空飛ぶクルマのメリットとデメリット(2022年最新版)

社会にどのような効用を生み出していく?

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出典:アウディ社プレスリリース

海外では一部でサービス実証が始まり、量産化を見据えた大口契約も交わされ始めた空飛ぶクルマ。国内でも、2025年開催予定の大阪・関西万博での飛行実現に向け、官民総出で開発を加速させている。

実現間近の空飛ぶクルマは、身近なエアモビリティとして社会にどのような効用を生み出していくのか。この記事では、空飛ぶクルマのメリットとデメリットについて解説していく。

■空飛ぶクルマとは?
出典:SkyDriveプレスリリース

空飛ぶクルマは、人やモノを乗せて飛行することができる次世代エアモビリティだ。明確な定義はないが、従来の航空機に比べよりパーソナルな利用を可能にする点から、「空の自動車」をイメージし「空飛ぶクルマ」と呼ばれるようになった。

実際に陸路の走行と空の飛行を両立させたモデルもあるが、開発されている多くの機体は垂直離着陸が可能な「eVTOL(電動垂直離着陸機)」だ。ヘリコプターのように滑走路を必要とせず、おおむね1人から数人程度が乗車可能なモデルが大半を占める。

パイロットが乗車し操縦するモデルもあるが、現在開発が過熱しているのは、自動運転車同様遠隔監視・操作が可能なモデルだ。目視内における遠隔操作、目視内における遠隔監視、目視外における遠隔操作、目視外における遠隔監視……といった具合に徐々に自動運転機能を高度化し、最終的には人の手を必要としない完全自動運転の実現を目指している。

飛行する高度は、航空法に定められた最低安全高度を考慮し基本的には上空150メートルから数百メートルを予定している。ただし、実証段階においては150メートル未満を飛行するケースもある。飛行距離に関しては、現時点では数十~100キロ超を計画しているものが多い。

用途としては、エアタクシーやモノの配送、遊覧飛行などの観光、災害対応などが想定されている。

■空飛ぶクルマのメリット
効率的な移動が可能に

空飛ぶクルマの一番のメリットは、効率的な移動を可能にする点だ。自由度が高い空の移動は、地上の道路交通のような制約が少なく、目的地まで一直線で飛行することができる。

車道に従って走行することが前提となる道路交通においては、目的地まで一直線に進むことができるケースはまれで、大なり小なり遠回りすることになる。交差点や信号も多く、都市部では渋滞も慢性化している。

しかし、空路は基本的に目的地まで直線的に航路を飛行することができる。今後、仮想的な空の道路が設定される可能性があるが、陸路のように交差点や信号などの制約が少なく、「最短」を前提とした移動が可能になるのだ。

ビルtoビルの移動なども可能に

都市部では、高層ビル屋上にエアポートを設置し、ビルからビルへの移動も可能となる可能性が高い。将来、各所のビルにエアポートが設置され、地下鉄のように空の路線が敷かれることなども想定される。

また、空を移動する利点として、地形に依存しづらい点も挙げられる。陸路では、川を渡るには橋を架けなければならず、山を越えるには勾配を考慮した峠道やトンネルを建設しなければならない。しかし、空飛ぶクルマであれば川や山間部も問題なく飛行することができる。

航続距離が伸びれば、本島から離島への移動も可能になる。数百キロ離れた島は難しいが、目視可能な数キロ~数十キロの距離であれば、比較的気軽に移動することができる。

現在行われているドローン(小型無人機)による荷物の配送実証でも、安全を確保しやすい河川上を航路に設定するケースや、本島から離島へ配送する取り組みなどが進められている。

ラストマイル移動を可能に

従来の航空機、例えば飛行機は長距離移動を前提に大量輸送を可能としている。小回りが可能なヘリコプターは商用利用が多く、一部ドクターヘリのような救急搬送やプライベート利用もあるが、基本的にラストマイル向けのサービスは行われていない。

こうした従来の航空機と比較し、空飛ぶクルマはラストマイルに近い移動を前提としている。イメージとしては、各所に設置されたヘリポートからヘリポートまでの移動を気軽に利用できる感じだ。

空飛ぶクルマのエアポートの設置基準はまだ規定されていないが、実用化に向け徐々に規制が緩和され、将来的にはビルの屋上や公園、大型商業施設の駐車場などさまざまな場所に設置可能になることが予想される。より身近な場所から乗降可能な移動サービスが実現することになりそうだ。

災害や事故にも迅速に対応可能に

道路交通が遮断されるような大規模災害時でも、空飛ぶクルマであれば被災地まで円滑に飛行することができ、現場の確認・調査作業や救急搬送、物資輸送などを行うことが可能になる。

