国土交通省が2024年度の予算概算要求で、自動運転の「トロッコ問題」の解決に向け、予算を割いていることがこのほど判明した。
トロッコ問題とは「本来亡くなるはずの5人を救うために、別な1人を犠牲にするのは許されるのか」といった倫理学上の命題のことで、自動運転車にこうしたシーンでどう判断を下させるのか、近年議論が活発に行われている。
国交省は社会受容性の観点から、どういった判断が適切か調査を行うという。つまり、トロッコ問題の結論を出そうという試みと言えそうだ。AI(人工知能)を開発するにあたって、避けては通れない課題に向き合うことになる。
【参考】関連記事としては「自動運転とトロッコ問題(2023年最新版)」も参照。
■自動運転システムの責任範囲の明確化も
上記の概算要求の詳細は、以下の資料から閲覧することができる。「自動運転(レベル4)法規要件の策定」事業の一環として取り組むもので、同事業全体では概算要求として2億4,100万円が計上されている。
▼令和6年度 物流・自動車関係予算概算要求概要|国土交通省自動車局(物流・自動車担当)
https://www.mlit.go.jp/page/content/001625458.pdf
このほか、自動運転システムの責任の範囲の明確化にも取り組む。具体的には「道路上で生じ得る様々な事象に対して、システムが安全を保証しなければならない範囲」を明確化するという。
例えば、「無理な割り込み」「不可避な飛び出し」「落石」などに関しても、自動運転システムが安全を保証しなければならないのか、といった具合だ。
こうした取り組みを通じ、自動運転移動サービスの実現に向け、自動運転の実証事業の拡大や社会実装を前進させていくという。
■今後の国会審議の行方に注目
国交省自動車局は自動運転に関し、日本の自動運転技術などの戦略的国際標準化を推進するための予算も計上している。「自動車の技術・基準の国際標準化等の推進」という事業の枠内で取り組むもので、同全体事業としては7億8,700万円が計上されている。
概算要求は今後、国会での審議を経る。自動運転関連の予算でどういった議論が行われるのか、予算は承認されるのか、自動運転ラボとしても注目していきたい。
【参考】関連記事としては「中型自動運転バスでサービス実証!経産省の2023年度予算」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)