埼玉県深谷市でこのほど、「地産地消」で地域公共交通の自動運転技術導入を推進する取り組みがスタートした。
「地産地消」というワードは一般的に、その地域で生産された農産物をその地域で消費することを指すが、「自動運転×地産地消」とはどういうことなのか。答えは、埼玉県深谷市で開発された自動運転技術を、深谷市の公共交通で導入する──ということだ。
そのための「深谷自動運転実装コンソーシアム」に関する連携協定が、深谷市、埼玉工業大学、A-Drive、アイサンテクノロジー、損害保険ジャパン、KDDI、ティアフォー、深谷観光バスの8者によって、2023年6月27日に締結された。埼玉工業大学は深谷市にあり、自動運転技術を開発している。
今後、深谷市における地域公共交通の自動運転技術の導入や推進に向け、協定各者が相互に連携し、自動運転技術の発展と社会実装に取り組むことを目的として活動を行う取り組みとなるという。
■市内公共交通で自動運転技術を導入
深谷市では市内公共交通における運転手不足や運転手の高齢化といった問題が深刻化しており、将来的な公共交通の維持や確保が重要な課題になっているという。
そこで同市にある埼玉工業大学の提案により、自動運転分野の専門技術を有する7つの事業者でコンソーシアムを結成し、産学官連携で市内公共交通における「地産地消」の自動運転技術の導入を目指す取組みを推進することとなった。
埼玉工業大学のプレスリリースでは「自動運転レベル4の解禁への対応も視野に入れた、先進的な自動運転技術の導入を目指します」とも説明されている。
■主に連携する5つの内容
深谷自動運転実装コンソーシアムにおいて、主に連携する内容は下記5つとなる。
- 自動運転技術に関連した社会ニーズの掘り起こしに資する事
- 社会ニーズに即した自動運転技術の開発及び環境整備に資する事
- 次世代モビリティサービスとしての自動運転技術の社会実装に向けた検討に資する事
- 自動運転技術による関連産業の振興に資する事
- その他、目的を達成するために必要な取組みに資する事
今後、各者はそれぞれの特徴を生かして連携し、地域の課題を解決し、持続可能な公共交通の実現に向けて協力していく。
■技術開発に積極的に取り組む埼玉工業大
埼玉工業大学は、私立大学初の自動運転専門の研究組織「自動運転技術開発センター」を2019年4月に設立した。2021年度に深谷市で行われた自動運転バス「渋沢栄一 論語の里 循環バス」の実証にも参加・協力している。
同大学は、2022年9月には私立大学初の大型自動運転バスをスクールバスに導入、2023年4月には入学式の送迎にも活用するという、全国の大学においても例のない先進的な取り組みを行っている。
また今回のコンソーシアムでも連携しているアイサンテクノロジーとは、2023年4月に自動運転の研究開発で連携協定を締結した。自動運転システム用オープンソースソフトウェア「Autoware(オートウェア)」をベースにした自動運転車両の開発や構築、各種実証実験の参加において協力関係を強化し、自動運転レベル4への対応に向けても連携していくという。
【参考】関連記事としては「世界初!?大学生が「自動運転バス」で入学式へ」も参照。
■アイサンテクノロジーと三菱商事の合弁企業も連携
ちなみに、深谷自動運転実装コンソーシアムの連携事業者の1社であるA-Driveは、自動運転ワンストップサービスの提供に向けて、アイサンテクノロジーと三菱商事が2023年2月に設立した企業だ。
アイサンテクノロジーの測量技術や自動運転車両の構築、実証ノウハウと、三菱商事の自動車販売ビジネスやモビリティサービスに関する知見を持ち寄り、自動運転の社会実装に必要なサービスをワンストップで提供していくことに取り組んでいる。
こうした企業が参加する深谷市で始動した今回の取り組み。同市は自動運転分野で他の自治体を大きくリードすることになりそうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転、実証実験の結果一覧(2023年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)