空飛ぶクルマの試験飛行、「まとめて申請」可能に!国交省

ガイドライン改訂、企業の開発後押し



国土交通省はこのほど、空飛ぶクルマの機体開発を後押しする「試験飛行ガイドライン」を改訂したことを発表した。


国交省では2025年の大阪・関西万博において、官民で連携しながら「空飛ぶクルマ」を実現することを目指している。2022年3月に空飛ぶクルマの機体開発の加速を目指してガイドラインが策定されたが、今回の改訂でより柔軟に試験飛行ができるようになった。

今回改訂された主な内容は、以下の3つだ。

  • 試験飛行などの識別記号の登録と飛行申請を、同時にまとめて実施できるようにする
  • 航空機の耐空性基準(耐空性審査要領)への適合状況を示す書類の提出と、試験飛行などの許可の際に求めていた第一段階のジャンプ飛行の実施の廃止
  • 従来場周空域に限られていた飛行範囲を、一定条件下において2地点間飛行も可能とする

▼空飛ぶクルマの機体開発を後押しする試験飛行ガイドラインを改訂しました|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku10_hh_000225.html

■ガイドラインの主な内容は4つ

空飛ぶクルマの試験飛行などに係るガイドラインには、事業者として作り上げていくべき安全文化や、試験飛行などに必要な手続き書類の作成方法が記載されている。主な内容は4つある。


1つ目は、将来の空飛ぶクルマ事業者としての自覚を持ち、たとえ試験飛行であっても安全文化の醸成に努めるべきことが明記されている。

2つ目は空飛ぶクルマの試験飛行で想定される機体や飛行方法に関する航空法の手続きなどが解説されている。

3つ目は条文確認表や必要事項があらかじめ記載されている申請書のひな形が公開されている。申請者の利便性を向上するためのものだ。

4つ目は、人の立ち入りを確実に制限可能で、地上への影響がないことを確認できる場所でのリスクの低い試験飛行などを行う場合において、申請書の記載を大幅に省略できることが明記されている。


出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

なお、手続きの例としては、法第11条の機体に関する許可や操縦者に関する許可(操縦者ありの法第28条と操縦者なし自律飛行時の法第87条)、法第60条の安全のための装置(無線電話など)非装備の許可、法第79条の空港以外の場所での離着陸の許可、法第81条の最低安全高度以下での飛行の許可、法第89条物件投下の届出などがある。

■申請窓口も一元化、開発加速に期待感

さらに、申請窓口も一元化され、新しいフローが確立している。これまで申請者は航空局原課や機体関係、運行関係と3つの部署に申請し、部署間の調整も申請者が実施していた。各部署間での認識共有にも時間がかかっており、許可書も各部署から申請者に送付されていた。

今後は、無人航空機安全課が一元的に対応していくため、申請者は無人航空機安全課に申請すれば、同課から迅速に許可書を送付してもらえる。

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

空飛ぶクルマの開発においては、従来の航空業界以外からの新規参入が多い。ガイドラインが存在することは、航空分野未経験者にとって大きな助けとなる。しかし、手続きが複雑であったり、申請先が多かったりすることで実証がスムーズに実施できず、結果的に開発スピードが落ちるという課題があった。

今回の改定により柔軟に実証ができるようになれば、開発スピードも加速していきそうだ。2025年の空飛ぶクルマの実現に向けて、開発しやすい環境が一層整うことに期待したい。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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