中国のEV(電気自動車)大手BYD(比亜迪)の広報担当者が、完全な自動運転車は「基本的に不可能」と発言し、波紋を広げている。
2023年4月に開催された上海モーターショーにおいて記者団に語ったもので、「人間から完全に切り離された自動運転技術の確立は非常に難しく、基本的に不可能だと考えている」と強調したという。
■「アンチ自動運転」的なスタンス?
BYDの広報担当者は「自動運転技術開発に多額の資金を投入する業界や企業が数多く存在する」とした上で、「何年にもわたり投資したあとで、それがどこにも通じないことを証明するだろう」とも語った。この人物は「アンチ自動運転」的なスタンスのようだ。
また「自動運転車が関わる交通事故の場合、誰が悪いかを特定することは困難だ」ともしている。
なお、ここでいう「完全自動運転」とは、自動運転レベル5のことを指しているとみられる。レベル5は、運転操作の主体が自動運転システムとなり、人間が行ってきた運転操作の全部を代替する。つまりODD(運行設定領域)に制限されず、どこでもどんなときでも自動運転が可能な水準だ。
【参考】関連記事としては「自動運転、レベル4とレベル5の違いを解説(2023年最新版)」も参照。
■レベル3〜4の自動運転にとどめる?
今回、完全自動運転車に懐疑的な見方をしたBYDだが、自動運転開発に消極的なわけではない。2022年3月には、中国のIT大手Baidu(百度)の自動運転技術をBYDの車両に採用するという報道もあった。
また、BYDは自動運転配送ロボット開発の米Nuroと提携しており、共同開発した第3世代の自動運転配送ロボットを発表している。
こうしたことを踏まえると、人間が一定程度介入する必要があるレベル3〜4の自動運転は展開しつつも、レベル5の完全自動運転は目指さないということだろうか。
■素直にうなずく気にはなれない
衝撃とも言える今回のBYD広報担当者による発言だが、2022年7月にはVolvoの幹部も「自動運転レベル5は市販車では普及しない」と発言するなど、レベル5に関してさまざまな見方があることも確かだ。
しかし人類の歴史を紐解けば、「そんなの無理」と言ってきた未来が実現したり、誰も想像が付かなかったプロダクトが人間の生活を飛躍的に便利にしたりしてきた。
であれば、中国の大手EVメーカーであるBYDの見方とはいえ、素直に完全自動運転の実現が無理だということに素直にうなずく気にはなれない。
【参考】関連記事としては「テスラに徹底抗戦!中国BYD、百度の自動運転技術で弱点補完」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)