自動運転レベル4の”日本初”運行企業、「たった1期」で赤字解消 ZENコネクト第7期決算

福井県永平寺町で「ZEN drive」を運行

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出典:官報

まちづくり株式会社ZENコネクト(本社:福井県吉田郡永平寺町/代表取締役:山田秀幸)の第7期(2023年4月〜2024年3月)決算が、このほど官報に掲載された。

前期は当期純損失75万8,000円であったが、第7期では当期純利益617万3,000円と黒字化させている。

同社は、自動運転レベル4の移動サービスを運行している注目企業だ。2021年度から自動運転事業に取り組んでいる。その影響か6期目は赤字に沈んだが、7期目は再び黒字化した格好だ。

自動運転関連事業単体の損益は公開されていないが、会社全体として黒字が続くことで事業体としての地盤や継続性が高まれば、移動サービスとしての質のさらなる向上にも期待が高まりそうだ。

過去5期の純損益の推移は以下の通りとなっている。

<純損益の推移>
・第3期:2,039万9,000円
・第4期:2,190万5,000円
・第5期:202万1,000円
・第6期:▲75万8,000円
・第7期:617万3,000円
※▲はマイナス

■決算概要(2024年3月31日現在)

賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 67,768
固定資産 7,350
資産の部合計 75,119
▼負債及び純資産の部
流動負債 7,654
株主資本 67,465
資本金 5,700
利益剰余金 61,765
その他利益剰余金 61,765
(うち当期純利益)(6,173)
負債及び純資産の部合計 75,119

■日本初のレベル4移動サービスを開始

2017年設立のZENコネクトは、第三セクターとして福井県永平寺町の産学官協働プラットフォーム活動による各種連携業務のほか、土地や建物等の有効利用に関する調査・企画・設計及びコンサルタント業務、公共施設等の管理、運営の受託に関する業務など、多数の事業を手掛けている。

その中の1つが「自動走行車両の運行」だ。レベル4の自動運転移動サービス「ZEN drive」を提供している。

出典:永平寺町公式サイト

経済産業省と国土交通省は、2021年度から共同で「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」に取り組んできた。永平寺町で実施する実証実験において、2023年3月付で道路運送車両法に基づく自動運行装置としての認可を得た。これは国内で初めて運転手を必要としないレベル4の自動運行装置としての認可となった。

さらに同年5月付で道路交通法に基づく特定自動運行の許可を取得し、レベル4での自動運転移動サービスが開始された。レベル4自動運転の運行は、国内で初の事例となった。

▼国内初!レベル4での自動運転移動サービスが開始されました|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230522004/20230522004.html

出典:経済産業省プレスリリース

■電磁誘導線方式の自動運転レベル4

ZEN driveの運行を手掛けているのが、永平寺町から運行を委託されたZENコネクトだ。

ZEN driveは、地中に埋設されている誘導線からの磁力線を感知し、設定されたルートを走行する「電磁誘導線方式」を採用している。

障害物はセンサーで検知する。具体的には、走行路内は障害物検知機能(ステレオビジョン)、走行路周辺の人物などは物体認識機能(AIカメラ)で検知している。レベル4自動運転区域は、遠隔室で車両の位置や走行速度、社内外の状況を監視および管理しているという。

永平寺口駅から永平寺門前までをつなぐルートで走行しており、そのうち荒谷停留所から志比停留所間の約2キロを車内無人で自動運転レベル4で走行している。所要時間は約10分で、土日祝日の運行となっている。利用料金は大人100円、中学生以下50円、未就学児は無料だ。

なお自動運転車の通る道路は「永平寺町参ろーど」と呼ばれている。レベル4走行以外の区間は、予約を受けて運行するという仕組みのようだ。

出典:国土交通省プレスリリース

■電磁誘導線方式が日本の主流に?

2023年10月には、ZEN driveと自転車が接触するという事故があった。自動運転車両が乗客4人を乗せて出発後に駐輪中の自転車と接触した。車内に乗客がいたが、けがはなかった。安全性が確認できるまで一時運行を中止し、事故原因の調査と対策を行ったのちに再開している。

国内初の自動運転レベル4運行となったZEN drive。米国などで商用化されているドライバーレスの自動運転タクシーも自動運転レベル4だが、電磁誘導線がなくても自由に走行できるという点で仕組みが大きく異なる。

国内の特定ルートでは海外とは異なり、安全で迅速に自動運転を実装できる電磁誘導線方式の採用が最適解となるのだろうか。そのトップランナーとなっているZEN driveでは、今後ルートの拡大などはあるのだろうか。引き続き注目したい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「自動運転「日本初レベル4」のZENコネクト、第6期は赤字転落」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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