完全自動運転車の車内でどのように過ごしたいか──。こうしたことについて聞いた興味深い調査結果が発表された。20〜30代では「飲食したい」、シニアでは「景色を楽しみたい」が最多だった。
この調査を行ったのは、トヨタグループでクルマのサブスクサービスやMaaS事業を展開する株式会社KINTO(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社⻑:小寺信也)だ。どんな過ごし方が上位となったのか、詳しく見ていこう。
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■世代別比較調査を実施
KINTOは、運転免許を保有する、20~30代男女221人、40~60代の男女221人、70代以上(シニア世代)の男女221人の合計663人を対象に、「完全自動運転」に関する世代別比較調査を2024年1月に実施した。
なお完全自動運転とは、自動運転レベルでは「レベル5」に相当する。運行設計領域(ODD)による制限を受けず、どんな状況でも自律走行できる。高速道路や一般道を問わず、どんなエリアでも、どんな天候、状況でもドライバーレスで自動運転することができるというのが、レベル5になる。
【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義や実用化状況は?(2024年最新版)」も参照。
■シニアは「景色を楽しみたい」がトップ
「完全自動運転が実現したら、車内でどのように過ごしたいですか」という質問では、シニアは「車内から見える景色を楽しみたい」が54.3%でトップだった。2位は「ゆっくり過ごしたい」34.8%、3位は「仮眠・睡眠を取りたい」24.0%という結果であった。
なお40〜60代でも、1〜3位は同様の結果となった。また20〜30代では、1位が「飲食を行いたい」で37.6%、2位「車内から見える景色を楽しみたい」34.4%、3位「ゆっくり過ごしたい」29.4%となっている。
なお20〜30代については、「テレビ/映画・読書・ゲームなどの娯楽を楽しみたい」「メールなど連絡を行いたい」「趣味の時間に充てたい」「化粧や身支度、着替えを行いたい」「仕事や勉強に集中したい」と回答した割合が、他の世代より多いのも特徴と言える。
他の世代が車内でゆっくり過ごすことを重視しているのに対し、20〜30代は車内でゆっくり休むことのほか、何か作業をして時間を有効に使いたいという要望が現れた結果となった。
■過半数が完全自動運転に期待
完全自動運転の実現に期待しているかについては、「期待している」という回答がシニアで56.5%、40〜60代で51.1%、20〜30代で56.1%となった。全ての世代で、半数以上が完全自動運転の実現を期待しているということになる。
完全自動運転の実現に期待する理由として、全世代共通で「自身の移動が楽・便利になるから」「高齢社会の移動支援につながるから」「交通事故の削減・安全性の向上につながるから」がトップ3となった。
逆に期待していない理由としては、全世代で「システムの誤作動やエラーが怖いから」が最多となった。そのほか、「事故が起きた際の責任の所在が分からないから」「交通安全の意識や知識の低下になるから」などの理由も上位になっている。
■車内に欲しい設備・装備「通信環境」1位
この調査では、完全自動運転が実現したら車内に欲しい設備・装備についても質問している。シニアと40〜60代は、1位「通信環境(Wi-Fiなど)」、2位「テレビ/モニター」、3位「パソコン」という結果であった。
20~30代は、「テレビ/モニター」、「通信環境(Wi-Fiなど)」、「パソコン」の順にランクした。20~30代で他の世代より割合が多かった回答は、「トイレ」「テーブル」「ベッド」「キッチン」「収納」「エクササイズマシン」であった。
■利用料「1日1万円未満」が最多
「完全自動運転の車を利用するに当たって、1日の利用ごとにどれくらいの利用料であれば支払っても良いと思いますか」という質問もあった。
シニアは「1万円未満」が57.9%で1位、2位「1〜2万円未満」26.3%、3位「2〜3万円未満」10.5%という結果であった。40~60代も同様の順序で、「1万円未満」45.5%、「1〜2万円未満」22.7%、「2〜3万円未満」13.6%であった。この2つの世代では、3万円以上という回答はゼロであった。
20〜30代も上位3つは同じであるものの、「3〜4万円未満」6.5%、「4〜5万円未満」6.5%、「5万円以上」9.7%という結果となり、シニアより若年世代のほうが完全自動運転車のスポットでの利用に価値を感じているようだ。
■完全自動運転車は「所有から利用」へ
今回の調査結果では、今後検討したい自家用車の保有形式と、完全自動運転車の保有形式を世代別でそれぞれ比較した場合についても発表されている。各世代に共通して、完全自動運転車で「カ―リース」「サブスクリプションサービス」の検討度が、自家用車を所有する場合より上がるという結果になっている。
自動運転車の開発においては、これまでは走行中にメールや仕事、映画鑑賞などができることを想定して車両がデザインされることが多い印象がある。しかし今回の調査では、運転から解放される分景色を楽しんだり、ゆっくり休んだりといったことが重視されていることが分かった。その傾向は、年齢が上がるにつれてアップする。
このような調査を通じて、自動運転車のニーズを探るとともに、自動運転車をいうものを一般に知らしめる良い機会にもなりそうだ。今後も自動運転に関する調査があれば、随時紹介していきたい。
【参考】関連記事としては「完全自動運転とは?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)