100年に1度のパラダイムシフト。その機を孫正義は逃さない。
ソフトバンクが通信会社からのさらなる昇華を目指している。「夢の技術」と言われてきた自動運転、シェアリングエコノミーの代表格とも言えるライドシェア…。10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」で矢継ぎ早に新興企業を傘下に収め、持ち前の交渉術で大型提携も次々とまとめている。
「こんな馬鹿な国がいまだにあるとは」
東京都港区、ザ・プリンス・パークタワー東京。2018年7月19日、グループ最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2018」で、孫正義は壇上、日本政府のライドシェアを巡る規制に苦言を呈した。「国が未来の進化を自分で止めている」とも語った。
【参考】日本の現行法では現在、報酬を得て展開するライドシェアは「白タク」行為をされている。米最大手ウーバー・テクノロジーズは2013年に日本法人を立ち上げたが、政府の規制に手詰まりとなり、現在ではとりあえずタクシーの配車サービスに舵を切った。詳しくは「ライドシェア大手ウーバー、淡路島で配車アプリの実証実験開始|自動運転ラボ
■世界の流れに棹さす日本政府に苛立ち?
世界的に大流行しているライドシェアを解禁しないに日本政府に、講演で孫社長は「未来を否定している」とも語った。モノやスキルを共有するシェアリングエコノミーが世界的に流行する中、その流れに棹さす政府に苛立っているようにもみえた。
しかしこの講演については、一部からは「孫さんのポジショントークなのでは」という声も聞かれた。なぜか。ソフトバンクグループはウーバーの筆頭株主であり、さらには中国大手の滴滴出行や東南アジアのグラブを傘下に抱え、ライドシェアの「世界連合」を形成しているからだ。
孫社長が苦言を呈したその日の午後には、ソフトバンクは滴滴出行と日本で合弁会社を設立し、タクシーの「配車サービス」を秋から大阪で展開することを発表した。孫さんもいずれは本来のライドシェア型で覇権を握りたいはず——。孫社長の苦言をポジショントークとみる者がいるのは、そんな孫社長の脳内が容易に思い浮かぶつくからだと言える。
孫社長が何を考えているかは分からない。一方で、グループ会社を通じて自動運転バス事業も進め、ライドシェア事業に積極投資していることが確かだ。この特集では、孫社長は何を考えているのかのヒントを、ソフトバンクグループの最新ニュースから探る。
(閲覧中)孫正義の事業観(1)「馬鹿な国」発言はポジショントークか
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