「完全自動運転ソフト」と銘打って米EV(電気自動車)大手テスラが展開している有料ADAS(先進運転支援システム)「FSD(Full Self-Driving)」を無料で試せる日が来るかもしれない。
FSDの買い切り価格は、最新情報では1万5,000ドル(200万円)とされている。そんな中、同社のCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏がTwitterでの質問にリプライする形で無料トライアルに関する情報を発信し、話題を呼んでいる。
■マスク氏がTwitterで語ったこと
FSDはテスラが有料オプションとして展開されている運転支援機能だ。 現在は最新のβ版がリリースされており、米国とカナダでテスター(試験者)が増えている。
2023年5月8日に、テスラ車のオーナーであるフォロワーが「FSDを体験すると、みんな『WOW(すごい)』と言うが、カナダでFSDを購入することはできるか?」と聞いた。それに対しマスク氏は、「FSDが(安全なだけでなく)超スムーズになったら、北米の全車両を対象に1カ月間の無料トライアルを開始する」と返信した。さらに、「現地の一般道で問題なく機能することを確認し、その国の規制当局が承認したあとで、世界各地に拡大する」と付け加えている。
また、フォロワーの「これ(無料トライアル)は素晴らしいアイデアだ」というコメントには、マスク氏は「我々は常にスムーズさよりも安全性を優先している。より高いレベルの安全性を達成したら、その経験を磨き上げるのだ。新規のユーザーがFSDを快適に使えるために、安全性とスムーズさを両立させることが非常に重要だ」と返信している。
■そもそも「超スムーズ」が意味するものは?
超スムーズになったら1カ月間の無料トライアルを行うということは、現状のFSDはまだ「超スムーズ」とは言えるレベルにはないという意味にも取れる。
テスラはFSDのβ版を2020年10月にリリースした。2022年10月の段階で、米国とカナダにおけるテスターは16万人ほどだったようだ。
FSD(Full Self-Driving)は直訳すると「完全自動運転」になるものの、自動運転機能が実装されているわけではなく、自動運転レベル2相当のシステムだ。テスターを増やすことで運転データの量を一気に増加させ、自動運転機能の開発に生かし、将来的に自動運転化する計画のようだ。
2023年4月には、FSD β版の大規模テストを中国で開始するといううわさも出てきており、FSDの世界展開に向かっているのは確かなようだが、マスク氏が指す「超スムーズ」は自動運転機能も込みでの意味なのか、気になるところだ。
これまでも数々の発言で世界中を翻弄してきたマスク氏だが、今回の発言は果たしてどういう未来に結びつくのか、見守りたい。
【参考】関連記事としては「今度こそ本当?テスラ「年内に完全自動運転を実現」宣言」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)