空飛ぶクルマの離発着地「1万㎡程必要」 石川県で検証

パラモーターで飛行、課題を探る



出典:デジタルカレッジKAGAプレスリリース

デジタル人材育成機関の株式会社デジタルカレッジKAGA(所在地:石川県加賀市)は2022年6月3日までに、人が実際に「空飛ぶクルマ」で飛行するルートの検証を、石川県加賀市においてパラモーターを使って実施したことを発表した。

パラモーターとは、エンジン付きのパラグライダーのことだ。ルート検証では、加賀市上空の高度100〜200メートル、山間部にある山中温泉から海岸の橋立漁港までの25キロを約1時間飛行した。


飛行にあたり、加賀市をはじめ各観光協会や小松空港管制、自衛隊小松基地、石川県警察の支援を受けたという。今夏以降に加賀市で開催予定の空飛ぶモビリティシンポジウムにおいて、今回の検証の詳細な成果報告が公表されるようだ。

■今回はパラモーターで検証!

加賀市は空飛ぶクルマの裾野産業誘致のために準備をしており、今回の検証はその一環となる。空飛ぶクルマの離発着場の設置やルートを想定し、パラモーターで検証を実施した。

パラモーターは山中温泉の町中にある野球グラウンドを離陸し、山代温泉や大聖寺周辺、加賀温泉駅周辺を飛行して橋立漁港にある小学校のグラウンドに着陸した。

飛行経路を車両で伴走し、上空での挙動や市街地上空を飛行した際の地上からの見え方などの検証と、離発着時の風速や風向きの検証も同時に実施した。


出典:デジタルカレッジKAGAプレスリリース
そもそもパラモーターとは?

パラモーターにはエンジンがついているため、山など高所に行かずとも場所を取らずに平地から離陸できる。航空法上の規制を受けずに市街地上空を飛行でき、安全で静かなため、空飛ぶクルマの模擬ルートを検証するのに適している。上空5メートルの低空で飛行したり、空中で静止したりすることも可能だ。

ドローンでは難しい上空150〜450メートルでの飛行や、1時間以上の飛行も可能だ。複数のカメラやレーザーセンサーなども搭載できる。ヘリコプターに比べ機材が少なく、安価に検証できるのもメリットだ。

■検証で明らかになった発見や課題例

離発着場については、風向きや侵入経路の安全確保と、最低でも1万平方メートルほどの風が安定しているスペースが必要なことがわかった。複雑な気流の山岳部での離発着は効率が悪くコストがかかり、周りに木や電線があるところは不向きだという発見もあったという。

市街地上空での飛行については、さまざまなトラブルを想定し、空飛ぶクルマも一定以上の滑空性能を持つことが必須であることが分かった。一定区間ごとに通信・充電設備のある安全退避場所の確保も必要だという。


さらに、今回は時速30キロでの飛行だったが、伴走していた車両よりも先行する状況が起きたという。このことから、拠点間を直線でつなげる有用性が証明された。

■パラモーターが空飛ぶクルマの実用化を促進

実機を飛ばす実証の前に、ヘリやドローンを使わずにパラモーターで実施する検証はさまざまな点で効率がいい。パラモーターで気軽に検証することで、実用化の実現が早まることに期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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