を推定」「商品画像から背景を自動特定」、慶應義塾大学村井研究室「ブロックチェーンを用いたトラストフレームワーク」、京都造形芸術大学クロステック研究室「Internet of Thingsエコシステム」、東北大学大関研究室「量子アニーリング技術のアート分野への応用」となっている。

上記領域に限らず、AIやxReality、デザイン、IoTなど、広く研究開発を行っていく ことで、研究成果の社会実装を目指すとしており、量子情報技術、AIによる市場の最適化、循環型社会に向けたサービスデザイン、フリマアプリにおけるコミュニケーション、ブロックチェーン活用、インクルーシブデザイン&アクセシビリティ、取引記録証明システム、価値交換工学、Poimo(ポイモ)――といったプロジェクトが進められている。

インフレータブル構造のモビリティ「Poimo」

Poimoは、空気で膨らむインフレータブル構造のボディが特徴の小型電動モビリティで、安価にボディデザインの変更ができ、人・商品の移動どちらにも活用できる。東京大学川原研究室との共同研究で生まれた。

インフレータブル構造のボディは、金属や樹脂といったこれまでのモビリティのボディ素材より軽く、移動に伴うエネルギー消費を減らし衝突安全性を高めることができるという。

乗り心地を空気の量で変更できるほか、モビリティとして十分な大きさと収納性を兼ね備えており、普段は空気を抜いてボディを小さくたたんでおき、必要な時に膨らませる――というこれまでにない使い方が可能な点が面白い。

軽量な車椅子として使ったり、荷物の搬送に使ったりなど、生活に寄り添ったインクルーシブなモビリティになることを目指しているという。

メルカリが「自動車メーカー」に?電動モビリティ「poimo」に脚光

モビリティ分野に興味津々?

シェアサイクル事業やPoimoの例が示すように、メルカリはモビリティ分野にも挑戦的であることは間違いない。

ここに小堀氏の技術が加わることで、新規事業が大きく動き出す可能性も十分考えられるだろう。真っ先に頭に浮かぶのは、Poimoの自動運転化だ。

インフレータブル構造の利点を生かした持ち運ぶことが可能な自動運転パーソナルモビリティは、想像するだけで非常に面白い。ルールベースではなくE2Eモデルによるフレキシブルな自動運転技術が必要となりそうだが、モビリティの可能性を大きく広げていく存在となる。

物流分野のイノベーションに期待

物流分野への導入にも期待が寄せられる。メルカリは2021年、物流サービスの企画・開発・運営を行う新規事業子会社メルロジの設立を発表している(2023年1月に自社吸収合併)。
同社によると、2021年時点で、日本全体の年間宅配便取扱個数50億個のうち5~10%をメルカリの荷物が占めており、コンビニ発送のうち約80%がメルカリの出品物の発送になるなど、国内物流における同社の取扱量は拡大の一途をたどっているという。

C2Cがベースとなるためメルカリ自体が商品の配送を手掛けることはそうそうないが、メルカリポストを全国約1,000カ所に設置したり、集荷梱包サービスの実証に着手したりとさまざまな観点から集配送との接点事業化に取り組んでいる。

当時、パートナーとの連携によってトラックや倉庫などの自社アセットを持たない形で、タッチポイントを基盤にデータとテクノロジーを活用した新たな集荷物流網を構築していくとしている。

この考えに基づくと、自ら自動運転配送サービスの開発・実用化を行うことはないと思われるが、テクノロジーを駆使し無人配送が可能な自動運転技術であれば、話は変わってくるのではないだろうか。

宅配シェアの10%を自社サービスの配送物が占めているならば、年間5億個、1日あたり130万個が動いている計算となる。大都市部ではメルカリ経由の荷物が毎日数万個規模で配送されているのだ。

ここにアプローチし、メルカリ専用の自社事業として無人配送サービスに着手できれば、他社と差別化したビジネスとして成立させつつ、ロジスティクス分野にテクノロジーを持ち込む第一歩として物流イノベーションへの道が拓ける。

アセットを持たないプラットフォーマー的戦略にこだわるか、事業拡大に向け勝負に出るか。いずれにしろ、小堀氏が有する知見や技術がメルカリグループにどのように生かされていくのか、必見だ。

■【まとめ】新規プロジェクトの立ち上げに期待

多彩な小堀氏は、メルカリにおいてまずどの分野の研究開発に着手するのか。所長として全体を統括していくことになりそうだが、メルカリの既存事業の枠にとらわれない発想で、自動運転関連の新規プロジェクトの立ち上げなど新たな動きに注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ・ベンチャー企業一覧(国別)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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