EC(電子商取引)大手の米アマゾンがこのほど、小型の自動運転配送ロボット「Scout(スカウト)」の公開テストの実施を停止することを発表した。米メディアが報じた。
Scoutは40センチ四方程度の6輪仕様小型タイプで、本体に商品を収納するスペースが備えられている。障害物などを検知するセンサーで人とぶつかることなく商品を無人配送することを目的に開発されてきた自動配送ロボットで、主に歩道での走行が想定されていた。
アマゾンの広報担当者は「Scoutの実証実験を通じ、このプログラムが顧客のニーズに合っていない部分があることが分かった。そのため実証は中止し、プログラムを再構築することになった」と語っている。
■「顧客のニーズと合っていない部分」
Scoutは顧客の家まで荷物を運ぶ無人ロボットとして導入されることが期待されてきたが、報道によると、400人ものスタッフが携わっていたScout開発チームは解散し、そのほとんどが社内の違う部門へと移ることになったという。
どういった部分が具体的に顧客のニーズに合っていなかったのは定かではないが、「宅配ボックス」や「置き配」といった、受け取りの手間がかからない便利な配達方法が普及する中、荷物の受け取るために家の前まで出て、ロボットの中から商品を取り出すという自動配送ロボットの仕組みが、実証実験で利用者から不評だった可能性もありそうだ。
Amazonは2022年1〜3月の四半期決算において7年ぶりに赤字となり、2022年4〜6月も赤字を計上した。2四半期連続赤字となり、開発コストの抑制に乗り出した可能性も否めない。
ただし、Scoutの開発は完全にストップするわけではなく、最小限のメンバーは現チームに残って開発を続けるという。顧客ニーズにマッチした自動運転技術の活用方法を模索していくようだ。
■開発企業は別にも、業界にどのような影響?
2019年1月からアマゾンの本拠地であるワシントン州シアトルで実証を開始し、その後、カリフォルニア州アーバイン、ジョージア州アトランタ、テネシー州フランクリンと、実証の場を広げていたAmazon Scout。
自動配送ロボットはAmazonだけではなく、アメリカや中国、日本の企業なども開発に乗り出している。Amazonの今回の自動配送ロボットの公開テストの中止は、業界にどのような影響を与えるのだろうか。
【参考】関連記事としては「遂に出揃ったAmazonとAlibabaの宅配ロボ!勝つのはどちら?ともに自動運転技術を搭載」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)