2025年6月に悲願であった自動運転タクシー(ロボタクシー)の運行をスタートした米EV(電気自動車)大手テスラ。しかし「テスラのロボタクシーはロボタクシーとは呼べない」との意見が出ている。
この発言をしたのは、世界で初めて商用ロボタクシーサービスを開始した米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)の元CEO(最高経営責任者)のジョン・クラフチック氏だ。テスラは現在セーフティドライバー同乗のもとロボタクシーサービスを展開しているが、同氏はこの形態について、ロボタクシーとは言えないと主張している。
また「テスラは革新的なロボタクシーを作ったのではなく、ただのUber(配車サービス)を再現しただけだ」といったコメントもしており、現在のテスラの自動運転技術について懐疑的な見方をしている。
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■Waymoの元CEOの主張
ジョン・クラフチック氏は2015年にGoogleに入社した。2016年から2021年までWaymoでCEOを務め、同社の自動運転開発を研究プロジェクトの段階から商用の自動運転配車サービスへと導いた存在だ。現在は米EVメーカーRivianの取締役となっている。
クラフチック氏はWaymoのCEO退任を控えた2021年にも、テスラについて「実に優秀なADAS(先進運転支援システム)を有する自動車メーカー」だと揶揄しており、自動運転技術についてWaymoとは勝負にならないレベルにあると語ったことがある。
そしてこのたびテスラのロボタクシーサービスがスタートしたが、テスラが本当に自動運転を実現できるかどうかについて、クラフチック氏は依然として懐疑的な姿勢を崩していない。米メディアのインタビューでは「テスラがロボタクシーを本当に始めたら教えてほしい。私はまだ待っているよ」とコメントしている。つまり、現在テスラが運行しているのはロボタクシーだと全く認めていないようだ。
■「セーフティドライバーがいるのは…」
テキサス州オースティンで開始したテスラのロボタクシーサービスは、周囲の予想に反してかなり小規模でのスタートとなった。車両はロボタクシー向けに開発した「Cybercab」ではなく、自動運転システムを搭載した新型「モデルY」で、最初は10台規模のフリートで運用していく。助手席にはセーフティドライバーが同乗する形でサービスを提供する。運行エリアはオースティンの一部のみだ。そして同年7月にはカリフォルニア州のベイエリアでもセーフティドライバー有りでのサービスを開始した。
これについてクラフチック氏は「車内に従業員が乗っているなら、それは明らかにロボタクシーではない」と話しており、セーフティドライバー有りでの運行はテスラが本当のロボタクシーサービスをまだ披露していない証拠だと主張している。
なおオースティンはWaymoが無人運転サービスを展開しているカリフォルニア州のベイエリアなどより規制が緩いことで知られている。それにもかかわらず、テスラは助手席にセーフティドライバーを置いている。
■テスラはコスト面でWaymoより優位
Waymoは2018年12月にアリゾナ州フェニックスで、世界で初めてロボタクシーサービスを商用化した。現在のテスラのサービス水準は、この6年以上前のWaymoと同じようなレベルだと言える。
現状ではWaymoにだいぶ遅れを取っているように見えるテスラだが、コスト面では軍配が上がるようだ。テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、2025年4月に米メディアのインタビューで「テスラのロボタクシーサービスは、特に価格設定、ジオフェンシング(地理的制限)、規制面での柔軟性において、Waymoの提供とどのように比較されると予想しているか」といった質問を受けた。
それに対しマスク氏は、ロボタクシー1台あたりの投資額についてテスラが圧倒的に優位であると回答した。「Waymoの車の問題は、はるかに多くのお金がかかることだ」と答えている。その理由として「Waymoの車は非常に高価で生産台数も少ない。テスラ車は、おそらくWaymo車のコストの20〜25%程度で済み、しかも大量生産されている」と、両社の製造コストを比較して回答している。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転タクシー、製造費は「Googleの20〜25%」」も参照。
■テスラはWaymoより優位に立てる?
テスラのロボタクシーサービスは、現在は招待制のユーザーのみの利用に限られている。しかしマスク氏は最近、2025年9月までに誰でも利用できるようになると語っている。それに対しWaymoは、米国で最も自動運転走行が難しいとされるニューヨークに進出予定だ。
クラフチック氏の主張の通り、テスラは自動運転走行を成し遂げるのは難しいのだろうか。しかし、これまでも数々のサプライズを行ってきたテスラなら、一気にドライバーレス走行を実現するかも?と期待する人も多そうだ。
【参考】関連記事としては「テスラぐずぐず!ロボタクシーでGoogleとの差「ますます拡大」へ」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)