日常においても、ドクターヘリのように交通事故現場などに迅速に向かうこともできる。天候に左右されるが、山岳救助や海難事故にも対応できるかもしれない。

ヘリコプターに比べ、より柔軟な活用が可能になる点が大きなメリットとなりそうだ。

■空飛ぶクルマのデメリット
万が一の際の被害
出典:国土交通省

将来性に溢れる空飛ぶクルマだが、上空を飛行するだけに万が一トラブルが発生した際の被害は大きくなる可能性も高い。

航空機同様、墜落を免れないような事態に陥った際は、高い確率で死亡事故となる。落下による二次被害も想定されるだろう。

もちろん、機体やシステムなどに異常が発生した場合も、冗長システムにより安全に飛行を継続したり緊急着陸したりする機能が備わっていることは言うまでもない。

ただし、さまざまなモデルが高頻度で飛行する未来においては、常に万が一の状況を考慮しなければならないだろう。

社会受容性向上のハードルが高い

デメリットとは異なるが、上述した事故の可能性は、リスクが漠然としているが故に社会受容性向上のかせとなる。地上を走行する自動運転車でさえ社会受容性を醸成するのに時間を要するが、空飛ぶクルマに対する理解を得るのはその比ではないだろう。

河川上空などの安全を確保しやすい取り組みから徐々に実績を重ね、技術の向上とともに安全に対する理解を少しずつ高めていく必要がありそうだ。

騒音問題がネックに?

空飛ぶクルマが抱える課題に、騒音問題がある。空飛ぶクルマは、従来の航空機などに比べ低空を飛行し、より生活空間に身近なエアポートに離着陸するため、住民が騒音を体感する割合が非常に高くなるのだ。

ヘリコプターを例に挙げると、上空100メートルほどの低空飛行をした際の直下騒音は一般的に100デシベルを超えるという。100デシベルは電車が通る際のガード下レベルで、会話が成り立ちにくいほどの大きさに相当する。

仕組みは異なるものの、多くの空飛ぶクルマもプロペラを備え、特に離陸の際などに大きな音を発生させる。身近な場所で離着陸を可能にするメリットは、そのまま騒音問題に直結することになりかねない。

安全飛行に向けた開発が加速する空飛ぶクルマだが、低騒音化に向けた開発に力を入れる開発事業者も多く、この観点におけるイノベーションも必要不可欠となりそうだ。

天候の影響を受けやすい

空飛ぶクルマは、従来の航空機と比べ小型化されているため、やはり天候の影響を受けやすい。風速何メートルまで飛行可能かなどは機体によるが、当面は厳しい基準が設けられる可能性も高そうだ。

また、パイロットが搭乗せず自動運転化されたモデルは、各種センサーに依存して飛行することになるため、風だけではなく雨の影響も受けやすい。

どういった天候基準で飛行可能となるかは現時点で定まっておらず、こうした点にも今後注目が集まりそうだ。

事業採算性が未知数

空飛ぶクルマはまだまだ未知の技術・サービスゆえに、正確に事業採算性を算出することが困難だ。開発費用も莫大で当面は機体の価格も高く、自動運転車同様すぐに採算をとるのは困難となることが予想される。

エアタクシーが実現した際も、実際の料金がどういった水準となるかは不明だ。実現当初は珍しさで利用者が殺到するものと思われるが、その後は既存サービスとの比較が行われ、費用対効果が問われることになる。

なお、市場調査会社によるレポートによると、空飛ぶクルマ市場は2035年までCAGR(年平均成長率)47.23%で右肩上がりを続ける――といった予測もある。米NASAとマッキンゼー・アンド・カンパニーによる調査では、空飛ぶクルマにおけるラストワンマイル輸送の市場規模は2030年に21億ドル(約2,300億円) に達するという。

空飛ぶクルマが1つの市場として大きく成長していくことはほぼ間違いなく、各種モビリティの中でどのようなポジションを得るか、要注目だ。

【参考】空飛ぶクルマの市場予測については「空飛ぶクルマ市場のCAGR、2021~35年は47%!急拡大の要因は?」も参照。

■【まとめ】エアモビリティが身近な存在となるメリット大

アニメやSF映画のように上空をさまざまなモビリティが飛び交う社会は、そう遠くない将来実現する。空飛ぶクルマのメリットは、アイデア次第でまだまだ膨れ上がる。対するデメリットは、技術の向上で少しずつしぼんでいくはずだ。

日常的な移動用途として定着するのはまだ先になりそうだが、エアモビリティが身近な存在となるメリットは総じて大きいと言える。

陸における自動運転車とともに、空飛ぶクルマによる空の移動革命に期待大だ。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマ(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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