レベル5自動運転の「国産EV」を世界へ!TURINGが10億円調達

カメラ主体のシステムで実現へ

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出典:TURINGプレスリリース

レベル5完全自動運転EVを日本から世界に。」――ワクワク感あふれる意思を前面に打ち出すスタートアップTURING(チューリング)が、資金調達シードラウンドで10億円を集めたと2022年7月13日に発表した。

近年、その困難さからレベル5開発は無謀として受け取られることが増え、レベル5開発に言及する開発者も少なくなった印象が強い。そのような中、国内自動運転業界に突如として現れた新星が、レベル5開発への挑戦を表明したのだ。

この記事では、TURINGの概要に迫っていく。

■TURINGの概要
「We Overtake TESLA」を掲げるスタートアップ

TURINGは、代表取締役CEO(最高経営責任者)の山本一成氏と取締役CTO(最高技術責任者)を務める青木俊介氏が中心となり、2021年8月に創業した。目的はずばり、レベル5の完全自動運転EV(電気自動車)の開発だ。実用化目標を2025年に設定するなど野心的だ。

公式ホームページのトップには、でかでかと「We Overtake TESLA(テスラを追い越す)」と掲げている。山本氏は、AppleやGoogleなどのGAFAMにテスラを加え、「彼らは自分達ならできると勘違いをし始めたのだ。アメリカはいつも夢見ている」とし、「我々も同じようにステキな勘違いをしてもいいはず」と情熱を傾ける。

山本氏は、将棋名人を倒したことで知られるAI(人工知能)将棋ソフトウェア「Ponanza」の開発者で、AI開発企業HEROZの立ち上げメンバーにも名を連ねる。現在は、TURINGのほか名古屋大学特任准教授と愛知学院大学特任教授も兼任している。

一方の青木氏は、カーネギーメロン大学の自動運転車開発チームに所属し、博士号取得後に国立情報学研究所で助教授を務めた経歴を持つ。現在はTURINGのほか、名古屋大学と総合研究大学院にも所属している。

カメラ主体のシステムでレベル5実現へ、カギはAIの進化

自動運転システムは、カメラから取得する画像を最大限に生かす優れた自動運転AIを軸に開発を進めている。「カメラ以外のセンサーは不要」としており、ここでもテスラのイーロン・マスクCEOが頭に浮かぶ。

マスク氏は置いておき、同社はセンシング技術が精密化してもそのデータを生かすAIが進化しなければ完全自動運転は成しえないとしている。目で得た情報を優れた脳で判断する人間と同様、これを自動運転で再現するには脳となるAIを鍛えなければならない。

カメラから得たデータを、ディープラーニングで日々精度を高めていくAIが判断し、自動車を制御する。非常にシンプルなアプローチだが、あらゆる状況下において自律走行を実現するレベル5には、何よりもまずAIの高度化が欠かせない。この根源とも言える部分にしっかりと向き合うスタンスだ。

出典:TURINGプレスリリース

プロダクトとしてはこのほか、自動運転支援機能付き車両や既存車両向けの自動運転化キットの開発・販売も行うこととしている。

【参考】テスラの取り組みについては「地図はいらない!テスラ流の「人間的」自動運転とは?」も参照。

柏の葉スマートシティなどで実証にも着手

同社はすでに自動運転実証に着手している。その第1弾が「Budapest」と名付けられたプロジェクトだ。End-to-Endで私有地内の限定コースをぐるぐる走る機械学習モデルを作り、実際に車両を動かす取り組みだ。

車載式故障診断装置からハンドルの角度や速度、アクセル値などの情報をパソコンで取得し、これらの値を指定して自動車に書き込む作業をはじめ、目となるカメラにウェブカメラを使用したことやそれに伴う問題の発生、その解決など、プロジェクトの一部始終を収めた技術ブログも公開している。

レベル5の達成には、道路や交通状況、世界を人間以上に知る必要があるとし、プロジェクトの締めでは単眼深度推定やSemantic Segmentationなども複合的に学習させ、機械学習モデルがより状況を理解できるようにする取り組みを行ったという。

今後は、物体検出や単眼深度推定などの技術によって、歩行者回避や車両の停止機能なども加えていく予定としている。

下記には、自動運転開発に向けた初歩が非常に分かりやすくまとめられている。

▼【TURING】End-to-Endで限定コースをぐるぐる走る機械学習モデルを作って実際に車を動かした話【自動運転】
https://zenn.dev/turing/articles/budapest_tech_blog

2022年4月には、自動運転実証に積極的な柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)内の「KOIL TERRACE」にオフィスを移転し、柏の葉キャンパス駅周辺で走行実験や走行データの取得を開始すると発表している。また、三井不動産が設置したモビリティ開発をサポートする検証フィールド「KOIL MOBILITY FIELD」などを用いた走行実験も行う予定のようだ。

【参考】KOIL MOBILITY FIELDについては「自動運転も試せる!三井不動産、首都圏に検証フィールドを開設」も参照。

シードラウンドにはベンチャーキャピタル各社が参加

シードラウンドにおける資金調達には、ベンチャーキャピタルを運営するANRIやグローバル・ブレイン、DIMENSION、AI開発を手掛けるHEROZが参加している。各社ともTURINGのチャレンジ精神を高く評価しているようだ。

自動運転レベル5とは?

自動運転レベル5は、自動運転レベルの最上位に位置付けられるものだ。レベル4が走行エリアや速度、道路条件、天候など、自動運転システムごとに独自に設定したODD(運行設計領域)内に限り無人走行を可能にする一方、レベル5はこうした条件に一切縛られることなく自律した無人走行を行うことができるとされる。

言い換えれば、人間のドライバーによる手動運転が可能な状況を、自動運転システムが全て網羅するレベルだ。人間同様、車両周囲の状況を迅速に予測・判断し、的確に制御を行う。狭い路地や砂利道、雪道もしっかりと危険を回避しながら走行することができる。

道路という道路(車道)は全て走行可能なため、整備状況が不透明な高精度3次元地図などに依存しないシステムが求められそうだ。まさにセンサー(目)とAI(脳)による人間の代替システムであり、現状の技術では実現困難と見る開発者も多い。

それ故、さらなるイノベーションによってブレークスルーを幾度も繰り返していくことが必要不可欠となる。

【参考】レベル5については「自動運転レベル5とは?定義などの基礎知識まとめ」も参照。

■【まとめ】「勘違い」を「成功談」に

業界の常識から見れば、「2025年にレベル5」は間違いなく「無謀」と言われるチャレンジとなる。しかし、TURINGはそれを承知で大志を掲げ、常識打破に向けて取り組みを加速していく姿勢だ。

社会や人間生活に大変革をもたらした企業が大きな壁を乗り越えてきたように、TURINGも高いハードルを乗り越え、「勘違い」がいつの日か「成功談」となるよう期待したい。

【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ一覧(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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